ギュダが出陣を決めて
僅かな時間が経った。
夕刻の戦場には全軍が整列し、
敵もそれに呼応して陣を引いている。
本陣にいる歴戦の大将軍サウダージだ。
西からはウルを破った
暁星のギリアムが、
東からはスダルギアを破った
鉄騎兵団バグズが
ここに向かっている。
更には北から
カシアラとの通信を断った
銀狼フーバッハだ。
まだ合流しない内が一縷の望み。
戦局が夕刻になり一変し、
朝昼は時間を稼ごうとしていた
ギュダだが今は急いでいた。
ギュダが出陣を決めて
僅かな時間が経った。
夕刻の戦場には全軍が整列し、
敵もそれに呼応して陣を引いている。
本陣にいる歴戦の大将軍サウダージだ。
西からはウルを破った
暁星のギリアムが、
東からはスダルギアを破った
鉄騎兵団バグズが
ここに向かっている。
更には北から
カシアラとの通信を断った
銀狼フーバッハだ。
まだ合流しない内が一縷の望み。
戦局が夕刻になり一変し、
朝昼は時間を稼ごうとしていた
ギュダだが今は急いでいた。
真一文字に本陣を突く。
他には目もくれるな。
およそギュダ殿からは
出る事のなかった言葉。
やっと突撃の面白さに
気付かれたようですな。
現状、
最も確率の高い戦術だからだ。
戦術ねぇ、まぁいいか。
俺は何の文句もないぜ。
ガンツがハルバードを
ギュダよりに掲げる。
ギュダは無言のままに
槍を掲げそれに合わせる。
重なった武器がギンと音を鳴らし、
夕焼けの空に交差した。
いつも相容れなかった二人。
最後の突撃を前に
無言のままに武器を交差させ
お互いを認め合ったのだろう。
兵士達はそれを見て
感慨深い何かを感じていた。
ギリアム様、
ユベイルの本隊は
討って出ようと
しているもようです。
予定通りだな、全て。
ならば体裁は遊軍として
ここから牽制しつつ、
文字通り高見の見物と
させてもらおうか。
ハッ!
西にギリアムと思われる
軍が到着したもようです。
目もくれるなと言った筈だ。
我等は突き進むのみ!
全軍前進!
夕日は調度地平線の向こうへ
落ちようとしていた。
風は滑稽なほどに清々しく
戦場だと忘れてしまうほどだ。
日が落ちるのが早く感じる。
敵の大将軍がいる本陣まで
まだほど遠い。
その遠景に新たな軍が確認出来た。
あれが銀狼フーバッハか。
まぁ暗くてあんまり
見えないけどな。
新手は北から進軍してくる。
旗には狼がデザインされていて、
銀色に染められている。
間違いなく新進気鋭、
三騎将が一人
銀狼フーバッハに間違いない。
しかも東からの進軍も
嫌でも耳に入ってくる。
目もくれるなと言ったものの
五感がそれを感じ取ってしまう。
もはや一時の時間も無駄に出来ない。
愚かな。
包囲せよ。
切り捨てても
構わん。
全軍っ!
おーい、こっちこっち。
一触即発の場に
投じられた声は、
敵味方全員の耳を奪った。
場に相応しくないその流れ。
故にか、
次の言葉を、その声の主が誰かに
皆の意識が同時に向かった。
ギュダって、
意外に無鉄砲だな。
こんな大軍に
勝てるわけなかろう。
声の主はレジーナだった。
前方から現れたフーバッハの軍中に
紛れもなくレジーナ本人が居たのだ。
レジーナは現在ユベイル城で
絶対安静のはず……。
馬車の揺れにも
絶えれぬ重体と聞いていた。
ギュダは幻覚を見ているとさえ
自身を疑ったが、
どうやら自分が一番
レジーナを見分けられる事に気付いた。
雷に打たれる程の衝撃。
その表現が大袈裟でないのを
ギュダは体験していた。
っな!?
ひ、姫……?
それに御身体は
大丈夫なのですか?
なぜ敵の軍に……
久し振りに顔を合わせたのに
五月蠅いやつだ。
全く理解出来ません。
そもそもなぜ……
はっはっは。
やはり変わっとらんな。
小姑のように五月蠅い口は
健在のようだ。
姫っ!
何にせよ、直ぐに向かいます!
大丈夫大丈夫。
こやつは意外にも
頼り甲斐があるぞ。
新進気鋭、三騎将が一人。
銀狼ことフーバッハです。
以後よしなに。
何!?
ギュダ殿、
完全に私の事忘れてませんか?
な!?
なんだと!?
貴様なぜここに?
ギュダ殿が敵陣に忍び込み
内情を探れと
申されたではありませんか?
は?
あぁ、でも
三騎将って…………
なんだか生来のカリスマ故か
出世しちゃいまして。
出世しすぎだろ……
あり得ん…………で?
ユベイルでこやつが
三騎将になっていると
報告を受けてな。
ほれ会議の前に
伝令兵が居たろ、あの時だ。
何か企んでいると
思っていましたが、
まさかこんな……
フーバッハ!
この痴れ者が。
許さん!
まとめて捕えてくれよう。
まぁまてサウダージ。
こちらの話も聞け。
今、面白いところなのだ。
あの世に行く前に
何か言い残す事でもあるのか?
ああ、
この種明かしは重要だ。
まずあの西に構える
暁星のギリアム。
何故ここに来ないと思う?
予備戦力だからだ。
そうだ。
だがサウダージ、
お主は勘違いをしておる。
ギリアムは我が同胞、
我が予備戦力だ。
!?
で、次に東からの軍。
ここに向かっている
あれは誰の軍だ?
バグズはサロディアを
殲滅させている。
そして奴が裏切る事は
絶対にないっ!
大した信頼関係だ。
確かにそうだろう。
その者が裏切ることはない。
だがスダルギアに
敵わなかったようだな。
遠くに見えていた
東からの軍が
徐々にこの本陣に近付いてくる。
一軍を率いる先頭には
不敵な笑みを浮かべる
スダルギアが見えた。
なんだ?
まだ終わってなかったのか?
馬鹿な!?
あの鉄騎兵団が
敗れたというのか?
あの砂塵からすれば
カシアラの援軍も
ここに向かってきている筈。
なるほど……
認めねばなるまい。
それではギリアム様。
レジエレナ王女、
お主の申し出を受け入れよう。
一体どうゆ……
ふ~、なるほどな
上手くいったか。
つまりレジエレナ王女は
我が同胞となった。
我が同胞の敵は我が敵。
サウダージ……貴様に
やっと報復出来るようだ。
ギリアム。
百万の味方を
得た心地だ。
さてサウダージ。
包囲されているのは
お主のほうだぞ。
くっ!?
はいチェックメ~イト。
貴様、
何を涼しい顔をしている。
まさか全て知っていたのか?
心配するな。
あの大将も知らなかったからな。
何を言っている!
それは当たり前だ!
やれやれ、
ならば一つづつ教えてやろう。
サウダージとその本隊が
レジーナの話に耳を傾ける。
形勢は一気に逆転し
四面楚歌になってるからだ。
サウダージは
何か頭に巡らせているようだが、
レジーナはお構いなしに
ギュダに説明をし始めた。
え~っと、
どこから話せばいいんだ?