左右から魔物を挟み込もうと近付いた二人が、一瞬で後方に吹き飛ばされる。
浮遊しているその魔物は、何本もあるそのおどろおどろしい触手を様々な方向にうねらせている。後方にいたアデル達も、その変則的な動きに脅威を感じた。
次の奴が来るまで
片付ける!
左右から挟むっす!
ああ!
左右から魔物を挟み込もうと近付いた二人が、一瞬で後方に吹き飛ばされる。
浮遊しているその魔物は、何本もあるそのおどろおどろしい触手を様々な方向にうねらせている。後方にいたアデル達も、その変則的な動きに脅威を感じた。
取り敢えずコイツをやる!
援護するわ!
うぜぇんだよ、
その触手がよ!
そのまま逝きな!
うそでしょ……
刻弾が当たったのに……
いでで、
刻弾が効かないのか?
凄い連撃だったのに。
チッ!
頑丈な奴だぜ。
い、いや……
ちゃんと倒しました。
だ、だけど……
だけど?
だけど何?
反応が一体に……
でも……
反応の大きさは
さっきの比じゃないんです!
どうゆうことっすか?
まさか、最初の一体の力を
吸収したとか……
そんなところね……。
かなり危険だけど
一体なら戦い易いわ。
各自――
ぐあっ!!
ランディの脇腹に風穴が開いていた。
ユフィが新たな指示を出そうとした瞬間だった。
誰も油断なんてしていない。赤い光が走ったことしか分からず、気が付けば、ランディが後ろに飛ばされ仰向けに倒れていた。
ランディはその口元から、かなりの量の血液を吐き出した。
状況が一変し、仲間の窮地に全員が焦りを覚えざるを得ず、足が地を離れる思いを体験した。
あ……あぁ
ユフィの指示は止まり、口を震わせている。
頭ではこんな時こそと理解していたはずなのに。ランディの傷と、敵との戦力差が頭の中で交差し、次の手が見えない。自身の判断に全員の命が掛かっていると真に実感したのは、この時が初めてだった。
絶対に助けますっ!
ランディさんは必ず!
だから……、
だからっ!!
真っ先に動いたのはアデルだった。
ランディが倒れている場所に走る。言葉に強い決意を出しながら、ハル達に伝わるように。
アデルの目元からは涙が溢れて止まらない。言葉も上手く出なかったが、溢れる涙の目元は、強い光で輝いていた。