ハル

ジュピター!

ジュピター

一瞬も油断
するなよ!

 アデルがランディの治療に走ったのを見て、ハルとジュピターが武器を持った。



 目の前の魔物は、一瞬でランディを戦闘不能に追いやった。赤い何かが光ったとしか分からなかったが、自身の身も省みず前進するしかなかった。

ユフィ

アデル!

 アデルに呼び掛け水薬を投げるユフィ。そしてユフィはロココに何かの合図を出し、ハル達を追い掛ける。

ハル

遅いっす!

ユフィ

!?
多分ランディを攻撃したやつは
連発出来ないはず!

ジュピター

見える……。
全部切り落として
やるぞ!

ジュピター

はぁっ!!

 ジュピターの連撃は、襲い来る魔物の触手を全て切り落としていた。そしてその隙に、ハルが魔物本体に手が届く場所まで踏み込む。

ハル

とどめっす!

ハル

ふぅ~
ギリギリだったっす。

 完璧と言える手応えと、浮遊していた魔物が地面に落下したのを見て、ハルは一息ついた。が、次の瞬間には背中に悪寒が走り抜ける。

 魔物は確かに地面に転がっている。

 だが、ランディが倒れた直前と同じ感覚。完璧な手応えはハルの手の中に残っている。だがこの悪寒…………という事は――

ユフィ

そこよっ!

 また迷宮一帯が赤色に染まった。



 だが、今度はユフィの目には捉えられていた。赤色の閃光がしっかりと。そしてそれをギリギリのところで躱し、魔物の核と思われる赤眼に音速の鞭を奮ったのだ。

ロココ

ユフィさん、
今ですね!

ユフィ

撃って!

 ロココの刻弾は魔物の赤眼に着弾した。一気に周囲に広がっていた嫌な空気が引いていく。今度こそ魔物は倒した。


 そしてランディの元へ四人が駆け寄る。

アデル

ランディ。
お願い…………
お願い…………

 大量の血を流したランディの前で、アデルが祈るように呼び掛けている。水薬と治癒の指輪での回復は済んだようだ。



 だが、ランディに反応はない。



 横たわるランディの静けさが、床に広がる血の量が、懇願するように呼び掛けるアデルの声が、ハル達の鼓動を戦闘の時よりも早く高鳴らせた。

 ~諷章~     174、勝負の瞬間

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