銀色の……
銀色の……
Chapter1-1:篠宮えりさ
ありえない!!
そう言うと、篠宮えりさは、スマホをベッドに向かって投げつけた。
スマホは回転する事無く、物凄い速度で空を切り裂き飛んでいく。
しかし、胸の辺りまでしか隠れてないシャツを着た黄色の熊のぬいぐるみが、見事にスマホの衝撃を受け止めた。
特段大きな音がでるわけでもなくーーー
―――という小さな音だけが部屋に響いた。
ぬいぐるみをよく見ると、腹の辺りは幾度となくダメージを受けた様な跡があるが、しっかりとした笑顔のままだった。
それよりも、そのダメージ後から、スマホ投げの常習性と共に、その投球速度と更には制球力の期待が伺えるほどだった。
なんでだ!なんでだ!
篠宮えりさは、怒りながらスマホを再び手に取る。
ありえない………なんで?なんで別れるの?
え?ま?フラれた?
しかも、LINEで連絡って!
明日、学校で会うし!その時で良いじゃん!えっ?なんでいま?……は?
明日、学校で会ったら……なに?無視すれば良いの?それとも、いつもみたく挨拶すれば良いの?
………は?何かどっちもムカつくんですけど!
いや、まって、相手が挨拶するパターンも、無視してくるパターンもあるよね……は?
無理!
スマホは再び、ぬいぐるみの腹にヒットした。
この熊……仮に上着が腹まで隠せていたなら、ここまでのダメージを追うこともなかったが、それはまた別の話だ。
いや、そんな話をするつもりはないが。
とりあえず……いろんな事を置いといて……。
篠宮えりさ………彼女は野球界の未来を担う『左の本格派投手』である事をまだ知らない。
というか、そんな未来に道が続いているのかも分からない。
……つづく。