シャイン

なるほど。
鍛冶屋が欲しがる
稀少鉱石を見付けたら、
オークションにかけて
関係者を探すか。
まぁ悪くないわね。
ガロンも稼げそうだし。

アデル

それは良い考えです。
良い鉱石を探せれば
資金面的にも
ハルのお父様を探す
手掛かりにもなるわけですね。

デメル

まぁ、
オークションにかけれる
稀少な鉱石は
易々と見付からないけどな。

ロココ

そう言われると
そうですよね。

ヴィタメール

実際、六階層では
厳しいかも。
確率で言えば八階層くらいの
低層にならないと採るのは
難しいと思うよ。

 低層を知るデメルとヴィタメールの兄弟は、話に割って入ってきた。そして現実を語った。

モロゾフ

それに俺達だって
そんなもん見たことねぇからな。

シェルナ

でも、可能性だよね。
六階層でもあるかもしれないし
これから私達も低層に
行けるようになるはずだもん。

ハル

そうっすよ。
きっとどこかで
採れるっすよ。

リュウ

そうそう。
気長にいこうぜ。

 リュウは皿に盛られた湯がいたコーンを、一粒づつ指で千切って皿に戻している。後でゆっくり食べるのだが、そのまどろっこしいと言えるのんびりさをユフィが眺めて話題を締めた。

ユフィ

あなたが気長って言うと
いつになるか分からないわ。

 ハル達のテーブルはユフィの言葉で賑わった。



 そしてその賑わいの中、テーブルを立つ者がいた。

リア

じゃ、今日はこれで
帰ろっかな?

デメル

うそ!?
最近早くないか?

ヴィタメール

確かに最近酒場に居る時間
少ないもんね。
なんかあった?

リア

何もないし。

デメル

まぁ寂しくなったら
いつでも帰ってこいよ。

リア

はいはい
そうするわ。
じゃね~♪

 デメルの言葉に適当に返事をしたリアは、足取り軽く酒場を後にした。確かに最近、酒場で見かけない事が多い。教官の仕事で忙しいのだろうか。

ダナン

なんかやばい感じしねぇか?

デメル

何がだ?

ダナン

なんか分かんねぇけど、
嫌な予感がすんだよ。

ヴィタメール

リアはいつもあんな感じだよ。
軽くてさっぱりしてて、
気分屋なとこもあるしね。

ダナン

なら、いいんだけどよ……

 ダナンは他の誰もが感じない何かをリアの背中に見た。しかし、誰からも同意されないことで、その予感は勘違いとして押し留められた。

 ――迷宮六階層、一階層からの直接ルート入口。

ダナン

うげ。
毎度お馴染みだけど、
新しい階層に来るたびの
この魔気の濃さよ。

ハル

五階層とは比べ物に
ならないっすね。
気持ち悪いっす。

ランディ

俺も今迄は
大丈夫だったけど
この階層はキチ―な。

アデル

慣れるまで
無理はしないで下さい。
いや慣れてもですけど。

ユフィ

そうよ。
急ぐ必要はないわ。
ゆっくり身体を慣らしながら
いくわよ。
ロココも大丈夫?

ロココ

はい、僕は大丈夫です。

 全く曇りのない顔色のロココは、誰よりも元気に返事をした。魔気の扱いに長けた魔操者と呼ばれる才能故だろうか。

 直接の近接戦闘が出来ない分、心許ないと思われがちなロココだが、魔気の感知やコントロールの高さは充分に心強い。その魔気の感知を頼りにハル達は少しづつ脚を進める事にした。

ユフィ

慎重に進んで。

ロココ

ユフィさん、この先に
魔物が十体以上確認出来ます。

ランディ

いきなりそんな数かよ。

 ロココの魔気感知は正確だ。それは今迄何度も証明されてきている。その事実を受け止め、リーダーのユフィは直ぐに行動を決めなければならなかった。

ユフィ

流石に数が多すぎる。
見付かる前に
後ろに引ければ……

ロココ

ユフィさん。
もう気付かれています。
だけど任せて下さい。
きっといけます。

 ロココの声は平常時よりも冷静なものだった。

 いきなりの危機に全員が身構える中、ロココは一番前線に足を進め深く呼吸をした。

 ~円章~     128、六階層探索開始

facebook twitter
pagetop