――迷宮六階層、某所。
――迷宮六階層、某所。
ひゅ~♪
速すぎだろ。
やっぱ実戦は
緊張感が半端ないな。
ジュピターの復帰戦はいきなり六階層で行われた。
「久々だしせめて五階層にしときましょう」とユフィが提案したものの、ジュピター本人の希望で六階層になったのだ。
今、四回目の戦闘が終わったところだが、自身の考えは杞憂だったとユフィは胸を撫で下ろしていた。
「素早い体捌きと淀みのない動き、力技ではない合理的な技術と広い視野、こりゃ一流だな」。迷宮で初めてジュピターの戦闘を見たランディの感想だ。
それに個の戦闘力も高いだけでなく、ハルとの連携も息がピッタリと合っているのだ。二人が一緒にいるだけで、戦闘力が何倍にもなる錯覚をランディは感じていた。
息ぴったりですよね。
驚くほどにな。
僕の出番が
全くなくなりました。
まぁそれは
私達もこの六階層に
慣れてきたってのも
あるでしょうけど、
確かにジュピターの参入は
大きくプラスになったわ。
ジュピターめちゃくちゃ
速くなってるっす!
どんな修行したら
そんなに強くなれるんすか。
こないだ言ってた
ジッチャンの剣術書は
字が汚い挙句、
すげー分かりにくい。
ずばり剣の才能
あったんだろーけど、
人に教えるのは
下手なんだろうな。
で?
多分こんなことが
言いたいんだろーなーって
想像しながら色々な。
でもその本はあんまり
役に立たなかったかな、実際。
意外です。
きっとその書が凄く参考に
なったのかと思ってました。
ジッチャンにも
「そんなもん読んだら弱くなる」
って、最後に言われたんだ。
まず読めねーし
最初に言えって思ったけど、
確かに小手先の技が書いてある
って感じが正直な感想だな。
そうだとしても
ちょっと読んでみたいって
思うっすよ。
そもそも字を読めるか
怪しいし、読解力に大きく
不安要素があるわね。
ユフィの的確でいて高台から見下ろすような台詞は、全員の笑いを生んだ。
まぁ今度持ってきてもいいけど
あれ? どこやったかな?
どっかそこらへんに
放りなげたまま埃被ってるかも。
有名剣士の剣術書を
そんな扱いに……
有名剣士ね……
現物見ると幻滅するぞ。
只のものぐさジジイだし。
酒場なんかに持ってきたら
シャインに口八丁で奪われて
競売にでも掛けられるわよ。
確かに。
簡単に想像がつきます。
そうゆこと。
じゃ、このまま
マッピングを続けるわ。
全員慣れた頃が
一番危ないのよ。
油断は禁物!
行くわよ!
戦闘後の手当などをしながらの談笑時間は終わった。ユフィの一声で、探索は再開する。
そして順調に探索は進む。四回に及ぶ戦闘も苦戦するシーンはあれども、連携を駆使して勝利し、マッピングもスムーズに進んでいく。そして感覚的にようやく階層の半分程の探索を終えた頃。
七階層への階段も
見付かりましたし、
今日はこの辺で帰還するのも
良いかもしれませんね。
確かにそうね。
おそらくマッピングも
半分くらいは埋まったはず。
あれ!?
どうしたんだアデル?
あの通路の先って
おそらく行き止まりですよね?
そうっすよ。
ハルは相変わらず
夜目が効くし鼻も効くな。
いやぁそんなに
褒められてらこそばゆいっすよ。
やっぱりそうですよね。
だからといって
褒めなくてもいいって
ことじゃあないっすよ。
自分もやっぱり褒められたら、
それならやはりそうです。
へ?
六階層の行ける場所は
ここで最後です。
どうゆうこと?
マッピング担当のアデルが手元の地図を見て不思議な事を口にする。
ユフィが疑問の声を挙げるのも当然だ。その疑問の声を受けながらも、アデルは何かを思案している。戦闘が順調だった分、余計に不穏な空気が場に漂った。