――北方の同盟国カシアラ。

サリアス

レジエレナ王女、
無事で何よりです。

レジーナ

おお久しいなサリアス殿下。
貴公こそ壮健のようだな。

レジーナは病に伏せていると

敵とギュダに思わせている間に、

イシュトベルトの同盟国

カシアラに来ていた。



かねてより親交のあった

王子サリアスが

城門前まで出迎えてきている。

サリアス

遠路であるが故に
御身体に休息が必要でしょう。
一休みしてください。

レジーナ

確かに私は病気の身だからな。

サリアス

久方ぶりというのに
御冗談がすぎます。
とてもそのようには
見えませんが。

レジーナ

はっはっは。
やはり病気に見えんか。
それなら、又
剣を交わしてみるか?

サリアス

いやいや……
貴女に勝てると思っていた
馬鹿な王子はもう居ません。
どうか御勘弁を。

レジーナ

ならば此度の戦、
兵を出してもらうぞ。

サリアス

それは構いません。
寧ろそのつもりです。
奴らナバールは、
我々にも軍門に降れと
高邁な勧告文をよこしました。
どうやら我々の絆を
そこらの利害だけで
繋がっている者達と同列に
置いているものと思われます。

レジーナ

カシアラの隼軽騎兵と長弓兵、
それに勇猛でいて
忠誠心の厚い将軍達を
知らんらしいな。

サリアス

叩き潰して
思い知らせてやりましょう。

レジーナ

意気込むのも良いが、
取り敢えず食事にするか。
腹が減ってかなわん。

サリアス

直ぐに用意させますが、
戦況は大丈夫なのですか?

レジーナ

あ~、
それは優秀な部下が
踏ん張ってくれているはずだ。

サリアス

あのナバールの大軍を相手で
随分と余裕ですね。
流石ギュダ殿だ。

レジーナ

踏ん張ってもらわねば困る。
シバケンの
ダークアークモードソードが
賭かっておるのだ。

サリアス

は?

レジーナ

レプリカなのだが・・・・・・
いやそれはこちらの話だ。

サリアスは

レジーナの活き活きとした瞳を

不思議そうに見つめている。

サリアス

それでは食事の後に
直ぐに出陣出来るよう
準備させましょう。

レジーナ

いや、出陣は明日だ。

サリアス

えっ!?
急がなければ
ギュダ殿が危ないのでは?

レジーナ

ふふふ、今行くのは早すぎる。
ナバール軍はこのカシアラにも
重圧を掛けるよう
軍を差し向けてくる。
それまで、
中でゆっくりさせてもらうぞ。

サリアス

ほんとによいのですか?
時は一刻を争うかと……

レジーナ

無用の心労だ。
それより名物の
デザートチェケンパリパリ揚げは
用意してあるのか?
私はそれが楽しみで
仕方なかったのだ。

一刻を争うと思っていた

サリアス王子は、

レジーナの余裕ぶりに

面食らってばかりだった。



そして

額に脂汗を滲ませる戦いをギュダに任せ

レジーナは極上の料理に舌鼓を打った。

――ユベイル城、

ユランの最後勧告の時。

ガンツ

マジか!?
すげーな、恋人だろ?
断るか普通。
ってか姫の勝ちかよ~。
勝ち誇った顔が目に浮かぶな。
まぁしょうがないか。
賭けは負けたけど恐れいったぜ。
これからギュダ殿をからかうの
ちょっち控えようかな。

――夕刻の決戦前。

ガンツ

誰もお前を責めやしない。
姫を護る為に降るって
選択肢をとってもな。

ギュダ

…………

ガンツ

よし。
姫との賭けには負けたけど
ここで降参の意を
俺から引き出してやる。
からかうの止めようかと
思ったけどこれが最後だ。
この状況(四面楚歌)で
勝てるとは思わねぇだろ。

ガンツ

負けたっていいんじゃねーか。

ギュダ

姫…………

ガンツ

決まった。今のは意外だろ。
この俺からの言葉とは思えない
不意の一撃。
この返答で降らないわけがない。

ギュダ

なんだガンツ。
これしきの事で降参か?
私は何も考えずに突撃するが
手柄を独り占めしていいのか?

