あの子の秘密を知りたいならば、
あの子の家に。
すべて間に合わなくなる前に
朝、異常なほどの静けさの中で君は目覚める。
世界の滅亡が予言された日なのに、嫌に静かだった。
…ここは…家…?
昨日、どうやってここに帰ってきたのか、どうやって着替えたのか、どうやって床に入ったのか…その記憶は、君にはない。
…世時…?
からだを起こせば、かさり、と音がして自分の寝間着のポケットから何かが出てくる。
…?
図書館のメモ…なんでここに…?
何時の間にポケットにいれたのだろう、と思っていると、新しく一行、文字がかいてあることがわかった。
あの子の秘密を知りたいならば、
あの子の家に。
すべて間に合わなくなる前に
……
今日は11月12日の金曜日。
ーー世界が、終わる日だ。
…行こう
俺を…きゃらめるを出し抜こうなんて、10年早いってこと…わからせてやらなきゃ。
うん…いいね。
それで…君はどこに行きたい?
逸見の家…だけど…知ってるのかな…
あはは!そういえば、研究室は知ってるけど、家には行ったことないんだっけ
当然電話には…
出ないね。
うーん………
…承時さんかルナちゃんなら…?
KP、二人のうち、どちらかに電話できる?
…そうだね…電話をかけると、承時にはつながるね。家の場所も、教えてもらえるよ。
よし…!それじゃ、逸見家に向かうよ!
OK!じゃあ…
君は、教えられた家に向かう…しかしそこは、君が予想したよりもはるかに静かだった。
家には人の気配がなく、ドアノブに手をかければ、玄関の鍵が開いていることに気づくね。
…入るよ。
中に入れば、部屋の中は荒れているような様子もない。
そこにはやはり、人の姿もない…
…逸見の部屋を探す。
OK。それも教えてもらってたことにしようか。
あっさり見つけられるね。
部屋は落ち着いた印象だね。
本棚には何冊も医学書、薬学書が収まっており、机に置かれたパソコンの周りには、何枚ものメモが散乱している。
…なんだ。ちゃんと学生してんじゃん…
目星で何か見つかる?
OK。振って。
サバキ ラン
目星52→81失敗
んん~~~~~
ここで取りこぼしは…!でもこの値じゃ幸運消費も厳しいし…
そうだね。ここでその処理をしようとすると、29消費することになるね。
……そうだね…こういう時、見るべきは…
机の引き出しに日記!
幸運どうぞ
サバキ ラン
幸運65→13成功
おめでとう。あったみたいだね
やった!
やっぱり、CoCと言ったらこれだよね♪
日記は世時のもののようだね。
なんてことのない、他愛のない日常について書かれている。
実験がうまくいったとか、家族で出かけてたとか…蘭君のこととかもね。
前者二つだけにしておけば…
…しかし、ここ一週間は筆跡が乱れているようだね。
内容は以下の通り。
●逸見世時の日記
11月5日(日)
どうしてこんなことが起こってしまったんだろう。
蘭サマが、「太鼓の鳴らし手」とか、「鼓手」とかいうのに選ばれた、らしい。
もう蘭サマではない別のものにならなきゃ、世界が滅ぶという話を聞いた。
あの男は、楽しそうに笑ってた。
そんなことがあっていいわけがない。
目の前で、化け物に変わっていく蘭サマのことを、俺はどうしようもなく許容できなかった。
だから、あの男に縋ってしまった。
最初から、俺が犠牲になればよかったんだ。
11月6日(月)
あの化け物に変わるまでの期限を一週間もらった。
この世界は、あと七日で滅亡する。
悔いのないように過ごしたい。
11月7日(火)
自分が死んだら、あの化け物になるらしい。
それまで、きちんと毎日、蘭サマとはなしたいと思った。
土曜日にデートの約束を取り付けた。
楽しみだ。
11月9日(木)
死ぬのが怖い
11月10日(金)
死ぬのは怖いけど、それよりずっと、蘭サマが犠牲になるのが怖い。
最後に少しでも、思い出が作れたらいいな
11月11日(土)
今日はさいごの思い出作りだった。
ちゃんと笑えてたかどうか不安だったけど、それでも楽しかった。
夕焼けが綺麗で、最後、死ぬなら、あそこがいい。
最後に会いたかったなんて我儘を、もう言えないんだろうな。
君の為に世界を失うことがあっても
世界のために君を失いたくない
…………
……………
あ………あ、………
………自分が「スカール」であったこと、その未来を拒絶するために世時が自ら命を断ち、「スカール」になろうとしていた…そのことを、君は知ってしまったね…
…さあ、最後のSAN値チェックだ。値は1D4/1D6+1…頑張って耐えてね。