先ほどの張りつめた雰囲気からは一転、その場には穏やかな空気が流れていた。

他の家族への説得は、綾緋が責任をもって担ってくれるそうだ。
だから気にしなくていいと(主に緋奈子に向かってではあるが)そのように言ってくれた。

……とはいえ、さすがに昨日の今日でこれからは神社に住む、という訳には行かない様子。

朱華 緋奈子

い、嫌とかじゃないよ!?嫌じゃないんだけど!こころのじゅんびってやつが!

などという緋奈子の言葉や、綾緋の恨みがましい目、また、本当に居を変えるのであれば準備が必要ということなどもあり、とりあえず緋奈子は朱華の家に帰ることとなった。

それから、この度の事件で不完全に終わった緋継の儀を改めて行う運びとなったらしい。
朱華の者として緋奈子もまた準備に追われ、しばらく神社へ帰らない日々が続いた。
そんな、数日後のこと――。

GM

って感じで!パスです!

祈雨丸(PL)

綾緋ちゃんめっちゃぐぬぬってしてそう

GM

ふふ、綾緋はぐぬぬってますね……











一通の文があり、緋継の儀の日取りが知らされた。
以前にも彼女からこうした儀式のことについて文を貰ったが、それも随分前のことに感じる。
変わったことと言えば、それが所謂「招待状」であったことだ。
朱華の関係者でなければ参列できないと言われていたその儀式だったが、今や当主の姉の夫、だなどという肩書が添えられてしまった。
自分としては喜ばしいことであるが、渦中の妻としては未だ気恥ずかしいのか、文中には夫の“お”の字さえ書かれていなかった。

GM

ふふwww

祈雨丸

……まぁ、なんともいじらしいことだ

手紙をしまう。
知らされた日付は、今日。
未だ鶏の鳴かぬ早朝に祈雨丸は起き出し、一人涼しい台所で作業をこなしていた。

襷を掛け、誰に見られずとも気合を入れて拵えていたのは、甘酒だった。
電気炊飯器の使い方は、彼女に習って大分要領を得てきた。
と言っても、ボタンを押すだけの作業ゆえに、そう難儀することもなかったのだが。

日が昇る頃。
そして、巫女たちが掃除にやってくる頃には、炊飯ジャーの中には香り立つ甘酒が仕上がっていた。

祈雨丸

……美味しい、やはり良いお米だとお墨付きを頂いた甲斐がありました

味見を終え、満足げにそれを容器にしまった。
これほどの味であれば、あの幼子の様に好奇心旺盛な桜の精の舌であろうと唸らせる事が出来るだろう。
……最も、手ずから甘酒を作るまで必要だったかと言えば、それだけの理由ではないのだが……。

時計を確認した。
いつも一番乗りで挨拶に来る真面目な巫女の声を聞いてから数分。
そろそろ他の巫女たちが掃除を始めている時間だ。祈雨丸は、襷をといて外へと向かう。
……案の定、縁側には箒を抱えたまま舟をこぐ少女の姿があった。

祈雨丸

(年頃の少女というものは、朝に弱いと聞きますが……いや、蛇たる私とて、緋奈子さんとて早起きに努めているのです。甘やかしては、いけませんね)

少女が瞼を閉じているのをいいことに、《眠り》の刻印を刻む。
それは眠りに落とすのではなく、強制的に気付けをする逆転の魔法だ。

……こぶらっ!!!?

何の夢を見ていたのだろうか、奇声を上げて飛び起きた少女に祈雨丸は優しく声をかけた。

祈雨丸

……おはようございます

GM

こぶらwwwww

あ、お、おはよーございます……って、神主さま!?
うわ、ごめんなさいその、サボってたわけじゃなくて……友達と、地域活性で白蛇のキーホルダーをお守りとして作ったら売れるんじゃないかって……

GM

ふふwwww例の白蛇キーホルダーwww

そんな話をLINEで遅くまで話してたから寝不足がやばみで……
あれ、いや待って、これ神主さまにはまだ内緒だった!忘れて!!