ガンツ

マジか!?
すげーな。
こりゃ恐れ入ったぜ。
降参すんのは俺の方だ。

レジーナ

ほぉ~
流石ギュダ。
忠誠心の塊のような男だが、
死んではいかんぞ。
私の病気が悪化したら
誰が軍を率いるのだ。

ギュダ

っぅ~※△$#~!

サリアス

お気の毒に……

レジーナ

さて話は終わりだ。

サウダージ大将軍

おのれ……
戯言をベラベラと…………

レジーナ

サウダージ!
まだ戦う意思があるなら
私は四方の全軍に突撃を
命じなければならん。
私の中ではこの戦争の結果は
この包囲をもって決しているが、
貴殿はそうは思いたくなかろう。

サウダージ大将軍

イニシアチブを取ったつもりか。
いくら包囲しようと
私にはまだ大軍がある。
手の内の多量のコマは
幾らでも動かせるぞ。

レジーナ

私は此度の戦で
幾つも学ばせてもらった。
その内の一つが
人それぞれの心の強さだ。

サウダージ大将軍

小娘の講釈などに
耳を傾ける用意はない。

レジーナ

ならば私は語るまい。
だがサウダージよ、
為政者として
民の声は聴いてくれまいか。

サウダージ大将軍

何を言っている……?

レジーナは自身の考えを

言葉に乗せずに止めた。



その意外な反応や、

サウダージの事を為政者と称した事に、

サウダージは僅かにだが

疑問を目元に表した。

 







草の香を乗せた風は

両陣の間を隔てる事なく

吹き抜けている。


レジーナは真剣な眼差しを輝かせ、

夕焼けを満面に浴びてから

実に清々く自然な笑みを

浮かべていた。

レジーナ

それはウル、
お前の役目だ。

ウル

オレ!?

レジーナ

思い出せウル、
何故私と共に来たのか。
そしてここに居る
兵達だけではない。
大地に根差す民、
そう……人間の代表として
意を発してみせよ。

ウル

オレの役目……

目を丸くしたウルだったが、

役目という言葉とその意味を

即座に理解した。



そして敵の総大将である

サウダージを一瞥してから、

ゆっくりと声を上げた。

ウル

あ~、えっと
オレはチナ村の
ウル=サークシャヤ
ってもんだけど、
そこの姫さんが喋れっ
つーから話す。

サウダージ大将軍

辺境の村民か。
手短に済ませよ。

ウル

聞くところによると
イシュトベルト王が
この戦の火蓋を切ったんだよな。
如何なる理由があれ
開戦は最悪の決断。
オレはこっちの軍にいるが
その点においては
その王さんにもムカついてるよ。
戦争は間違いなく
人を苦しめるものだからな。

サウダージ大将軍

そうだ。
この戦争はイシュトベルト王が
火蓋を切った。
不戦条約を蔑ろにし――

ウル

いやそうゆうのは
もういいから。

サウダージ大将軍

許される訳もなかろう。
不条理に国境を脅かされ
黙っていては――

ウル

だからいいって言ってんだろ。
オレはそんな小さな話を
してるんじゃない。
それに聞いたぞ。
オレの横にいるギリアムが
一連の事情を
教えてくれたからな。
イシュトベルト王に
そう仕向けたのは自分だと。
それがナバールの手段だってな。

ギリアム

口にしたのは
ほんの触りだがな。

サウダージ大将軍

そのようなことは知らぬ。
立証出来ぬ言い掛かり――

ウル

ほんといいって。
小さな御託は。
オレはただの村民だが、
戦争をお前達戦争屋に任すのを
指で咥えて見ている
必要はないと分かった。
それでオレが言いたい事は一つ。

