ランディ

お!?

 これは、昨日の空か。










 なんでこんなの思い出してんだ?










 あの流星…………確か、黄道を垂直に横切っていきやがって、不吉極まりねーやつ。











 凶事を示す明暗の星群に、季節外れの大流星が、かくも見事な方向から……。確か母さんが帰って来なかった日もそうだった。










 俺は自分の宿星がどれか分からねーけど、もしいつもより暗いあの星がそうなら、相当ヤバイよな。周りの星はあんなに明るく瞬いていやがったのに、あの星だけ…………。












 って、あれ!? なんかよー……、あったけーな。…………俺何してたっけか?











 あの流星みたいに何かが光って……って!?


ランディ

ック!?

アデル

ランディ!?

ハル

ああああ!!

ロココ

良かったぁ、
ランディさん。
本当に良かったぁ~。

ランディ

痛ぇ。
なんだこりゃ!?
すげぇ血じゃねーか!?

ジュピター

やさ男かと思ったら、
結構頑丈だな。

ランディ

イテテテテ。
そーいやあの魔物に……
もう始末したみたいだな。

ユフィ

なんとかね。
もう少しゆっくりしてなさい。

 死地から目覚めたランディの回りには、ハル達が信じるように待っていてくれた。



 涙を目に浮かべたままのアデルは笑顔を前面に押し出している。必死に治癒の指輪による回復を行いランディを救ったのだ。まだランディの傷には激痛が走っているが、通常の何倍ものスピードで治癒が進んでいるのだ。


 向こう側の景色が見える程の穴を脇腹に開けられ、通常、いくら水薬を使ったとしても助かるはずがない。それを繋ぎ止めてくれたのは、間違いなく導師であるアデルのお陰だった。



 ランディは口元の血を腕で拭いながら、激痛の中に和らぎを感じていた。それが治癒の指輪の効果というのは直ぐに感じとれた。

ランディ

サンキューな、アデル。
マジで助かったわ。

アデル

いえ、指輪の力は
対象の本人の生命力を
増幅させるものです。
聖ユデアの加護は
勿論ですけど、
こうしてまたお話出来るのも
ランディの生命力に
よるものなのですよ。

ランディ

そうゆう事にしといてやるか。
まぁ俺はこんなとこで
死んでられねーしな。

 ランディは激痛の中だが、いつもの美しくも明るい笑顔をしてみせた。

ハル

泣き疲れて倒れそうっす。

ランディ

ハルキチ、俺が
くたばったと思ったのか?

ハル

だってこんなに血が出てるし
穴っすよ、穴。
目が覚めないのを見たら
涙が止まらなかったっすよ。

ユフィ

鼻水も拭きなさい。

ランディ

そりゃ心配かけたな。

ジュピター

でもなんか星がどうとか
起きる寸前に口走ってたぞ。
なんか夢でも見てたのか?

ランディ

ああ、それな。

 ハルの鼻水を拭く音にまみれながら、ランディは昨夜の流星の話をした。



 凶事の象徴とされる星群の明暗の乱れ。太陽と月の通り道である黄道と呼ばれる宇宙の帯、そこを垂直に横切る季節外れの大流星。これらが示すは凶事そのもの。そんな古からの天文の知識も伝えた。

ランディ

俺は自分の星ってのが
どれか分からねーんだ。
昔から星の事が好きでな。
色々読み漁って調べたが
今でも分からねー。

ジュピター

オイラも勿論
分からんけどな。

ランディ

今だからなんとなく思うんだけど
あの暗い星が自分の宿星だと
ずっと感じてたら、
こうして目覚めねーまま
死んでたかもってな。

ユフィ

そうよ。
死にそうになったから
そんな夢を見たのよ。
昨日見たってのも
夢と混同しちゃっての
思い過ごしじゃないの?

ランディ

あれは確かに……

ランディ

いや……そうかもな。

 ランディはユフィの言葉を否定しかけたが、間を置き肯定して微笑んだ。そしてゆっくり立ち上がる。傷口はまだまだ完全に癒えていないが、帰還する為だ。

 アデルが心配そうに声を掛けたが、ランディはもう歩けるようで、無理をしない前提で帰還することになった。

 ~諷章~     175、明暗分かつ凶事

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