廻烏……よくも朱華からの遣いなどと
と零すその目に慈愛などなく。
ああ、やはり……”嘘吐きという生き物は、嫌いだ”
と吐き捨て、再びその男を追うために姿を消した。
マスターシーン:襲撃
祈雨丸は廻鴉を名乗った男、朽木を追う。
その気配を探っていたそのとき、ぐらりと視界が歪んだ。
すぐに気が付くだろう。
これは”予知夢”であると。
一度瞬くと、目の前に現れていたのは奇妙に歪む風景だった。目を凝らせば、そこを高速で駆け抜けていく赤い影が見えた。
朱華緋奈子。
否、今は彼女の体を借りた断章<残月>である。
彼女は一目散に建物の間を走り抜け、何かから逃げていた
瞬間、転げるように彼女が身を沈める。そこを白刃が過ぎる。
刀を振るったのは、まさにあなたが探していた朽木玄だった。
彼はしゃがんだ彼女をそのまま蹴り上げようとするが、それを緋奈子は苦無で受け止めその衝撃のままに後ろに飛び、くるりと体制を整えると逃走を再開する。
それを追う朽木。
しつこい……!
舌打ちをして、彼女は立ち止まる。そしてその地面から炎が巻き上がる。それは不知火の炎ではなく、魔法――呪圏を展開しようとしているとわかるだろう。
いい加減に……!
足を止めたのがいけなかった。あるいは、呪圏を展開した瞬間に気を抜いたからか。瞬きの間に、その懐に朽木が飛び込んでいた。
残念だったなァ
そうだ、最悪の展開を見るのが予知夢…阻止するための予知夢だった
血しぶきが飛ぶ。
朽木の刀が緋奈子の体を切り裂いた。
目を見開き、崩れ落ちる少女の体。
倒れこんだ少女を気にも留めず、男はその手に何かをつかみ取る。断章<残月>だ。
そのまま朽木は踵を返す。
しかしその足首を、震える手が掴む。
お前の目的は断章…やはりこっちの者か…?あるいは…舞扇のある程度の正体を知りつつ、プライズとして狙っているシノビ側の男か…?
かえ…せ……
血に沈みながら、それでも目の光を失わない少女に、朽木は一瞬つまらなそうに目を向け、そして皮肉っぽく笑う。
あァ
無様だなァ
そして刀を振り上げ、倒れ伏す少女に突き立てる――。
その瞬間、あなたの視界が戻ってきた。
そこそこヤバめな予知夢だった
ふふ
!……まさか
と呟き……そうだな、空を見上げ、日の高さを確認する。その時刻を測るに、それは未来の出来事…予知夢だと理解するんだなぁ。
そうですね……、あれが起きていたのは黄昏時だった……
……猶予も与えぬと言うか……いや、あるいは
と呟きつつ……判定、かな!?
はい!それでは特技を決定します!
夢の領域から!
2D6 → 5[1,4] → 5
《不安》ですね!これを糸口に、この予知夢に介入してください!
《眠り》から+1、になりますね…!頑張ります!
近い!どうぞ…!
眠りで予知夢介入!
2D6-1>=5 → 7[3,4]-1 → 6 [成功]
期待値!良い出目!
良い出目!しかし魔素は本当に出ない
確かに…‥‥
それではイイ感じに介入しちゃってください!調査と同じように演出してOKですよ!
はい!
では、まだ眩暈のように視界に残る予知夢の残滓。
そこから汲み取れたものは、底知れぬ《不安》のみ……。
あるいは……!
これが唯一の好機なのかもしれない。
夢領域の魔法使いとして、祈雨丸は自らの手の内に
《眠り》の刻印を刻み、目を閉じる。
(間に合え)
と荒波のようだった心を、
一瞬のうちに静寂へと戻す。
眠りに落ちるかのように、
祈雨丸はその予知夢の光景を追う。
……と言う感じで!
大変良きです……!ありがとうございます……!!
夢領域でよかったぁ……畜生の癖に夢領域でよかったぁ……
それでは、その《眠り》は予知夢へと繋がります。
祈雨丸の目の前には、先ほどの光景が広がっていた。
赤い夕陽に照らされた町中を高速で駆け抜けていく影。
その影――、逃げる緋奈子、追う朽木の姿が、一瞬止まっているように見えた。
では、その瞬間に現れてかっこよく介入してどうぞ!!!
はぁい!では、その場所に繋がったと理解した瞬間、二人の姿を見つけ……
割って入る。
武器を構えた朽木のその手に、勢いのまま蹴りを入れた。
牽制の武器はじき。
!!
武器をはじかれた瞬間、間髪入れず苦無を祈雨丸に向かって投擲する。
それはまっすぐに祈雨丸の目の前に迫る。
祈雨丸は怖じる素振りすらない。
そして眼前まで飛んできた苦無は、突如として降り注いだ雨により地面へと叩きつけられる!
飛沫による霧の向こうで、かつてないほどの敵意で朽木を睨む…。
朽木はその隙に後ろへと飛び、距離をとる。
……へぇ。こいつは驚いたな。あんた、どっから出てきた?
答える義理はない
と淡々と返し、
貴様と朱華に繋がりがないことは調べた。まことのシノビか。あるいは、断章(あれ)を狙うということは、書籍卿の類か
その言葉に、朽木はにやりと口角を上げる。
ほう。そうか。バレちまったか。いけねぇなぁ。面倒なことになりそうだ
そうだな……、ここでやりあうのもそれはそれで面白そうだが……。乱戦はあんまり好きじゃねぇんだよなぁ
……仕方ねぇな。ここは預けるぜ。ま、あとで取りに来りゃいいか
てっきりvs朽木さんと思ったら……
ほう…逃げるか……
彼はそういうと、あっけなく刀をおさめ、そして笑う。
せいぜい、“それ”をなんとかするといい。放っておいて燃え尽きた後回収しにきても俺は構わねェがな
そして一瞬で姿を消す。
彼の消える気配を察し、
雨の矢を生み出し射かけるも間に合わなかった。
そして舌打ち……
そのとき、祈雨丸は背後から殺気を感じる。
分かっている。
この場に居る“敵”とは、あの男だけではない。
寧ろ、自らが真に手を掛けねばならぬのは、
そう……
と静かに振り向く。
振り向いた視線の先には少女の姿があった。
体にはいくつもの刀傷を負いながら、
それを気にも留めず炎を立ち上らせている。
目に浮かぶのは、
焦燥、怒り、そして狂気。
次から次へと……鬱陶しい!!
ああ
とその姿を見て呟く。
ああ、いたわしい、その姿
目を伏して、祈雨丸は憂う。 ……が、
全くいたわしい、その傷、その狂気。我が嵐の牙を忘れ、その程度の厄災に飲まれるなど……惨めよな、小娘……!
その表情に滲むのは、
焦燥、怒り、狂気。
龍神と刃を交わし、
そして結果として自らを制した人間を
たかが断章が支配だと?
それは、“祈雨丸”にとって
侮辱この上ないことだった。
しかしその怒りの意味を、
“断章”は理解しない。
黙れ、黙れ!! 蛇ごときが……!
そして呪詛のように、
あるいはともすれば祈りかのように言葉を吐き出す。
嗚呼……誰の元にも堕ちるものか。私はただ私の願いのために在る……。それを邪魔立てするというのなら……
この断章<残月>が全て燃やし尽くしてやろう!!
断章<残月>が魔法戦を挑みます!
残り火が威勢よく吠えおる。旱にも満たぬ熱で、我は焦がせぬと知るがよい!
祈雨昏満都早社宮司、水面の月などこの大蛇が呑んでくれようぞ!