ウル

戦争をやめろ。
それだけだ。
両者言い分もあるだろうが、
今すぐこの不毛な戦いを
やめろってことだよ。

サウダージ大将軍

なんと陳腐な。
話にならん。
それがこの状況に発する言葉か。

僅かにもサウダージに

響いていないウルの訴え。

まるで子供の幼稚な考えに

厭きれたような態度で、

サウダージはウルを見下ろした。

レジーナ

確かに。陳腐極まりないな。
それが出来れば苦労はせぬ。
私と共にここまで来て、
平和を探し求めてきた
結論がそれか。
如何なる理想であれ、
成し得なければ愚想に過ぎぬぞ!

サウダージ大将軍

クックック、
同感だ。

レジーナ

…………だが
その愚想と呼ばれる理想を
実現させるのも人間だ。
出来ぬと言って放り出すのは
容易であり誰にでも出来る。

ガンツ

ニヤリ。

レジーナ

まず一歩!
誰もやらなければ
まずは自分がやればよい!
誰に笑われようが
己の心のあるがままに
従い行動する。
それは、
誰に指示されるわけでもなく、
自身で切り開く未来に
直結するものだ。

レジーナは国宝剣ジュヅヴァを空に掲げ

地平線にも届きそうな

強い声で続けた。

レジーナ

ジア・エカーテ!
この古語は軍用の鼓舞以外に
『己が足で立ち上がれ』
という意味がこもっている。
己が正しいと思った事を
どのような逆境があろうと
やりきる勇気!
己が足で大地を踏みしめ、
己が腕で望む未来を
手繰り寄せるのだ!!

ギュダ

グッ!

ガンツ

グッ!

スダルギア

グッ!

レジーナに追従するように、

ギュダとガンツとスダルギアが

自分の武器を物言わず空に掲げる。









レジーナが祖国奪還で

立ち上がった戦だが、

当初より兵には、

『同じ志だからこそ自らの手で

その志を完遂するのだ』

と口にしていた。



兵士それぞれに目的や志があり

ここまで来た。

無謀でしかない進軍の連続で、

多くの仲間の命を越えて来た。

自らの手で志を完遂しようとして

ここまで来たのだ。



国という大きな単位で考えれば、

一個人の力など微力でしかない。

だが、レジーナとの行軍で

艱難辛苦を乗り越えた今、

無力ではない事を

どの兵士も理解していた。



自分達の意志は、

力は、

行動は、

他の者に波及し拡がり

大きな力に成る事を実感していた。





そして

『ジア・エカーテ』

そう声を挙げるのは誰か――――



レジーナと共に

ここまで戦ってきた兵士達は

知っていた。

「一介の民の声を

愚想と呼びたいならそうしろ。

だが私は知っているぞ。

どれだけ罵倒されようが、

どれだけ無謀であろうが、

どれだけ状況が悪かろうが

人間は乗り越えられる。

その力を一人一人が

持っているのだ。

その力とは、

人間の偉大さとは、

一人の一歩目なくして有り得ぬ。

我々の名は後世では消え失せるだろう。

だがその偉大な一人の行動は

永遠にこの大地に

刻まれる!

レジーナ

ニッ♪

レジーナは

憂いのない笑みを浮かべた。





空に掲げたジュヅヴァーが

その笑みに呼応するかのように

夕焼けの光を煌かせた。

名も無き兵士の選択肢

1、「ジア・エカーテ!」
 自らの意志で大地に武器を刺し声を上げる。

コメント欄に

「ジア・エカーテ!」

と入れて頂ければO.K.です。



選択肢でないようですが

行動するかしないかの

選択肢と思って頂ければ

よいかと思います。(強引w)



※アイテム使用不可です。



そしてこれが最後の選択肢になります。



採用されるかどうかは不明ですが、

詳細を入れて頂いても結構です。


もちろん、感想・応援のコメントも

大歓迎です♪



選択期限は

2021/1/30(土)の23:59まで

とさせていただきます。



沢山のご参加、心待ちにしております。

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