ジュピター

次の奴が来るまで
片付ける!

ハル

左右から挟むっす!

アデル

ああ!

 左右から魔物を挟み込もうと近付いた二人が、一瞬で後方に吹き飛ばされる。

 浮遊しているその魔物は、何本もあるそのおどろおどろしい触手を様々な方向にうねらせている。後方にいたアデル達も、その変則的な動きに脅威を感じた。

ランディ

取り敢えずコイツをやる!

ユフィ

援護するわ!

ランディ

うぜぇんだよ、
その触手がよ!

ランディ

そのまま逝きな!

ユフィ

うそでしょ……
刻弾が当たったのに……

ジュピター

いでで、
刻弾が効かないのか?

アデル

凄い連撃だったのに。

ランディ

チッ!
頑丈な奴だぜ。

ロココ

い、いや……
ちゃんと倒しました。
だ、だけど……

ユフィ

だけど?
だけど何?

ロココ

反応が一体に……
でも……

ロココ

反応の大きさは
さっきの比じゃないんです!

ハル

どうゆうことっすか?

アデル

まさか、最初の一体の力を
吸収したとか……

ユフィ

そんなところね……。
かなり危険だけど
一体なら戦い易いわ。
各自――

ランディ

ぐあっ!!

 ランディの脇腹に風穴が開いていた。








 ユフィが新たな指示を出そうとした瞬間だった。







 誰も油断なんてしていない。赤い光が走ったことしか分からず、気が付けば、ランディが後ろに飛ばされ仰向けに倒れていた。







 ランディはその口元から、かなりの量の血液を吐き出した。







 状況が一変し、仲間の窮地に全員が焦りを覚えざるを得ず、足が地を離れる思いを体験した。

ユフィ

あ……あぁ

 ユフィの指示は止まり、口を震わせている。

 頭ではこんな時こそと理解していたはずなのに。ランディの傷と、敵との戦力差が頭の中で交差し、次の手が見えない。自身の判断に全員の命が掛かっていると真に実感したのは、この時が初めてだった。

アデル

絶対に助けますっ!
ランディさんは必ず!
だから……、
だからっ!!

 真っ先に動いたのはアデルだった。



 ランディが倒れている場所に走る。言葉に強い決意を出しながら、ハル達に伝わるように。



 アデルの目元からは涙が溢れて止まらない。言葉も上手く出なかったが、溢れる涙の目元は、強い光で輝いていた。

 ~諷章~     173、赤と光

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