* * *
クルナ
広場
* * *




サティン

わーい!待て―、ハッジィ!

ハッジィ

捕まるもんか―!

ヴォルク

はっはっは。

ヴォルク

サティンが元気になって何よりじゃわい。

サティン

待て―!

サティン

いて!

サティン

急に止まらないでよ―

サティン

あれ……?

ハッジィ
サティン

どうしたの、ハッジィ?
鬼ごっこやめるの?

ハッジィ

あ……あ……あ……

サティン

ハッジィ……?

ヴォルク

む?

あ……あ……あ……

サティン

え!?

ヴォルク

な……なんじゃ!?













サティン

あれ、ハッジィ……?どこ……?

ヴォルク

き……消えた……。





















レヴスを覆う影
前編















* * *

旧アインスターク城

玉座の間

* * *







アインスターク
ポメラ

あれ?

ソルフェ

どうした、ポメラ。

ポメラ

アインスタークの体が……。
なんか……小さくなっていないか?






アインスタークの躯体に刺さった


討魔の剣の刀身の部分から、


赤い液体とも気体つかぬ物体が


先程までは滲むように流れ出ていましたが、


いつの間にか脈々と流れるように


なっていました。







そして、


まるで風船の空気を抜くかのように、


アインスタークの躯体は


みるみるうちに小さくなっていきます。




ポメラ

おいおいおい……。

シーラ

このままでは、この体が消えてしまうわ……。なんとかしないと。

ソルフェ

無駄だ。もう間に合わん。




その躯体が吐き出した赤い何かは、


全て玉座の間の大理石の隙間に


流れ落ちていきました。





残されたのは、


討魔の剣の刀身と


アインスタークのローブだけです。




ポメラ

……まさか、逃げたのか?

ソルフェ

いや、違うようだ。

ソルフェ

シーラよ、何か感じぬか?

シーラ

そうですね……。この部屋の床から強大な魔力が感じられます。

シーラ

ですが、先ほどのような邪悪なオーラかというと、そうでもないような……。

ソルフェ

うむ。

ソルフェ

恐らくこの床の下にあるのはマナプールだな。

シーラ

マナプール?

ポメラ

なんだ、そこで泳ぐのか?

ソルフェ

マナプールとは、魔力の器の総称だ。

ソルフェ

先程のギーズの話とあわせるなら、ポメラは巨大なマナプールを持ち、蓄えているマナの量も相当なもの、ということだ。

ポメラ

へ、へぇ〜

ソルフェ

理由はわからぬが、アインスタークはもしもの時には、自身の魔力を全てこの部屋のマナプールに保管しようとしていたようだ。

ソルフェ

だが、その身を滅ぼしたあとに、それが何の意味を持つのか……。

シーラ

うーん?

シーラ

つまり、もともとアインスタークの躯体は、マナだけで象《かたど》られていたって事なんですか?

ソルフェ

……はっ!?






















ギーズ

……そうだね。
確かに僕には僕の目的があるよ。






ソルフェ

む……ようやく来たか。





ソルフェ

ヤツの空気が変わった?





ギーズ

余を呼び止める不届き者はキサマか?














ソルフェ

そういうことか!

ソルフェ

よく気づいたな、シーラよ。
どうやら全てが繋がりそうだ。

シーラ

はい?

シーラ

やっぱり、アインスタークの躯体はマナで……。

ソルフェ

いや……。

ソルフェ

三年前、アインスタークは確かに実体を持っていた。しかし、ここに残されていた躯体には実体がなかったのだ。

ポメラ

どういうことだよ、ソルフェ?

ソルフェ

……しかし、待てよ……、それなら……。だが、薬袋は全て……。しかし、そんな気配は……。

ソルフェ

ぶつぶつ……。



なにやらぶつぶつと


考え事をするソルフェージュ様。


ポメラ

うぉ、久しぶりの長考モードだな。こうなったら、てこでも動かないぞ、ソルフェは。

シーラ

そうなのね。

シーラ

うーん……。

シーラ

ねえ、ポメラ。せっかくだから、この間に部屋を調べてみましょう。

ポメラ

だな。

シーラ

たまには私もパーティーリーダーっぽいことしないとね。

ポメラ

なんだ、気にしてたのか?

シーラ

気にしてたっていうか……。

シーラ

最近、自分がただ着いて来てるだけのような気がしてて……。

ポメラ

心配すんなよ、シーラ。
シーラはよくやれているさ。

シーラ

でも……。

シーラ

私、勇くんの足手まといになりたくないから。

シーラ

だから!
ちゃんと力をつけたいの!

ポメラ

……。

ポメラ

悪かったよ、シーラ。

シーラ

なんでポメラが謝るの?

