まったく、ハンマの若領主はシブチンでいけないねぇ。スレッジと言ったっけか？

いくら地の利を活かしたツギノだって、ミリオンソードから流れ込むマナがなけりゃ巫女術の力も衰えるって言ってるのに。

そんな怪しげなモノに保守にかける金はこれ以上ない。

だってさ。

カタラクト。お前さんのコト、全く見てもらえなかったな。

pipipi...

今からあんなに頭が固かったら、歳食ったら何がどんだけ固くなるんだか……。

pi!

どうした、カタラクト？

……おや。

ほぎゃほぎゃぁ……。

……こんなところに捨て子か。

親は一体何を考えているんだか……。

……まあ

それだけツギノの景気が後退しているってことなんだろうけどな……。

pi.

……ピタ。

ほう、泣き止んだか。

……。

……人のぬくもりというのも、たまには悪くないな。

良い人形(ドール)が手に入った。アタシ好みのドールだ。こき使ってやるから大きくなりやがれ。

……スヤァ。

それにしても、幸薄そうな顔つきだな。

折角だ。運勢が変わるよう、名も与えてやろう。

ふむ、そうだな。

ラムディッシュなんてどうだ？
子羊肉のプレートだ。

ドールよ。
お前は私のディナーとして食われる運命だぞ。喜べ。

pipipi.

……で？

……はい？

なんのようだ、と聞いているんだ。
まさかアタシの顔を見たくてきたわけではあるまい。

あ、はい、実は……

ぬあにぃ！？
アタシの顔を
見たくないってぇ！？

いやいやいや！
お師匠様の元気なお姿が見れて幸せです！

で。

えーっと……。

気をつけないと長くなりそうだな。

実は……。

俺は今、『魔王ツヴァイ』というのを追い求めて旅をしているのですが、一向にその手がかりがつかめず……。

……ツヴァイ？

そこで、お師匠様なら何か力になれるんじゃないかとお連れしたわけです。

なんだ、アンタの中でアタシは便利屋かい。

いえいえ、滅相もございません！

ツヴァイ……ツヴァイ……ツヴァイねぇ……。

ちょっと聞きたいんだが……

イサムはどこでそれを知ったんだ？

え？

それはたしか……アルザレアの城下町でおばちゃんの井戸端会議から……。
サ・ヤから来た行商人の話って言ってて……。

うぇ？

マジか、勇者様。

また聞きの井戸端会議とな？
情報源としてこれほど怪しいものはないな。それに突き動かされて旅をするイサムには驚くわ。

へへへ。

褒めていないぞ？

しかし、そのツヴァイを追い求める道中で

街が2つ消失し

ヨーコソのカジノが失われ

ツギノでは手下の夢魔にも狙われました。

これがツヴァイと関連がないとは考えにくいのです。

うーむ、言いたいことはわかった。

なるほど、確かにサ・ヤも消失しているな。

気にかけていたわけではなかったので、今始めてみたぞ。

なんだって！？
サ・ヤも既にツヴァイの手に！？

噂の大本の行商人とやらも、おそらくそこから逃げてきたのだろう……。

なんてことだ……。
サ・ヤに行けば何かある可能性も絶望的なのか……。

だが、アタシのこの目には、
ツヴァイの姿が映らぬなぁ。

いや、もちろんツヴァイ自体はしっている。暴力と破壊の邪神として、古くから伝わっているからな。

そうなんですか？

イサムはアルザレアに住んでいたんだよな？王立図書館で『アルザレア=クロニクル』を読んではいないのか？

不勉強ですみません……。

まあいいさ。ともかく、そのツヴァイは片鱗すら見当たらんのだ。

それどころか、イサムが倒したはずのアインスタークの方が活性化すらしている。

これは伝えるべきでもないか。

……そうですか。

くそ、八方塞がりだ……。

……しかし、だ。

ツヴァイとゆかりのありそうな物なら見えているぞ。

え！？
……それはいったい？

サンドのモノリスだ。

サンドのモノリス？

ああ。
砂漠のオアシス、ジョルジュ・サンド。
そこの神殿にあるモノリスだ。