シャイン

やっぱり金目の話
出てこなかったーぁ!

 ダナンとリアの経緯を聞いての第一声が、金の話。リアもそれに苦笑いを返して、皆に顔を合わした。

ダナン

相変わらず金の話が好きだな。

シャイン

金の話じゃなくって
金が好きなのよ。
話だけなら一文にも
なりゃしないじゃん。

リア

そうそう。
現在、
仰る通りの素寒貧状態♪

シャイン

まぁ~
しゃーないわね。
旦那に甲斐性期待するのが
間違いってもんね。
リア、苦労するかもよ~。

リア

金なんて何とかなるって。

シェルナ

そうだよ~。
二人の愛があれば
なんとでもなるって。

リア

なぁに言ってんのよ。
愛は築き上げてくもんよ。

アデル

築いていくって
何だか素敵ですね。

リュウ

じゃあ二人は
これからだから
今のとこの愛情は
これくらいか?

 食後の紅茶を飲んでいるリュウは、座ったままの姿勢でテーブル程の高さを示すように手の平をかざす。

ロココ

リュウさん。何てこと
真顔で言うんですか。

フィンクス

いやいやもうちょっと、
これくらいはあるだろ。

 フィンクスは二人を庇うような台詞だが、リュウのとほぼ違わない高さを示した。

ハル

フィンクスそれ、
大して変わってないっすよ。

ランディ

てか、昨日からの話なら
愛なんてもんは
鼻くそくれーなもんだろ。

ダナン

テメーこら金髪野郎!
調子乗りすぎだろ!

リア

いやぁランディいい線。
マジでそんなとこでしょ。

ダナン

うわぁ認めやがった。
鼻くそだぞ。

ユフィ

違うわよ。
さっきリアが言ったように
築き上げてくもんなのよ。
あ……

ユフィ

ぁ……、愛……は。

ハル

ぅきゃーーーー!
ユフィが久々に照れてるっす。
愛っすね。
愛を語ったからっすね。

ランディ

おいおい学習しない奴だな。
このパターンは殴られる
パターンだろ、ハルキチ。

ハル

え!?

リュウ

あーらま、また
やっちゃった。

シェルナ

ユフィ可愛いすぎ♪

シャセツ

おい、マジでそれ
キマッてるぞ。

ロココ

え!?

 勢いでハルの首を絞めていたユフィは、力加減を見失っており、完全に絞殺する勢いに気付いていなかった。

 騒がしいテーブルが苦手のシャセツが、つい注意してしまう程の状態だ。

ハル

死ぶふぇずぇすぁじぇあぁ

シャイン

これホントに
脳みそやられてんじゃない?

ユフィ

あ、つい対人用の
暗殺術を……

ハル

ふぉ、星が
みへるっす~

アデル

まっ、
ハルなら大丈夫でしょう。

ユフィ

そんなことより――

シャイン

仲間殺しかけておいて
そんなことってw

ユフィ

ダナンがリアと一緒に
レイマールに行くなら
また欠員が出るわね。

リュウ

あ、本当だ。

ユフィ

やっぱり気付いてなかったのね。
また、募集板に上げる?

ロココ

あ、ハルさん
泡吹いてる……

ダナン

皆に急な話で悪ぃと
思ってんだが、
挨拶だけは絶対に
二人で行きたいんだ。

リア

我儘だって理解してるけど。
悪いわね。

ユフィ

それぞれに事情はあるわ。
リア、気にしないで。
そして遅れたけど
二人共、おめでとう。

リア

ありがと。

 ダナンがパーティを抜けるのは、正直言って手痛いものがある。並の冒険者では到底及ばないその力強さは、ハルやランディでは追い付けないものだ。

 だがユフィは快く二人に祝いの言葉を贈った。



 そして返礼するリアとダナンの後ろから、聞きなれた声が聞こえてきた。

ヴィタメール

二人共おめでとう。

デメル

リア、俺はまだ
お前が素直になるのを
待ってるぜ。

リア

あー、じゃあ
ずっと待ったままかも。

デメル

そうしとくわ。

ヴィタメール

で、僕達からの餞別。

シャイン

へ?
何これ?

ヴィタメール

10万ガロンチップ10枚。

シャイン

え!?
本物?

ダナン

勝った金は二人の取り分って
行った筈だぜ。
でかいリスク取ったんだから
気にするなって。

ヴィタメール

確かに僕達の取り分。
そして条件は好きにしろ
だったよね。
そしてさっき言ったろ?
餞別だって。

デメル

お前の為じゃねぇーよ。
リアの為だ。
まぁ俺の金じゃねーけど。

リア

こんなに沢山貰えないわ。
使いきれない。

 確かにこの額は日常で使う金額からかけ離れている。餞別にしては法外なのだ。

ヴィタメール

僕達にもカッコつけさせてよ。
デメルはあんな事言ってたけど
二人の幸せを僕達は願ってるよ。

 デメルとヴィタメールそしてリアは、リアが教官になる前からの付き合いだ。共に探索にも潜った過去もある。その仲となれば、この餞別は法外と言えないかもしれない。


 デメルはリアの顔を直視していないが、ヴィタメールと同様に祝う気持ちはあるみたいだ。



 そしてヴィタメールは懐かしむように、昔の思い出話を語り始めた。

 ~円章~     151、餞別

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