ポメラ

これまでの間、アタシはシーラを守ろうとばかりしてきていた。

ポメラ

心のどこかでシーラを認めてなかったんだと思う。目の前にいるのはお姫様なんだってな。

シーラ

……。

ポメラ

だが、これからは違う。

ポメラ

シーラはアタシたちのリーダーだ!
イサムと同じ、な。

シーラ

……ポメラ。

ポメラ

よーし、シーラ!
アタシはどこを調べりゃいい?

シーラ

そうね、ポメラはアインスタークのマナが流れ込んだあたりの大理石を調べてもらえる?

シーラ

私は、アインスタークの遺留物を調べるわ!

ポメラ

おっしゃ!まかせろ!




こうして、シーラさんとポメラさんは


玉座の間の調査をはじめました。


シーラ

うーん……。

ポメラ

どうかしたか、シーラ。

シーラ

これ、どうしましょ。

ポメラ

アインスタークのローブと討魔の剣の刀身か……。魔力は高そうだよな。とりあえず回収しようぜ。

シーラ

じゃあ、ローブで刀身を包んで……と。

シーラ

あら……。

ポメラ

なにか見つけたか、シーラ。

シーラ

なにか、仕掛けのようなものがここに……。

シーラ

うーん……。

シーラ

ポチッとな!

ポメラ

ちょ!
爆発したらどうすんだ、シーラ!

シーラ

え?
その時はその時かなー?









ポメラ

見ろ、壁が開いていくぞ!

シーラ

これって……。



















シーラ

外へ繋がるのね……。
でも、外は空中よね。

ポメラ

まるで発進口だな。

シーラ

それなら空を飛べる人は、ここから外へ出れるわね。

ポメラ

んー……?

シーラ

どうしたの、ポメラ?

ポメラ

なんかあっちの方の空が……。











ソルフェ

ダメだ、真実まで一手足らぬ。

ポメラ

おい、こっち来てくれ、ソルフェ!

ソルフェ

なんだ、ポメラ。
騒がしいぞ。

ポメラ

見ろよソルフェ。あっちの方向、レヴスだよな?



















ソルフェ

む……。

シーラ

嫌な感じの暗雲が立ち込めてますね……。

ソルフェ

……レヴスの方面に……暗雲だと?















ソルフェ

アルザレアで
世のため人のため
働いて頭を冷やしてこい。

ソルフェ

強制送還!
【リフレクション】













ソルフェ

まさか!



顔色を変えたソルフェージュ様。


慌てて懐から地図を取り出します。


ソルフェ

アインスターク城とアルザレア城を結ぶ線上にあるものッ……!

ソルフェ

……レヴス!

ポメラ

それがどうかしたのか?

シーラ

はっ!

シーラ

……すぐにレヴスへ行きましょう、ソルフェージュ様!

ソルフェ

ああ!

シーラ

悠久の風を切り
眼下の大地も意に介さぬ
大空の支配者よ!
その誇り高き翼を我に貸し給え!

シーラ

いでよ、ワイルドウィンド!

シーラ

お願い、私達をレヴスへ連れて行って!

    なんなりと。   












ソルフェ

消滅したアインスターク……。
消息のわからぬ信心の鏡……。
三年前の呪詛とその薬……。

ソルフェ

悪い予感しかしない。




















つづく


【勇者勇の装備】
レベル  :24
めいせい :312
ぶき   :新品の短剣
よろい  :鋼鉄のよろい
かぶと  :銀の額当て
たて   :なし
どうぐ  :野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×2
      霊薬草×5
      淡水ザメの煮凝り
      淡水ザメの骨
      淡水ザメの牙
      黒王の羽
      いつもの額当て
      王の冠
      カジノコイン×2560
      緋糸手句の防寒具
なかま  :[泉守]ダイ
      [もふもふ]もふもふ
      [魔導エンジニア]ラムディッシュ
とくぎ  :ファイアブレス
      トキシックブレス
      釣り
      カン
      介抱
じょうたい:脇役

【シーラの装備】
レベル  :12
めいせい :240
ぶき   :いつもの本
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの飾り
たて   :なし
どうぐ  :やくそう×94
      イーサ薬×9
      おみやげ×99
      ガラスの破片
      討魔の剣の刀身
      闇夜のローブ
なかま  :戦士ポメラ
      大魔導ソルフェージュ
      [コボルト]ライル
とくぎ  :しょうかん
      値切り
      冷やかし
      虫の知らせ
      ディゾネの思い出
      寒さに耐える
      好奇心
じょうたい:真パーティーリーダー

第82話 レヴスを覆う影 前編

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