アデル

導師……
わ、私が……

 突然自分の名を呼ばれたアデルが目を丸くさせる。

 シェルナから五階層攻略が導師の資格を得る条件と聞いていたが、まさかこのタイミングで告げられると思ってもみなかったのだ。

 それに結晶師長と思っていたリーベが、支導師を名乗ったことにも驚いた。

驚かせてすみません。
私はこの訓練場の
結晶師長であると同時に
聖ユデア教会の
支導師でもあります。
導師として適任者を見出すのは
支導師の役目の一つなのです。

 リーベがアデルに近付き、手に持った指輪をそっとアデルの右手の中指に通した。

アデル

ぁ…………  

 声にならぬ声を漏らすアデル。暖かくも美しいリーベの眼差し。少しづつ湧いてくる導師と認められた自覚。それを嘘のように感じてしまう心の流れに戸惑うばかりだった。

シェルナ

凄い、凄いよアデル!
本当に導師に
なっちゃうんだもん♪

 シェルナが飛び跳ねてアデルに駆け寄る。そして指輪をまじまじと眺めているアデルに抱き付いた。

正確に導師とは
治癒の指輪を用いて
傷付いた人々を救う者です。
故に導師として
一人前に認められるのは、
このディープス地下迷宮で
功を成した者のことを指します。

アデル

治癒の指輪は皆の傷を癒せる。
これで私も皆さんの
お役に立てる。

ユフィ

それならまだ貴女と一緒に
いられるわね。

ダナン

凄いぜアデルちゃん。
これかもよろしくな。

ハル

ほんとに
偉い人になったっすね。
凄いっすよ。

ロココ

やっぱりアデルさんは
頼りになる人です。

リュウ

まぁ、無理するなするよ。

ランディ

そうそう、
気軽にな。

アデル

はい、
ありがとうございます。
早く一人前の導師になって
皆さんを支えられるように
頑張ります。

 アデルを中心とする賑わいは収まらない。それを微笑みながら見守るリーベは、少し俯き口を開いた。

六階層からの脅威は激しく
導師としての道のりは
平坦ではないでしょう。
しかし仲間との絆の光を
輝かせ続けることで
どんな困難も乗り越えられると
私は信じています。

 リーベの言葉はハル達の胸の内から思い出させた。訓練場を出る時に伝えられた絆の光。



 それを実感としてきたハル達にとって、その言葉の意味をそれぞれが深く考え直した。

コフィン

こんなに早く許可証を
手に入れるとは。

アリス

思ったより早かったな。

コフィン

ですが本番はこれから。
何人残れるか……。

アリス

育ちは早いが
死に急ぐ奴等が多いからな。

コフィン

我々アディスナーの命運は
彼等が握っていると
言えるでしょう。

 ~湧章~     124、導師の道のり

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