――迷宮六階層。

 ハル達は六階層の入り口付近からあまり離れず、魔物と何度か戦った。



 ロココの強力な刻弾は副作用などなかったが、ハル達の腕試しもある為、魔物の数を減らす目的として控えめの使用を心掛けていた。

ハル

いやぁ、やっぱり
今迄とは違うっすけど
何とかなるって
レベルっすね。

ユフィ

それはロココが
最初に数を減らして
くれているからでしょ。

ダナン

確かにあの刻弾がなけりゃ
もっと苦戦してんだろーな。

ランディ

確かこの六階で特にヤバイのは
最初に出会った
レッドスカウトってやつと……

ハル

へ!? あの赤いやつ
そんなにヤバかったんすか?

アデル

確かもの凄く速い動きで、
こちらの後方に回ってくるとか。
ロココの刻弾に対しても
回避しようと動いてました。

ロココ

僕もそれをコフィンさんから
聞いていたので
最優先で気を配って
刻弾を追尾させました。

ダナン

簡単に口から追尾って
出るのが次元が違いすぎる。

ハル

旦那と自分は
刻弾出せないっすもんね。

ダナン

まったくお前は
能天気でいいよな。

ランディ

おいおい話それてっし。
もう一体のヤバイやつだよ
刻弾効かねーって
言ってたやつだ。

 ランディの言葉にダナンとハルが耳を傾ける。

 そして――

「そうだ。そんな奴もいるからやっぱ出せなくてもいっか」

 と二人共開き直ってしまった。

アデル

確か鎖で繫がれた犬と
仰ってましたね。

ハル

それって完璧飼い犬っすね。
よしよしってしてやるっすよ。

ユフィ

そんな可愛いわけないでしょ。
そいつにはロココどころか
誰の刻弾も効かないんだから
油断してると噛み殺されるわよ。

ロココ

ユフィさん、
魔気の反応です。
しかも多数です。

 前方の闇に眼を凝らし、戦闘体勢を取るのはいつものこと。緊張感が嫌でも高まり体温が熱くなる。呼吸を整え、何が襲ってきても身体を動かせるよう構えるのだ。

 そしてしばらくすると魔物の影が露わになった。

アルパイダー

ザコメーター

チューモルガン

オルビスト

 糸を使う蜘蛛型の魔物アルパイダー3体。一回前の戦闘でも倒した集団で襲ってくるザコメーター6体。のっそり近付いてきて捕まえたら絶対に離さず血をひたすら吸い尽くすチューモルガン2体。そして――

ユフィ

あれがオルビストよ!!
ロココ、他のやつらを
全部お願いっ!
いける?

ロココ

いけます!
任せて下さいっ!

ランディ

あいつが
刻弾効かねぇってやつか。

ハル

あれが飼い犬なんて
誰が言ったんすか?

ダナン

おめぇだろ、
ちびってないで行くぞ!

 ロココが瞬時に具現化させた複数の刻弾は、オルビストを含めた全魔物に一直線に飛んでいく。オルビスト以外の魔物は何も出来ないまま消滅。



 肝心のオルビストには全く効いている気配がない。それどころか、体中を纏う黒い気のようなものが増幅したようにも見えた。

 鎖で拘束されたようなオルビストは、狂ったように暴れ回り、こちらの意表を突くような動きでハルの眼前まで迫った。迎撃しようとしたハルだったが、オルビストは急激に横方向に跳ね、ランディに飛びかかって来た。






 それを見切っていたランディは、見事にカウンターの袈裟切りで対応した。

ランディ

チッ、浅い。
鎖が邪魔だっつーの。

 拘束されているようなオルビストだが、無軌道に暴れ回る上、その鎖が邪魔して決定打とならなかった。

ダナン

そんなもんはよぉ……

 少し間が空いて、起き上がるオルビストに対してダナンがふんぞり返りながら近づいていく。



 オルビストは体勢を立て直さないまま暴れ回る。もう何をしてくるか分からない状態だったが、体中の黒い気が増大しているのは明らかに見てとれた。

 先頭を行くダナンが何を言おうとしたのか察したランディとハルは、同じようにふんぞり返って前進する。そして声を合わせようとするまでもなく、言葉が重なった。

「丸ごとぶった切る!」
「丸ごとぶっ叩く!」
「丸ごとぶった斬るっす!」

 ~円章~     131、誰が言ったんすか?

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