ある若者が
その羽根に手を伸ばした。
それを見た周りの者は言った。
『我々に施せ』と。
若者は羽根に願った。
『邪魔な者共を滅ぼせ』と。
羽根は眩しい光を放つと
全てが塵に帰った。
ゴミ収集車
あーあ、今日もまた食品廃棄物の山じゃねーか。
ホントだ、カレーの匂いがプンプンしやがる。
食品廃棄物
もう少し廃棄が出ないようにできないもんかね。
ボヤいたって仕方ないさ。
さっさと仕事仕事。
あいよ。
ヘヘッ。
今日のはやけに軽くていいや。
いつもこうだったら楽なんだけどな。
よし、そいつで最後だな。
コイツは俺がやっとくぜ。
じゃあ、俺は運転席に回ってるぜ。
あいよ。
フンフンフンフン……。
ガシャン?
どうかし……
し……し……
死んでる!?
#2 早朝の死体回収車(出題編)
……で、君がやったんだね。
俺は無実っす、刑事さん!
もし俺が犯埴輪なら、通報なんかしないっすよ!
しかしだね、
現場には君しかいなかったんだよ?
これがどういうことかわかるかね?
勘弁して下さいよ、刑事さん。
これはただの事故なんですって。
そうか……。
事故か、わかった。
え?信じてくれるんですか、刑事さん。
ああ、もちろんさ。
法治国家において、自白強要はしないもんさ。
刑事さん、364年の出土で丸くなりましたね。
よせやい、禿頭がテレてるぜ。
よかった、これで一安心……。
後方不注意による埴輪身事故。
犯行を認める証言っと。
チョーっと待ちやがれ!
なに?
そう言う意味の
事故じゃねーっつーの!
でも、もう調書に書いちゃったしなぁ。
書き直せばいいだろー!
……。
兄同様、短絡的で凶暴な犯埴輪である、と。
364年前の私怨を持ち出すなよ!
……じゃあ、言うけどさ……。
こっちには証埴輪がいるんだよね。
そんな馬鹿な!?
早朝で誰もいなかったのに!?
じゃあ、証埴輪さん入って。
え?取調室に呼んでいいのかよ?
普通法廷で証言するもんじゃね?
人間《かみ》さまの世界とは違うの!
現場レベルでどんどん解決して中央埴輪庁に送っちゃえばいいの!
そ、そうなのか……。
では、お入りください。
証埴輪のかりぃさんです。
ん?かりぃ?
よ!しゅがぁ!
全く災難だよなぁ。
……。
……。
……。
コイツが死んだんじゃないのかよ!?
そんな事は一言も言っていない!
勝手に殺すんじゃねぇ!
参ったな、じゃああの欠片は定番の……
残念!
無念!
え?
あの欠片が土器だなんてオチは用意されていない!
今回は慎重に慎重を重ねて、現場の欠片と遺留品から被害埴輪の修復を行った。
その結果がこれだ!
か……
かあちゃん!?
なんでアンタまで驚いてんだ!!
まさか、母ちゃんだったなんて……
ああ、そうだよねー!
みんなの母ちゃんだよね―!
もうその手は食わないぞー!
どうだ、これでもまだお前はやってないというのか?
この流れでどうして罪を認める話になるんだ?
それは簡単さ。
なに!?
もしかして、刑事さんの中には何も推理がないんじゃね?
だまれ!
