アリスにブン殴られてフィンクスがどうやら正気に戻ったらしく、ダメージに身をよじっている。ロココがフィンクスに駆け寄るが、その後ろから威圧的な影が伸びてきた。

　アリスの躾(ｼﾂｹ)はどうやらまだ続くようで、床で傷みによじれるフィンクスの胸ぐらを掴み引き起こした。

　これから血生臭い制裁が行われると思った瞬間、アリスの動きが止まる。そしてフィンクスの顔を確認するやいなや、首根っこを掴んで酒場の外に連れ出されてしまった。

　心配するアデルとロココを余所に、リュウは呑気にコーンポタージュに浮くクルトンに目を泳がせている。

　難しい顔をしたアリスが、どこかいつも見せぬ表情をして戻ってきた。そして元の席に座りコフィンの顔をじろりと見据えた。

　コフィンの問いに答えるでもなくアリスは眉を寄せ何かを考えこんでる。珍しい光景であるが、全員フィンクスの安否の方が気になっていた。

　リュウのその声で、全員が動き始める。実はずっとリュウの膝枕で気絶していたユフィ（前回クリムゾン様に卒倒させられていた）が目覚め、顔を真っ赤にしてそそくさと準備をし始める。だが、その手元は滅茶苦茶で、短刀とテーブルナイフうを間違えていたりした。

　遊びに行くかのようなハルの挨拶を返し、コフィンはゆっくりと濃い茶をすすっている。そしてアリスの視線を受けてなお、涼やかにしていた。

　酒場を最後に出たハルの耳には、それ以降、何も聞こえてこなかった。