――スダルギアが

ユベイル城に合流した頃。

レジーナ

どうしたスダルギア?

スダルギア

この後、軍議を開くんだな。

レジーナ

そのつもりだ。

スダルギア

少し耳を貸してくれ。

レジーナ

なんだ、コショコショ話か?

レジーナ

ギュダ

何だ!?

スダルギア

なぁ~に、練兵中にな、
お嬢ちゃんにプロポーズすると
言っちまったから
しておこうかと思ってな。

ギュダ

冗談がすぎるぞ。
ふざけずにおれんのか?

レジーナ

ふむ。面白い。
考えておこう。

ギュダ

姫!
また何か企んでおいでか!

レジーナ

今、聞いたろ。
プロポーズだよ。
その内容を面と向かって
聞く奴がいるか。
デリカシーに欠けると
いつまでもモテぬぞ。

――軍議の後。

レジーナ

よし、ギュダは行ったか?

スダルギア

早くも次の仕事に
取り掛かっているようだ。
絵に描いたような真面目さだな。

レジーナ

おかげで私は裏で
楽しめるんだよ。

スダルギア

俺達もだぜ、
クックック。

レジーナ

それでは、
ウルを呼び戻すぞ。

ウル

何だ?
軍議は終わっただろう?
それに……

レジーナ

わぁっとっと、
いいからいいから、
あの五月蠅い男に
見付かるだろう。
ちょっとだけだ。
伝えておくことがある。

ウル

ギュダに見付かったら
駄目なのか?

スダルギア

昼間の手紙あんだろ?
ガンツ宛のやつだ。

ウル

ああ、それがどうか
したのか?

スダルギア

あれはガンツを
裏切らせる為のものだ。

ウル

何だって!?
でも何でそんな事……

スダルギア

そんなもん
読んだからに決まってるだろう。

ウル

はぁっ!?
だってアイヅガルドの
封蝋もしっかりあったし
どうやって……

スダルギア

封蝋なんざ幾らでも
誤魔化せる。
俺にとっちゃあ朝飯前だ。

ウル

無茶苦茶だな。

レジーナ

だがそのお陰で内容を
知る事が出来た。
そしてガンツはこの後
手紙を読むだろう。
軍議の前に読んでいたら
平然として
いられないだろうからな。

ウル

で、どうすんだ?
おそらくガンツは相当に
葛藤させられるだろうな。

レジーナ

そうだな。
相当に悩むだろう。
折角だから是非悩んで貰おう。
その葛藤を越えて
アクションを起こされる前に
我々が動く。

スダルギア

おそらく明日の軍議には
顔を出さないだろう。
そして答えを出すのは
その辺りのはずだ。

レジーナ

そこでだな……
ごにょごにょ……

――その深夜。

ガンツ

!?

スダルギア

おーおー、
悩んじゃってるよ。
やっぱり奴にも
忠誠心らしきものは
あるんだな。

ウル

そりゃあそうだろ。
家族が人質にもなるだろうし
自分だけの問題じゃないからな。
それにやはり覗き見なんて
不謹慎だぞ。
だいたい……

レジーナ

声が大きいぞ、ウル。
この葛藤に意味はあるのだ。
特に明日までは
大人しくしていてくれ。

――翌日の軍議前。

レジーナ

なるほど、
ガンツは良い状態だな。
この軍議を手早く終わらせ
話をしよう。
それまで動かないように
監視を怠るなよ。

兵士

ハッ!

レジーナ

うひょ~☆
楽しくなってきたぁ♪

伝令兵

姫、耳を疑うような情報が。

レジーナ

何だ?
そーゆうのは好きだぞ。

伝令兵

敵中に潜らせていたあの
ジャグラスなのですが……

レジーナ

駄目だったか?

伝令兵

いえ、その逆です。
逆どころかその向こう側です。
異例のスピードによる
出世に次ぐ出世で
なんと!
三騎将に昇格したそうです。

レジーナ

本当か?

伝令兵

嘘のような話ですが
どうやら確かなようです。

レジーナ

全く理解が及ばん。

――軍議の後、ユベイル城郊外。

ガンツ

…………

兵士

ガンツ様、
レジーナ様がお呼びです。

ガンツ

後で行くと伝えてくれ。

レジーナ

だと思ってこちらから
参ることにしたぞ。

ガンツ

レジーナ姫!?
なぜこんな所に?

レジーナ

ガンツ、
軍議をすっぽかすとは
懲罰ものだぞ。

ガンツ

まったくその通りです。
是非…………
そうしてください。

レジーナ

よぉ~っし、
つっかまえたぁ~。
それではいざ懲罰房へ
レッツゴー♪

レジーナ

ようやく雨も
治まってきたか。

ガンツ

レジーナ姫…………

スダルギア

暗い顔してても
色男は様になるもんだな。

ウル

この男の取り柄は
前向きな明るさだろう。
おい、そうだろ?

ガンツ

…………
お前達まで。

レジーナ

よし揃ったな。
では聞かせろ。
ガンツ、
返事はどうするのだ?

ガンツ

ま、まさか、
知っているのか?

スダルギア

読んだぞ。
全部な。

ガンツ

マ、マジかよ……

ウル

で、それを逆手に取る。
その為にならこちらの
手の内は全て晒す。
ガンツの裏切りを
信じさせる為には、
そちらの方が
真実味があるからな。

レジーナ

まったく悪い事を
考えるやつだな~。
後ろから刺すタイプだな、
あ~恐ろし。

スダルギア

ほんと怖いな。
俺も気を付けよう。

ウル

お前等が殆ど考えたんだろうが。

レジーナ

いやいや、
自分の城を焼く作戦なんて
常人が考えれると思えん。

スダルギア

悪魔が全裸で土下座しそうな
作戦かと思ったがな。

ウル

もう好きなように言え。
どーでもいいや。

ガンツ

……なるほど。
雨の中でずっと悩んでたのが
馬鹿みたいに思えてきたよ。

レジーナ

まったく風邪でも引いたら
どうするつもりだ。

ガンツ

面目ない。俺はともかく、
レジーナ姫まで雨の中を……

レジーナ

お!?

ウル

どうした?
ホントに風邪でも引いたんじゃ
ないだろうな。

レジーナ

それだー!
それで格段に面白くなるぞ。

ガンツ

レジーナ

私が倒れて面会謝絶に
なるんだよ。
ギュダが心労で老けそうだが、
私は水面下で自由に動ける。
そうだ、ではその間に
カシアラにでも遊びに行くか。

スダルギア

流石、軍師殿。
考える事がえげつない。

ウル

ったく、なんでそーなる。

ガンツ

ふ~。
まったく頼もしいお仲間だよ。

レジーナ

手紙を何枚か送るだけで
大軍を意のままに操れるのだ。
まぁ一番の問題は、
ギュダが無茶し過ぎないように
コントロールする
ガンツの役目だ、頼んだぞ。

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