オルビスト

暴れ回っていたオルビストは、伏せた格好をした後、大地を踏み締めるように立ち上がった。




 身体中に纏った黒い気がさっきよりも濃く見える。肌が危険を察知するが、ハル達の足はもう前に出ていた。

ダナン

めんどくせぇっ!
ぶっ叩く!!

ハル

旦那ぁっ!
自分もいくっす!

 ダナンとハルの同時攻撃は、オルビストのあらぬ方向への跳躍で躱される。そして遠く離れたオルビストは、力を溜めるようなポーズで待ち構えている。

ダナン

なんだあの犬ころ。
逃げてんじゃねーよ。

ロココ

な、なんだか……
とても危険な気が……

ハル

まだまだいくっす!

 追撃に走ったハルはオルビストの鎖と交差する。そしてまたもやオルビストは下がった。






 と、思った瞬間、右、左に跳躍して近くまで来ていたランディに襲い掛かる。

ランディ

すまねぇ。

 ランディの口から「すまない」と洩れる――。

アデル

!!

 心配していたアデルは直ぐさま駆け出していた。勿論、一刻も早く治療するためだ。前にはオルビストが居るが、そんなことを考える間もなく足が勝手に動いていたのだ。


 だがハルは動いていなかった。次の攻撃を考えれば、即座にオルビストの相手をしないといけないのにだ。

ダナン

おい、ハル!
何やってやがる!!
ランディの援護に走れ!

 少し後ろにいたダナンの声が迷宮にこだまする。走り込んできたダナンの目にオルビストの姿がきっちりとらえられた。

 ランディの長剣がオルビストの胴体に深々と刺さっている。

 ランディが攻撃を受けたと思っていたが、その逆。しかもしっかり鎖を避けるように切払いではなく突きで仕留めていたのだ。

アデル

え!?

ダナン

おい、
くたばってるよな、それ。
何がすまねぇんだ?

ランディ

…………

ランディ

ぶった切るって言ったけど、
刺しちまった。
わりぃ、ありゃ嘘だ。

 足でオルビストの胴体を雑に押して、長剣を引き抜くランディ。ヒュンヒュンと長剣を振り回し、こ慣れた感じで鞘に納める。ランディ以外の者がやればキザっぽく見られそうな仕草も、さまになっている。

ユフィ

皆さがって!!

ロココ

あ、ああああ……

 ランディに討伐されたオルビストから黒い気が膨らんでいた。咄嗟に全員、その場から距離をとり構え直す。



 オルビストの身体は鎖と共に床に横たわっていたが、身体中に纏っていた正体不明の黒い気は、今や天井にまで立ち昇ろうとしていた。

 ~円章~     132、黒い気

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