レジーナに
騙されていたことに気付いたギュダ。
だがその期間の長さに
敵を前にしながらも
頭が眩む思いだった。
何から話せばよいのだ?
いつからですか。
何もかも
いつからお考えだったのですか?
スダルギアと
合流した時からだな。
レジーナに
騙されていたことに気付いたギュダ。
だがその期間の長さに
敵を前にしながらも
頭が眩む思いだった。
それにウルもどうやって……
スダルギアの報告も
私だけでなく敵方にも
誤報だったのか?
じゃあ順を追ってと言いたいが
オレ達から報告するか。
――ウルが居たタキア城、数時間前。
さて、いつまで
この十人たらずの人間で
この城を守れるかな。
タキア城の兵はウルの策で
夜間にギュダの居る
ユベイル城に移動していた。
作戦の肝は
空城で三騎将の一人ギリアムを
足止めすることだ。
危険極まりない作戦だが、
余った兵力は激戦である
本隊の兵力となる。
それに最大の目標は
ギリアムへの内通。
それによる寝返りだ。
しっかしウルも
肝が座ってるよな。
俺達は兵士だからいいもんの、
只の民間人だぜ。
場合によっちゃあ、
一瞬で踏み潰されて終わりだぞ。
兵の命も民間人の命も一緒だ。
それにそうゆうお前達も
いい度胸しているじゃないか。
半分やけくそだよ。
ぎゃっはっはっは。
まぁ聞く限り勝算はある。
取り敢えずは
時間を稼げるだけ稼ぐぞ。
少ない人数だが、
なるべく大勢の兵が
待機しているように
見せかけるんだ。
ギリアム様。
敵は討って出て来ぬ様子です。
少し様子を見ようか。
お手並み拝見だな。
ギリアム様……
いつまで待機でしょうか?
彼等の狙いはおそらく
時間稼ぎと思えるのですが。
空城の計……。
只の足止めであれば
何とも退屈な戦場と言えよう。
そう呟いたギリアムは
カインに目配せをして
兵をタキア城に前進させた。
しかも、
戦闘隊形ではなく行軍隊形でだ。
つまりギリアムは
空城と見破っていた。
いくら少数の兵で
多くの兵が居る様に見せかけても
限界があったのだ。
お前がギリアムか?
ギリアムが城門を前にした時、
ウルが問う。
それにはカインが答えた。
いかにも三騎将が一人、
暁星のギリアム様だ。
ここは空城と見破っているぞ。
直ちに門を開き、
大人しく投降しろ!
やっぱバレてたか。
流石に簡単にいかないな。
自己犠牲の上に腹を決めた
時間稼ぎの作戦か?
まぁほとんど図星だ。
では大人しく城門を開けよ。
悪いようにはせん。
カイン様っ!
後方から敵影です。
間に合ったか。
なるほど……
どうりでな。
我々が気づいたのではなく
気付かされていたのか。
ユベイルに移した兵を
更に迂回させ我々の後ろに。
しかも側面からもか。
それだけではない。
南のアズール城からも
出兵してきている。
お前達は完全に
包囲されているんだよ。
だが空城同然の
このタキア城を落とせば
問題なくなる。
残念ながら、
この戦術の肝はそこ。
……そう、
空城と思わせる作戦だ!
無人と思われた城壁から
何百という兵が姿を現した。
弓に矢を番え、
いつでも
ギリアム達を狙い撃てる状態だった。
ギリアム達にとって
兵力で勝っているといえ
この状況は明らかに不利と言える。
カイン。
先程の言葉は撤回する。
退屈な戦場と言ったのは
失言だったようだ。
立場は逆転した。
さぁどうする。
空城と思わせ
弓兵の射程に誘引され
三方から包囲されたこの状況。
あっぱれと言えよう。
私以外の将になら容易く勝利を
手に出来たであろう。
お前だったら違うというのか?
それではカイン……
見せてやるか。
我々の底力を。
この劣勢を機知と武の力で
覆してみせようか。
そうか……
ふぅ~。
やれやれ。
観念したのか。
そうではない。
きっと戦う意志は
ないのであろう。
オレは只の民間人。
殺し合いは御免だ。
民間人!?
確かに武人には見えないが……
その民間人が何故
兵を率いて城を守っている。
あの姫さんへの返答。
それを聞きに来ただけだよ。
それは
『私の力になってくれんか?』
レジーナがそう訴えた
その返答のことだ。
病に倒れていると
聞いているが……
まぁな。
それでは駄目だ。
それでは駄目なのだ。
残念だ。
数舜前までとは打って変わり
静けさが城門前に広がる。
両軍の兵士も
お互いの将の静けさが
伝播しているようだった。
仕方ない。
力づくなんて元より
出来よう筈はないんだ。
だがこれだけは
受け取ってくれ。
あの姫さんからの返答だ。
ん?
カイン……。
この小僧をひっ捕らえよ。
今からこの城は
我々のものだ。
!?
は……、はっ!
おいおいおいおい、
あんの姫さん何て
書きやがったんだ。
――あえなく捕虜となり、
ユベイル城に向かう道中。
おい!
ジジイ!!
なんて書いてやがったんだ。
あの手紙。
教えろっ!
世の中知らぬ方が
良い事もあるぞ。
それでもか?
かまわん!
やれやれ……。
手紙には私への返事が
書かれてあった。
『私の元で働く気はないか』
という質問のな。
だから何て……
『謹んでお受けします』
とな。
はぁ?
何だと?
それに加え、
『おそらくこれを読んでいる頃、
誰も傷ついてないであろう。
それならば目の前の
目つきの悪い男を捕縛し
ユベイルの戦場まで来い』
とな。
ああん、
目付きが何だって?
『そこでの光景を目に焼き付け
私を部下にしろ』
だそうだ。
呆れを通り越したら
笑えてくるんだな。
部下にしろって
命令する奴いるか?
まぁ、どちらにせよ、
ユベイルで歴史が動く。
お互い特等席ではないか。
あー、へいへい。
ちゃんと楽しませてもらうよ。