全員の頭の上にクエッションマークが現れる。
ダナンの真剣に訴えられた言葉と、受け入れる側の現実感のなさが入り交じり、誰もが理解し難い状態に陥っていた。
け、結婚!?
全員の頭の上にクエッションマークが現れる。
ダナンの真剣に訴えられた言葉と、受け入れる側の現実感のなさが入り交じり、誰もが理解し難い状態に陥っていた。
え〜っとぉ、
1+3は?
4だよ。
28×674は?
知らねぇよ。
ってかおめぇも答え
分かんねーだろ、それ。
18872だな。
この場合の計算の仕方は……
おいおい、リュウまで
現実逃避してんじゃねーよ。
話逸らすなって。
聞いてんのかよ
え、えとぉ~
……ど~ゆ~ことですか?
私には結婚するって
聞こえたんだけど……
だから誰がだよ。
俺だって言ってんだろ。
って、ダナンさん誰かと交際
されてましたっけ?
つーか、それが本当なら
相手はどんな珍獣なんだ?
だーっ! るせぇっ!
人間だよ!
当たり前だろが!
アンタってそんなに
金溜め込んでたんだ?
金で釣ったとしか
考えられんみたいな
言い方すんじゃねぇ。
しかも俺ぁ素寒貧だろが!
リア・・・・・・に
全部やっちまったし。
結婚詐欺は重罪だぞ。
テメーっ!
いい加減にしろよ!
もしかして……
相手って……
おっ!?
リアじゃない?
なるほど。
はぁ? それはないでしょ。
リアは縁談があるって
言ってたし、まさかこんな所に
来ている冒険者なんか
誰も勧めないでしょ。
それに例え勧められたとしても
普通断るって、
こんな大男の素寒貧……
…………
ん!?
って、え?
そうなのか?
…………
ホントに……
波紋が一切立たぬ水面のように、静かな空気が場を包む。
全員、どうやら嘘や冗談ではないと感じるごとに、ダナンからその経緯を知りたくなってきた。そしてその興味は沈黙となりダナンの説明を待つことになる。
話せってか、
いきさつってやつを。
レイマール地方で伝わる啄木鳥の玩具のように首を縦に振るアデルとシェルナ。結婚に至ったその話を勝手に想像し、聞いてもいないうちから頬を赤らめている。
よーやく信じて
くれるようになったか。
ダナンは椅子の背を前にドカッと座り、小さく見える背もたれに腕を組みゆっくり語り始めた。
――二日前、酒場でリアと別れた日の深夜。
酒場で深酒をしたダナンは、宿への道を酔い冷ましがてら遠回りしていた。
その路地で遠目にリアらしき人物を見かけた。何日かディープスで旅の用意をすると言っていたので、その点はおかしくなかった。だが何か胸騒ぎのしたダナンは、リアの後を追った。
ん?
少し追いついてくると、遠目にだがリアに同行者がいるのが分かった。
どうも見覚えのある雰囲気だ……。路地はどんどん人気がなくなる方向に伸びている。ダナンの胸でざわつく何かは、益々激しくなっていく。
リアに追い付きそうになった時にダナンは思い出した。同行者は、カジノでダナンと賭けをしていて大勝したギダという男だった。確かにリアと少し話していたが、妙な取り合わせだ。
まっ!?
まさか……
その時、不意を打たれたような感覚で、ダナンの脳裏に嫌な仮定が浮かび上がった。
イカサマ……。
カジノでギダとゲームをした時……、あの大物の手役、奇跡的な大敗。パーティのガロンをかき集めたダナンから、大半のガロンを持っていったあの勝負。あれは仕組まれたイカサマではないか?
しかも…… 、しかもそのイカサマにリアが関与しているのでは。今迄疑う気持ちなど微塵もなかったが、そう考えても辻褄が合う。
むしろ、あんな奇跡的な大勝、しかもレートをかなり上げた時に都合よく……。
ギダは兎も角、ずっと和気あいあいとしていたリアにまで疑惑がよぎるのは、ダナンを激しく動揺させていた。