ダナン

ようやく同じ土俵に
乗ってきやがったな。
だがよ、
楽に勝負出来ると思うなよ。

 デメルとヴィタメールが次々と賭け金を上げていく傍らで、今迄黙って見ていたダナンが口を開いた。

ダナン

もう先が見えてきたんで
教えてやるぜ。
そのゴードンは
俺達の二重スパイ。
そいつを使って俺達を
裏切らせたみたいに
思っているだろうが、
偽の情報を流されているのは
お前の方なんだぜ。

ギダ

!?

ダナン

苦労したのは
お前に追い込まれている
演技をそれとなくする事。

ギダ

ッグ…………

 相手の混乱を誘おうとダナンが咄嗟についたブラフだった。そのタイミングで、ヴィタメールが100万ガロンチップを2枚入れて合わせてから、更に2枚100万ガロンチップを追加した。タイミングとしては最高だった。

ゴードン

な、何言ってやがる!?
ギダ、騙されるな!
これはあいつの戦略さ!

 ゴードンが慌てて言うが、ギダの疑心暗鬼は拭えるわけもなかった。

 強気の上乗せを返す前に仲間割れを誘い、自分が騙されているかもと思わせるダナンの言葉は、効果抜群だった。

ギダ

…………

ゴードン

し、信じてくれ……

 信じてくれとしか言えないゴードンのみぞおちに、ギダは容赦ない膝蹴りを繰り出す。さらに、たまらずうずくまるゴードンを見下ろして、その頭に唾を吐きかける。

ギダ

使えねぇゴミが。

 と、吐き捨てるギダ。ギダにとっては真実などどうでもよく、判断を狂わせ、敵を調子付かせている現状が気に食わないだけなのだ。

 ギダは今迄で一番苛ついた表情を隠そうともせずに、そして長考すると思いきや、200万を合わせて、100万上乗せしてきた。

ランディ

おいおい、
終わるのかこの話。
マジで長いっつーの。

 ダナンの話にそう言ったのは、ランディだったが、そう思うメンバーも何人も居たみたいだ。

ダナン

俺もこの時はそう思ったぜ。
だがよ、心配には及ばないぜ。
次のヴィタメールの言葉で、
状況は激変したんだ。

ハル

何て言ったんすか?

ヴィタメール

あ~、のせてきたか。

ダナン

ってな。

俺が
『どういう意味だ』
って聞いたら……

シェルナ

聞いたら……?

ダナン

『種切れなんだ』
って、空のポケットを
ひっくり返しやがったんだ。

 全員の声が酒場に広がる。周囲の冒険者も何事かと視線を向けてきたが、いつも騒がしいハル達と認識して視線を戻した。ダナンはその時のヴィタメールのポーズをとって見せている。



 いきなりの劣勢、それどころか絶体絶命。間延びしそうな展開から、一挙に窮地だ。

ロココ

心配に及びます。

 ダナンの先程の言葉に対して、変な言葉使いをするロココ。それに便乗してハルも『心配に及ぶっす』と連呼している。

アデル

心配しか湧いてきません。

 と、胸元で両手を揃えるアデル。

ランディ

やっぱり長ーし。

 行儀が良いとは言えぬワイルドなフォークの使い方でパスタを絡めとるランディは、そう言いながらも笑顔を見せた。

 手詰まり…………



 デメルもそれが分かっていたのか、

デメル

しゃーねー。
奴等の脳味噌砕いて
記憶飛ばすか。

 なんて無茶苦茶な事を言っていた。

 勿論ダナンがそれを止めたが、その光景に胸を撫で下ろしていたのはギダだった。

ダナン

ギダは心の底から
安堵の顔を見せていたんだ。
きっと奴もギリギリで
後がなかった。
あと一歩……、
ほんのあと一歩で俺達は
届かなかったんだ。

 天井を見上げるダナンは、本当に残念そうな表情を浮かべる。それから遠い目をゆっくりと閉じて、その時の光景を思い出しているみたいだった。








 ダナンの話を聞く全員が、結末をじっと待っていた。






 ――――そしてその長い沈黙に耐えれなかったのは、やはりハルだった。

ハル

もしかして旦那達って
負けたんすか?

 ~円章~     146、やっぱ長ーし

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