マギアフィラフト
~円章~
この方はルグラ。
私達が生まれるずっと前から
迷宮を探索している方です。
おいおいなんちゅー
紹介やねん。
おっさんって
バレてまうやん。
まぁええわ。
俺はルグラ。
五階層攻略した若いのに
挨拶しにきただけや。
方言の男・ルグラからは、軽い口調が突いて出た。
背格好はダナンを除いて一番高いリュウを越え、筋骨も骨太そうでいて引き締まっている。余裕の笑みからも何十年と探索を続けている自信を感じさせる。
そーいや、チラッと
ジジイの孫がおるって……
ルグラはデザートチェケンの唐揚げを一つまみして舌鼓を打った後、ハル達の顔に目を這わせた。
そして再会を喜んでハルに肩を組まれていたジュピターのところでその視線は止まった。
なるほど、お前さんか。
確かに若い時のジジイに
似てるっちゃあ似てるな。
面影があるわ。
有名剣士ジンの若い頃をよく知る言葉に、場が注目する。何か面白い話が聞けそうだとハルも目を輝かせた。
はぁ!?
オイラはジッチャンに
全然似てねぇって
言われてんだけど。
勿論若い時も含めてな。
母方に似てるって
言ってたもんね。
そうそう。
あんたほんとに
ジッチャンの事、
知ってんのか?
ん?
どういうこっちゃ?
ルグラはジュピターの疑いに驚いたようだが、すぐに何か感じ取って眉を上げた。
なんか怪しいなあんた。
コフィンほんとに
このおっさん大丈夫なのか?
彼はいい加減なことを
言う時もありますが、
確かに信頼して良い人です。
ほんと大丈夫かぁ?
まぁまぁええやんか。
今日は挨拶だけやし。
ほなさいなら。
ルグラは好物なのかテーブルのデザートチェケンをもう一つ摘み、背を向け酒場を去った。
なんか怪しいな、ったく。
ああ見えて迷宮の最下層、
10階層に到達した
数少ない冒険者の内の
一人らしいです。
最下層って……
迷宮の底に辿り着いた
冒険者がいたんだな。
あのおっさん共は別格だ。
年季が違いすぎる。
共ってことは
当然何人かいるのね……
フォイラあはんにんひても
いんじにゃいへどな。
でも凄いっす。
きっとめちゃくちゃ
強いっすよ。
?
ぐぉ~がかなぁ。
ググラあっけか。
ジッシャンにひいて
ひょっかな。
そりゃあいいっす。
きっと爺ちゃんなら
知ってるっすよ。
空腹だったのか、ジュピターが口に料理を詰め込んだまま話す。当然、モゴモゴとした口からははっきりと言葉が出てこない。何を言っているのか誰も分からなかったが、ハルだけは会話を成立させていた。
はんはりひたいひふぁいえ
ひいているお。
何か分かったら
自分にも
聞かせて欲しいっす。
何であの言葉が
分かるわけ?
ほんと妙な特技ばかり
もってるのね。
やっぱりジュピターさんと
ハルさんは
相性ぴったりだからじゃ
ないでしょうか。
で、アンタなんで
ここにいんのよ。
もう修行やめちゃったの?
調子見にきただけだよ。
別にいいだろ。
市民区からチョイと歩けば
冒険者区なんだからな。
ちなみに俺達は
五階層の攻略済ませたぜ。
えらく早いな。
そんじゃあ次は、
ハルの目的の一つだった
稀少鉱石が出てくる階層だな。
そーいやそんなこと
コフィンが言ってたっすね。
ワクワクするっす~♪
確かに。
六階層からは稀少鉱石が
採れる可能性がありますよ。
それでハルの父さん
探せるかもな。
!?
だって父さんは
鍛冶師なんだろ?
稀少な鉱石なら武器作るのに
喜ぶかなってな。
へ?
だからオークションとかに
掛ければ本人でなくても
関係者がいるかもって事よ。
今迄、父・ジエンについて沢山聞き込みをしてきたハルだが、そのどれにも手掛かりはなかった。
それが突然、リュウの案で道筋が照らされた。
か細い確率だが、その可能性にハルは目を輝かせ心を躍らせた。