意識が戻る。
意識が戻る。
…………
僕は十七歳の僕に戻っていた。
砂浜を見る。
あの時、
僕はここにいた。
ここで勉強をしていた。
そして、
日向は波打ち際にいた。
そんなに遠くなかった。
走れば間に合う距離だった。
それなのに、
あのときの僕は
小さくて、
臆病で、
へっぽこで、
足がすくんで何もできなかった。
太陽くん!
その声に振り返る。
少女が嬉しそうに手を振っていた。
小学生高学年ぐらいの女の子。
彼女の名前は……
久しぶりだね、日向
やっぱり、太陽くんだ。来るなら、来るって連絡してくれれば良いのに
……ごめん
……日向
なぁに? 太陽くん
明るい笑顔で彼女は言う。
それは、僕の名前だ。
僕の名前を彼女が呼ぶ。
それが
ただ、嬉しかった。
久しぶり
うん!
毎年、
僕はここで日向と会っていた。
ここにいるのは、
あの日、
波に飲まれた幼馴染の女の子。
あの頃の日向が、
あの頃の姿で、
ここで僕を待っている。
あの頃の日向がここにいる。
だから、僕はここを訪れる。
理由は、
彼女が僕を待っているから。
太陽くん、勉強してる?
してないよ、つまらないから
ダメじゃないの。私の旦那さんになるのに
そうだね……でも、日向と喋りたいからここに来た
!
ありがとう
……
知ってる? ヒマワリはね、お日様に向かって咲くんだよ
そうだったんだ
太陽くんはね、私にとってのお日様なんだよ
だから、私を捨てないで
捨てるわけないよ。だから、こうして毎年来てるじゃないか
そうだよね