――地下迷宮七階層、某所。

ランディ

そっち
行ったぞ!

ハル

自分がっ!

ジュピター

浅い!!

ユフィ

とどめっ!!

 ユフィの音速の鞭が、最高のタイミングで魔物にヒットすると、魔物は完全に動かなくなった。



 ハル達はこの七階層に降りてきて探索をしている。初めて戦う魔物は偶然少なかったが、楽に勝たせてくれる魔物はいなかった。

アデル

ハル、今の戦闘
凄く良い動きでした。
右腕少し手当しましょう。

ハル

ふぃ~強かったっすね。
アデル、
サンキュ~っす。

 戦闘後のアデルの手当が始まり、その中で反省会が行われる。あの時の連携がどうとか、あの敵は思いのほか機敏な動きをしていたとか、次以降の戦闘に役立てる為にだ。

 ハルの浅めの患部に、アデルは消毒液を使用している。導師の証である治癒の指輪を持っているが、今迄どおりの手当をすすめている。治癒の指輪による回復力増強の恩恵は、導師による高度な精神集中を要し、短時間に何度も使用出来るものではないからだ。

アデル

はい、終わりました。
次はランディですね。

ランディ

これぐらい、
何ともねーからいーぜ。

アデル

駄目ですよ。
少しの油断が命取りに
なりかねませんから。

ランディ

お、おぅ。

 温和で優しいアデルだが芯は強い。ランディもその強さに押され、大人しく手当を受け始めた。

ジュピター

しっかしどの魔物も
しっかり強いな。

ユフィ

さっきもロココの刻弾を
序盤に使ってなかったら
数で圧倒されてたかもね。

ロココ

ユフィさんの判断が
的確でした。
ほんとはもっと数を
減らせればいいんですけど。

アデル

例の刻弾はコフィンさんに
禁止されてますしね。

ジュピター

例の刻弾?
何だそれ?

ユフィ

大気中の魔気を集めて
刻弾を具現化するのよ。
そー言えばジュピターには
言ってなかったわね。

 ジュピターは首を傾げていたので、ユフィが説明をする。ロココの新型の刻弾が圧倒的殲滅力を持っていること。そしてその後、現れたリザの事も……

ジュピター

なんだそりゃ。
じゃ何で使わねーんだ?
強いんだろ?

ロココ

コフィンさんに伺ったら
『絶対に使うな』と
使用を禁止されて
しまったんです。

ジュピター

なんだかよく分からんけど、
駄目なんだろ、それ。
まぁ普通の刻弾は
ありなんだよな。
さっきも使ってたし。

ロココ

はい。
おそらく3発くらいまでなら
副作用はありません。

ランディ

頼もしい限りだな。

ロココ

……前方から魔物です。
数はふたつですが、
大きい力を感じます。

 会話の途中だったが一斉に戦闘態勢を取り、前方の闇に構える。ロココの言葉を聞き、ユフィがすぐに指示を出す。

ユフィ

ハルとジュピターで一体!
もう一体を三人でいくわよ。
アデルも刻弾を視野に入れて
臨機応変に!

 闇から現れたそれは、不気味な赤を光らせ、浮遊したままハル達を睨んだような気がした。不気味な音が耳を支配し、全員の背中に悪寒が突き抜けた。

 ~諷章~     172、悪寒

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