今迄誰にも語らなかったロココの過去。そしてその目的。

 戦闘が終わり落ち着いたタイミングだったし、異例とも言える刻弾使用の副作用が出る心配もあったので、小休止を兼ねてロココの話に耳を傾けることにした。

ロココ

僕の故郷はゼーベルクと言って
殆ど知られていない
辺境にあるんです。

ダナン

確かに聞いたこともねぇな。

ランディ

で、そんな辺境から
何しに来たんだ?

ロココ

ぼ、僕のせいで……

ロココ

僕のせいで友達が呪いに
かかってしまったんです。

 ロココは眉を寄せ、故郷で起きたことを思い出しているようだ。思い出すのも苦しそうだ。

ロココ

その呪いを解く為、
ディープスに来たんです。

アデル

呪い?
ドルサック商店での解呪ですか?

ロココ

ハルさんが身に付けて
しまった呪いと違って、
ある特別な液体が必要なんです。

ダナン

そういや
落ち着きなくて呪いに
かかった奴がうちにもいたな。

 ハルの呪いとは、ランディからコフィンに贈られたあの品(僻地駐屯兵の憂鬱)である。



 ハルはそれを一切曇りのない瞳で確認する。誇らしげに勲章を見せ付けるようにお披露目する仕草をしている。だが決して褒めれた訳でもない経緯と現状を全員が知っていた。

ユフィ

それでその液体って何なの?

ロココ

迷宮八階層に現れる
魔物から採れる
エキスだそうです。

ハル

それならもうすぐっす。
ロココもめちゃくちゃ強いし、
余裕っすよ。楽勝楽勝♪

ロココ

それがそうでもないんです。

ダナン

なんでだ?

ロココ

そのエキスは
ある魔物の角から採れる
らしいんですが、
討伐してしまうと
消滅するようです。

ハル

はへ?
それならどうするんすか?

ユフィ

勿論、
捕獲するしかないわね。
そうでしょ、ロココ。

 それしか答えがないとばかりに、ユフィがハルの質問に答え、ロココに確認の言葉と視線を送った。

ロココ

そうなんです。
でもその捕獲が大変なんです。

 ロココの顔付きがさらに曇る。その理由は何点かあった。その魔物は……







 ・遭遇率が極度に低い
 ・他の魔物と群れで動く
 ・動きが素早い
 ・警戒心が強く劣勢になると逃げだす

ハル

なんすか、それ!?
そもそも出会えないってだけで
大変なのに無茶苦茶っす。

ユフィ

なるほど、
だから依頼しないのね。
それに見合う報酬は
莫大すぎて払えないでしょうし。

ロココ

そうなんです。
自分で探すしかないんです。

ロココ

ゼーベルクを出る時に
一人でも絶対に見付けるって
誓ってここまで来ました。
必ず自分だけでも……

ロココ

痛てっ!!

ハル

…………

 ロココの鼻っぱしらを捻ったのはハルだった。

ハル

一人じゃないっすよ。

ハル

皆居るじゃないっすか。
きっと一人じゃ無理でも
皆となら出来るっすよ。

ロココ

ハ……ルさん……

 ただ自身の思いを吐露したロココだったが、その言葉にハルが反応した。

 ロココは捻られた鼻に手を当て、突然の出来事に眼を丸くした。そしてハルの思いがじわりと胸を包んだ。

アデル

そうですよ。
一人で抱え込まず
頼ってください。

ダナン

動き止めれたら
絶対にそいつは捕まえて
やっからよ。

ユフィ

リュウ達も絶対に
協力してくれるわ。
フィンクスやシャイン、
シェルナも仲間でしょ。

ランディ

楽勝だろ、そんなのよ。

ロココ

皆さん…………

ハル

絶対に見付かるっすよ。
大丈夫大丈夫♪

ロココ

ありがとうございます。
本当に感謝でいっぱいです。

 全員の思いを受けロココは笑った。涙を溢れさせたまま笑顔を返したのだ。



 故郷を出てからずっと一人で思い荷を背負ったまま、どこか孤独だったロココ。感謝の気持ちから、自然に自分の目的を話した。重い荷は変わることはなかったが、その荷を一緒に持ってくれる仲間の存在を再認識することになった。

 ~円章~     130、変わらぬ荷の重さ

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