証埴輪の話を聞け
あれは、お前が俺を置いて運転席へ向かったときだ。
俺はすっかりお前に気を許して背中を向けてしまった。
そして、目の前にあったずっしりと重いゴミ袋を持った瞬間、俺は気を失った。
気がつけば俺はゴミ袋の中ですやすや寝ていたのさ。
要領を得ない話だな……。
なるほど、つまり……
前日の夜に母ちゃんを殺害していた犯埴輪は、その欠片をゴミ集積所に遺棄。
すぐに反抗が露呈しないよう、カモフラージュのために綿を詰めたゴミ袋をかぶせた。
翌朝、ゴミ収集員の犯埴輪は何食わぬ顔で欠片を収集していたが、思わぬハプニングが発しした。
あーあ、今日もまた食品廃棄物の山じゃねーか。
ボヤいたって仕方ないさ。
さっさと仕事仕事。
普段であれば運転席でふんぞり返っているだけのかりぃが、下に降りてきてしまったのだ。
よし、そいつで最後だな。
コイツは俺がやっとくぜ。
じゃあ、俺は運転席に回ってるぜ。
犯埴輪は"運転席に回る"と言って、かりぃを油断させ……。
よっこら……。
お!?これだけめちゃ重いな。
かりぃの後頭部に手刀を一閃。
かりぃは絶命した。
……。
すげぇ、すげぇよ刑事さん!
だろ?
……。
俺のグダグダな証言からそんなマジっぽい話をでっちあげるなんてさ!
だてに364年の出土をしてねぇぜ!
誰が絶命したって?
コイツ。
俺。
……。
……。
……。
あれ?
なんでお前は生きてるんだ?
さぁ?
だいたいさぁ、俺が犯埴輪だとして動機はなによ?
そ……それだけは簡単だ!
しゅがぁ君。
君はなぜゴミ収集の仕事をしているんだ?
いやぁ、ちょっと金が入り用でさ。
そこだ!
え?
君は埴輪PRESSの専属モデルもしているじゃないか。
世紀刊埴輪PRESS
こんな花形の職業があるというのに、なぜゴミ収集業をする必要があるのか?
うっ……。
理由は簡単だ。
モデル業ではまかないきれない程の……
大きな借金が君の家にはあるね?
そ……それは……。
母ちゃんがいつもツケで暴飲暴食をしてくるから……。
そうだ。
かあちゃんはいつだってそうだ。
店での食事も必ずツケ。どんどんツケが溜まっていきやがる……。
ホント、困った母ちゃんだよな……。
……。
……。
なんか……
空気が重くなっちまったな……。
ともかくだ。
金策に困った君は、母ちゃんから金を巻き上げることを企んだ。それが動機だ。
待ってくれ!
母ちゃんはみんなの母ちゃんだろ!
お前らだって金を使い込まれて同じ動機があるじゃないか!
それはない。
なんでだよ!?
聞くが、君のモデル収入が最後に入ったのはいつかな?
それは……98年前に……。どかっと。
そう。金額こそ膨大だが、収入があったのは98年前だ。
だが私は毎月25日に振り込まれる。
俺は毎日の売上次第だ。
98年間計画的に金銭を使用するのは至難!
ましてやあの母ちゃんだ。
君のモデル収入はとうの昔に底をついていたのだ!
うぅ……。
それでも俺はやっていない……。
大体、母ちゃんを襲ったところで金を持っているはずが……。
それが、持ってるんだなぁ……。
なんだって!?
これを見てもらおう。
これは昨晩のゴミ収集所前の防犯カメラの映像だ。
だいぶ遅い時間なので、埴輪通りは無い……が……!
あ、あれは……。
母ちゃん!?
しかも大金を持ってる!?
大金を持って嬉々として夜の街へ消えていった母ちゃんを最後に、事件が起こるまでここを通った者はいない。
母ちゃんは一体どこへ……。
さぁ、これで「母ちゃんは金が無いから襲う意味がない」という言い訳はできない。
それでもまだしらを切ると言うなら……
証拠を示せ!
そ……それは……。
しゅがぁや……
誰かが俺をよぶ……
誰だ!?
しゅがぁや、諦めちゃダメ!
母ちゃん!
証拠はもう提示されているよ!
最後まで頑張るんだよ!
もう提示されている……?
は!
あ……あります、証拠……。
何ぃ!?
証拠はこれです!!!
さて、ここで問題だ。
1)【しゅがぁ】の提示する無実の【証拠】とは何か?
2)【真犯埴輪】は誰か?
今回はさほど埴輪の特性は重要ではない。しかし、埴輪の特性を無視することもできない。
コメント欄にて回答せよ!
解答編へ続く