コーティを一瞬で亡き者にした魔物は、ガーナッシュとゲイドウィンに接近してきていた。
俺が殺る!
コーティを一瞬で亡き者にした魔物は、ガーナッシュとゲイドウィンに接近してきていた。
ガーナッシュ!
ガーナッシュは魔物の大きな鎌を掻い潜った。愛用して被っているフードが捲れ上がるほどギリギリの距離だった。そして潜り込んでから渾身の一撃で、魔物の乗っている馬を切り割き本体に深々とダメージを与えたのだ。
魔物は地面に転がってから、ドス黒い何かを吐いている。
ハァ、ハァ……
コーティ……
ガーナッシュはコーティの首を身体の位置に戻し、外套を被せた。二人の関係は分からなかったが、共に戦った死者に対する悲哀が充分に伝わってくる。
コーティまで……
皆、皆、こんな簡単に……
ガーナッシュ……
ヤバいっ!
避けろっ!!
!?
っくぅ……
間に合わなかったか。
声の主はデメルだった。
コーティの死を嘆く二人の背後から、魔物が最後の力を振り絞り鎌を投げてきたのだ。唯一それに気付いたデメルが、離れた場所から声を上げたのだ。
しかしデメルの言葉通り、その声も間に合わず放たれた鎌はゲイドウィンの胸に深々と刺さっていた。
ヴィタメールは魔物に駆け寄りトドメを刺す。完全に動かなくなりその後、消滅した。
ガー、ナッ……シュ。
嘘だろ……
駄目だ!
死ぬなっ!!
まだ助かるはずだ!
おいっお前等!
ありったけの水薬をよこせ!
早くしやがれ!
ガーナッシュは自分の持つ水薬の蓋を両手それぞれで器用に開ける。鎌が刺さったままの胸の傷口に急いで水薬を掛ける。
水薬は口から飲む方が効果は高いが、速効性では患部に掛ける方が良いのだ。緊急を要する場合は患部に掛け、そして少し楽になった後、飲む方法が最良なのだ。
ガーナッシュは自分の水薬を全て傷口に掛けた。決して安価ではない水薬を全て躊躇なく使った。それだけ事態は切迫しているし、ゲイドウィンの傷は致命的だったからだ。
…………
早くしろ!
デメルもヴィタメールもリアも、ガーナッシュの言う通りに水薬を渡そうと近くまで駆け寄った。だが、三人共そのまま口を噤んでしまう。
早く出せっ!!
一番近くまで来ていたリアの手にある水薬を、ガーナッシュはぶん盗ろうと手を伸ばす。
ガーナッシュ、
もう死んでるわ。
三人は近付いてきてすぐに分かった。水薬を掛けられているゲイドウィンは既に絶命していることを。
もしかしたらガーナッシュも気付いていたかもしれない。その事実を認めたくない一心で、助けようと動いていたのかも。
リアの現実を突き付ける言葉は、ガーナッシュの心のバランスを大きく揺るがした。
三人の関係は分かりようもなかったが、尋常でない悲哀が伝わってくる。それはデメルとヴィタメールならお互いどちらかを失くした時を想像すれば感じ取れる。リアにとっては形は違えど、経験済み。大切な者を失くした気持ちは重々に知っていたからだ。
「お前が勝手な事を言ったから」
「あのままゲイドウィンが言ってたように
帰還すべきだったんだ」
「優しくしてりゃあ、つけあがりやがって」
「そもそもなんでお前みたいな女を」
「なぜ二人が死ななきゃならない」
「お前が死ねばよかったものを」
「お前のせいだ」
「お前が二人を殺したも同然だ」