銀色の……

chapter1-1:隅田松子

お嬢さん。
何かお困りですか?
あ、大丈夫です。
言わなくてもわかります。

そうですね。そうです!

何かお探ししているのですね。
あ、大丈夫です。言わなくてもわかります。

そうでしょう。そうでしょう。
わかります。わかります。

お辛いでしょう。
あ、大丈夫です。言わなくてもわかります。
そう、分かってしまうのです


でも、その辛さは必ず取り除く事ができますよ。
良かったら、ちょっと、あちらのカフェでお話しさせて頂きませんか?

え?
取材……ですか?

あら、ヤダ。
ちょっとお化粧―――え?
あ、顔は出ない。

あら、そうなの。

はぁ。
え?建物?新しい施設?
ちょっと、存じ上げませんね。

え?
あっち?

えぇぇ!!
なんですか!あの銀色は―――!?


隅田松子は、銀色の建物を見上げながら、
首からぶら下げた、銀杏の葉の形をしたブローチを握り瞳を閉じて祈り続けていた。

……つづく

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