メナ

皆、久し振り。
元気そうだね。

 懐かしい声に振り返ると、そこには明るいメナの笑顔があった。



 どうやら探索から帰ってきたとこらしく、後ろにはパーティメンバーの顔も見える。

ツバキ

御無沙汰してます。
四階層攻略してきました。

ニック

ギリギリだったけどね。

シデン

あんなのじゃ五階層からが
思いやられるな。

イオ

まぁまぁ反省会は
腹を満たしてからにしようか。

ハル

メナ♪
久し振りっす。
皆元気っすよ。

メナ

ハルは相変わらず元気だね。

 お互いの無事を喜ぶハルとメナ。満面の笑みを顕わにして近況を報告しあった。



 ハル達は六階層の攻略を始めたことやダナンが抜けてジュピターが帰ってきたことなど、メナ達は四階層の攻略が済んだ事を伝えあった。

メナ

ハル達は今、六階層か、
凄いね。
無理してない?

ハル

大丈夫っすよ。
全部順調っす。
メナ達こそ無理しちゃ
駄目っすよ。

メナ

確かに次からは
五階層だし、まだまだ
気を引き締めなきゃね。

レイン

それに俺が居てやれるのも
ここまでだからな。
新メンバーを自分達で探し
息を合わしていかなきゃ
ならねーんだぜ。

ツバキ

レインさん、
私達なら大丈夫。
新メンバーすぐに見つけて
五階層も攻略してみせるわ。

ニック

そうだったー。
レインさんいなくて
大丈夫かなぁ。

シデン

またかニック、
弱音を吐くなと言ったろう。

ニック

不安なものはしょうがないよぉ。
次のメンバーだって
すぐに見つかるか
分からないしね。

イオ

シデンの言う通りだ。
それに次のメンバーは
大体の目星はつけてあるんだ。

レイン

だろうと思ったぜ。
流石リーダー。
俺なしでも充分
やっていけそうだな。

メナ

レインさん……
今迄ありがとうございました。
私達これからも
レインさんに教わったこと
忘れないでいます。

レイン

お前達なら出来る。
それに俺なんかより
すぐに強くなるさ……。
特にニック、自信持てよ。
俺から見りゃ一番才能あんのは
お前なんだからよ。

ニック

えぇっ!?

レイン

次会った時にも
まだ弱音吐いてたら
俺がぶっ殺すぜ。

ニック

はっ、はいぃぃぃl~。

レイン

フッ。
じゃあまたな。
俺は又新しいルーキー見付けて
根性鍛えて回っから。
そいつらに追い抜かれないよう
強くなっておけよ。

 メナ達の面倒をみていたレインは、あまり表情を変えない男だったが、めずらしく笑顔を残し背を向けて去った。四階層攻略までの約束でパーティに参入していたからだ。彼の言葉にもあったように、ルーキー達の面倒をみるのが自分の役目と決めているようだ。

ハル

行っちゃったっすね。

シデン

出会いと別れは
ここでは当たり前。
そんな歌どうりだな。

シェルナ

そうだね。
だから私達も今を生きる。
気の合った仲間達と一緒にね。

 シェルナはそう言い、アデルと軽く乾杯した。樽酒のグラスが『ティン』と高い音を鳴らす。一口で樽酒の香りは口の中に広がったらしく、シェルナは満足そうに目を細め満足感を現した。

 タイミングよく注文が届いたサラダを、アデルが皆に行き届くように皿に盛る。ウェイターがメナ達の分の麦酒を適当にテーブルに運んでくる。ハル達とメナのパーティが一緒に食事を始める。そして話は自然に新メンバーの情報に移っていった。

ツバキ

いつの間に
そんな話が進んでいたの?

イオ

さっきも言ったように、
レインさんが抜ける事は
分かっていたからね。
事前に募集を掛けていたんだ。

ユフィ

流石ね。
メンバー見付けれないと
探索の手が止まって
どうしようもなくなるものね。

シデン

で、どんな奴なんだ?

イオ

なんと八階層まで
行ったことがある
ベテランの人なんだ。

ニック

え!?
そんな人が一緒に?

メナ

八階層だと
コフィンさん達と同じくらい
ベテランですよね。

コフィン

到達階層だけで言えば
そうですね。
ベテランという言葉が
正しいかどうかは別として。

ツバキ

凄いよ!
コフィンさんやアリスさんと
同レベルの人だったら、
絶対に頼もしい人だよ。
さぁっすが~、イオ。

 ツバキのテンションが上がったようで、イオの肩をバシバシと叩く。少しアルコールが入っているのにも正比例して、その力加減はイオの肩の耐久力を越えているようだった。

イオ

痛い痛い(笑)
それにまだ正式に
決まったわけじゃあ
ないしね。

アデル

良い人が見付かって
よかったですね。

メナ

うん。
私達ももっと強く
ならなきゃ。

コフィン

水を差すようですが
イオさん、
人を選ぶ時は慎重に。
いい加減な表現の者も居ますし
真贋の見極めは重要です。

イオ

御忠告ありがとうございます。
次は皆とも顔を合わせるつもり
ですが肝に命じておきます。

コフィン

……はい。
私も良き人であることを
願っています。

 剣の腕も大切だが、メンバーの人格や目的はより重要なものだ。まさにベテランこそ、その大切さを知っている。

 浮足立ってその見極めを怠らないようにコフィンはイオやメナ達に注意を促した。



 そしてこの後、迷宮で偶然見つけた呪いのアイテムの話をしてしまったニック。コフィンがその話を逃すはずもなく、呪いのアイテム談義を語り始めた。

ハル

いやぁ~、
また訳わかんない話を
始めたっすねぇ~。

メナ

コフィンさんの前で
呪いのアイテムの話したら
あーなるのね。

 酒場を(コフィンの呪いのアイテム談義から)抜け出し、酔い覚ましに散歩を始めたハルとメナ。



 少し肌寒い風が吹き抜けた通りは、冒険者区を見下ろせる位置だ。二人の視界には、暖かな街灯や夜の賑わいが届いていた。

 ~諷章~     165、真贋

facebook twitter
pagetop