……箒を抱えて走っていく少女の背を見つめ、まぁ罰は成ったかな、と考える祈雨丸であった。

祈雨丸

……白蛇のキーホルダー……いやそれも度し難いことではありますが、こぶら

GM

こぶら

祈雨丸

……祈雨はこぶらでは……ないはずですが………

と首をひねるが、神仏を混同する若い世代もいるのだ。
蛇とて、コブラもマムシもアオダイショウもツチノコも同じと宣う人間だっているに違いない。
不承不承と言った具合に納得しようとした。

祈雨丸

……まぁ、いいか

と言ちてから、懐かしい気配を感じ、鳥居の方を見た。

祈雨丸(PL)

緋奈子ちゃんのお迎えが来てくれると嬉しみです!そしてちょっとだけ甘酒をごちそうしたいです!

GM

了解です!


鳥居のほうから耳に心地よい声が届く。

朱華 緋奈子

きーやーん!


手を振りながら笑顔で走ってきたのは、数日ぶりに見る緋奈子だった。

祈雨丸

緋奈子さん!

こちらも少し急ぎ足で出迎える。

祈雨丸

息災でしたか、緋奈子さん

朱華 緋奈子

元気元気ー、ってか、そんなに経ってなくない?


と、くすくすおかしそうに、しかし嬉しそうに笑う。

祈雨丸

いいえ、この日が待ち遠しく思っておりましたから、それなりの辛抱でしたよ

思ったままの言葉を口にする。

祈雨丸

あなたのその笑顔に、焦れてしまうほどには。そちらの家はお変わり無いようで

僅かに滲んだそれは、自分ばかりが恋しいと思っていた事への細やかな恨み言の様にも聞こえるかもしれない。

朱華 緋奈子

その言葉の色に気が付いて、緋奈子は一瞬きょとんとしてから、意味を察してじわりと頬を火照らせた。

朱華 緋奈子

ぅぇえっと……、そのぅ……

もごもごとしながらもぽつりと、

朱華 緋奈子

あ、会えたのが、その、嬉しかったから、……

と小さな声でこぼす。
自身も恋しくなかったわけではない。
でもそれよりも、今会えたことで、なんだかすべて吹き飛んでしまったんだ、と、まぁそこまではっきりとは言えなかったが、そういった意図をにじませる。

朱華 緋奈子

こ、こっちはみんな元気!綾緋の舞もすごい綺麗に仕上がったからさ!

と慌てて続ける。

間を置き、その目が優しく細められた。

祈雨丸

……嬉しいです

そう言って、あの時の様に緋奈子の手を取った。

祈雨丸

……とはいえ、矢張り"蛇"を隠すのは難しいな……なるべく心穏やかでありたいものですが、あなたを想う感情に比例してしまう

努力は続けますが、と付け足す。

祈雨丸

朱華の舞、この目で見ることが叶うとはまさに僥倖。直ぐにでも向かいたいところですが……少し休んでからに致しましょう。時間もまだあるはずですし、甘酒を作ったのです。召し上がってください

と社務所の方に手を引く。

祈雨丸(PL)

時間もまだあるはず(転移できるし)

GM

いっしゅんだぁ

祈雨丸(PL)

魔法使い便利タクシー

祈雨丸

炊飯器で、頑張りました(`・ω・´)

 
手を取られ、ぴゃっと飛び上がりかけるも抑える。
あの時のように、緋奈子もまたその手を握り返していた。

朱華 緋奈子

そ、そーいうこと、またぁ……

と照れを表情に滲ませながらも、手を引かれるがままに祈雨丸についていく。
そして手を引かれながら、その言葉に

朱華 緋奈子

甘酒!

と顔を輝かせた。

朱華 緋奈子

いいじゃーん、ちょっと寒くなってきてたから嬉しいかも。ってかきーやん炊飯器使ったんだ!やったじゃん!

