それから村瀬が本郷大学に赴任してから初めての秋を迎えた。大学は魔界なのだから季節なんてありはしない。農業のように季節に合わせて仕事の内容が決まるのではなく、一般の社会で年度の始まりが四月で一年が365日だから、それに従うだけだ。
大体、七曜制なんてメソポタミア文明の遺物だ。それに伴ってハッピーマンデーという制度が出来たが、魔界の住人には迷惑なだけだった。
そんなある日、村瀬が一人に一つあてがわれた個室でくつろいでいると、ドアをノックする音が聞こえた。「どうぞ」と言うと、入室してきたのは沖田だった。魔界にあって人間臭が抜けない青年だ。