と無邪気に笑う。

微笑みながら社務所まで行き。
用意されたのは、盃、そこに満たされた白い飲み物。
秋の深まる季節に丁度良い温度だった。

祈雨丸

こうしてみると、いつもの逆ですね


手料理と言うには簡素なものだったが、それでも祈雨丸は笑顔で促した。

祈雨丸

召し上がれ、緋奈子さん

朱華 緋奈子

おおー……、盃って、なんだか雰囲気あるねー

としげしげとそれを眺め、その言葉にまた笑う。

朱華 緋奈子

それじゃ、いただきまーす

いつかのように、しっかりと祈雨丸の目を見てそう言ってから、盃に口をつける。

祈雨丸(PL)

家庭の甘酒だなーって感じだろうな……多分昔に覚えたものを思い出して作ったから、粒の感じとかは素人みあるけど、神社効果で神聖なものって雰囲気はちょっとあるかもしれない。
こいつ、お神酒自分で作りよる

GM

ふふwwww自家製お神酒

祈雨丸(PL)

自家製(神)

朱華 緋奈子

祈雨様の神社の神聖さに対して、緋奈子は段々居心地の良さを感じてくるのかなぁってふと思った。背筋が伸びるようなというよりも、ゆっくり傍にいたいような、そんな感じになるのだろうか…

朱華 緋奈子

……ふぅー、おいしー……。優しい味って感じしてあったまるー……

とても満足そうに、ゆっくり味わっている。

それを眺めていたが

祈雨丸

……良かった

と安堵し、祈雨丸も自分の盃に口を寄せた。

祈雨丸

……あなたは人間の未成年、流石に本物の酒はいけないと思いましてね。形ばかりの甘“酒”です

祈雨丸

そうであれば、もはや作法など関係なし。新婦から口をつけようが、三々九度で飲まずとも、こうして誓盃の儀を真似る事が出来て、私は嬉しい

にっこりと、満足げに笑い、祈雨丸は赤い盃を飲み干した。
……そういえば、机の上には盃が三つ。
まるで、神前式だ。
互いがこのようなラフな格好でなければ。
このような、ただの和室でなければ。

ともあれ、眼前の神たるひとは、相変わらずの笑顔だった。

GM

甘酒が盃に入れられて出てきた時点で、GM(これは…………)となったが緋奈子はそんなこと気が付くはずもなかったのである。

祈雨丸(PL)

神前式(神…前…?)やりたくてですね……ふふ
神前式できたので、おおむね満足です……!

朱華 緋奈子

…………!!

ようやくその意図に気が付いた。
緋奈子とて、多少は歴史のある家の娘だ。
一時は跡取りと目されたことすらもある。
であれば、その形式それ自体を知らぬ筈もなく。
途端に、何も考えずただ美味しくいただいてしまったことが恥ずかしくなった。

朱華 緋奈子

ぅええとぉお……!

と慌てて取り繕うと、……せめて正座でもしようかと、じたばたしてみるも時すでに遅し。
さらにそうやってなんとか取り繕うとすること自体も恥ずかしく、緋奈子はあきらめたように、そして半ば逆恨みのように、少しばかり恨めし気に祈雨丸を上目遣いで睨んでみた。

朱華 緋奈子

……言ってくれれば、もっとちゃんとしたのに

ぼそっとこぼす。

祈雨丸

……すみません

と言うも、反省の色はあまりなく。

祈雨丸

あなたが成人を迎えたら、其の時は真の式をあげましょう

約束です、と。

朱華 緋奈子

きーやん、そーいうとこあるー

口を尖らせて不満をこぼしつつも、

朱華 緋奈子

……うん、約束

と、今度は嬉しそうに笑った。


















祈雨丸(PL)

家族には説明ついてるけど、友人とかにはまだちょっと結婚とかいうのは厳しいなー!!とか言われたんだろうな祈雨……
お友達にも祝ってもらいたいし、其の時にまたってことなんだろうな(多分)

GM

ふふwww 言いそうwww へへ……
改めてちゃんと式を挙げるんだろうなぁ……。


















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NEO HIMEISM 様
https://neo-himeism.net/

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