外に出るとクリスマス飾りが目立つ。
 昼間だと言うのに既にイルミネーションが輝いている所もあった。

 スーパーまでは歩いて十五分程度。世間話をしているとすぐについた。

神谷敬一(かみやけいいち)

旗仲さん、ちょっと


 スーパーに入ろうとした所で敬一が美咲の肩を叩く。

旗仲美咲(はたなかみさき)

何?


 小声の彼を怪訝そうに見つめると敬一は溜息をついた。

神谷敬一(かみやけいいち)

ここまでの道中見てたでしょ?アキ君とユズちゃん……


 それで何を企もうとしているのかは美咲も理解し、小声で応じた。

旗仲美咲(はたなかみさき)

確かに並んでさえ歩かないし、手も繋がなかったよね……

神谷敬一(かみやけいいち)

俺もタイミングを見て離れようとはしてみたけど、中々難しかったしね

旗仲美咲(はたなかみさき)

確かにユズちゃんの事を思うと二人きりにしてあげたい気も……でもどうするつもり?

神谷敬一(かみやけいいち)

まぁ任せといて。旗仲さんがこっち側に付けば作戦はあるから


 そう言って敬一は微笑んで見せる。
 それから彼は明彦の肩を叩いた。

神谷敬一(かみやけいいち)

アキ君

白峰明彦(しらみねあきひこ)

ん、どうした?

神谷敬一(かみやけいいち)

ちょっと俺、見たい物を思い出したんだよね。旗仲さんに相談しながら考えたいから、別行動取っても良いかな?

白峰明彦(しらみねあきひこ)

ああ、俺は別に構わんが


 言いながら明彦は結月に視線を向ける。

旗仲美咲(はたなかみさき)

ユズちゃんごめんね、そういう事だからさ。
私もちょっと行ってくるね


 そう美咲も言えば結月も頷かざるを得ない。

松原結月(まつばらゆづき)

うん、わかった。
えーっとじゃあ……一階の休憩スペースで落ち合おうか

神谷敬一(かみやけいいち)

オッケー、有難うね。ユズちゃん


 そう言うと敬一は爽やかに結月達と逆方向へと向かっていた。
 それを美咲も追っていく。

旗仲美咲(はたなかみさき)

……どこまで行くの?


 中々足を止めない敬一に美咲が問い掛ける。

神谷敬一(かみやけいいち)

そうだな、この辺りで良いかな


 そう言って敬一が来たのは専門店街の並んでいる辺りだった。

神谷敬一(かみやけいいち)

旗仲さん、欲しい物何かある?折角のクリスマスだし、買ってあげるよ

旗仲美咲(はたなかみさき)

何で貴方が私にプレゼントを……

神谷敬一(かみやけいいち)

はは、すっごく嫌そうだね。
まぁ協力してくれたお礼って事でさ。俺があげたいんだよね。
何でも買ってあげるよ?

旗仲美咲(はたなかみさき)

何でも……


 その言葉に少し興味を惹かれる。

神谷敬一(かみやけいいち)

そうそう、例えばこれとかどう?『Fratello』のキャラをイメージしたアクセサリーだっけ。最近発売したばかりなんでしょ?

旗仲美咲(はたなかみさき)

何でそれを……

神谷敬一(かみやけいいち)

ユズちゃんや旗仲さんが好きなコンテンツだからね。俺も知りたいと思って調べたんだ。
持ってないんだったらこれにしようか?

旗仲美咲(はたなかみさき)

でもそんな高価なの……

神谷敬一(かみやけいいち)

折角のクリスマスだし、気にしなくて良いよ

旗仲美咲(はたなかみさき)

それなら私も何かクリスマスプレゼントを買うから、交換にしない?

神谷敬一(かみやけいいち)

へぇ旗仲さんからそんな言葉が聞けるとはねぇ

旗仲美咲(はたなかみさき)

う、煩いよ。別に神谷君の為とかじゃないから。私が借り作るのが嫌なだけなんだからね

神谷敬一(かみやけいいち)

わかってるって。
それじゃあこの辺もうちょっと一緒に回ろっか


 そう言って促す敬一の表情は珍しい笑顔だった。

敬一と美咲が専門店街を見ている間、結月と明彦は並んでスーパーを歩いていた。
 明彦がカートを引き、相談しながら品物を入れていく。

松原結月(まつばらゆづき)

ええっとケーキのキットは用意したから……後はオードブルかな

白峰明彦(しらみねあきひこ)

スナックとかがあっても良いんじゃないか

松原結月(まつばらゆづき)

うん、そうだね

松原結月(まつばらゆづき)

何かこうして一緒に買い物するの……恋人らしいかも。
ケイ君とミサちゃんが二人きりにしてくれたから……


 結月はそれだけで嬉しくなってしまう。

松原結月(まつばらゆづき)

ねぇアキ、何が良いかな?スナックも色々あるけど

白峰明彦(しらみねあきひこ)

そうだなぁ……大人はお酒も飲むだろうし、つまめる程度の物で辛めの奴とかどうだ

松原結月(まつばらゆづき)

あ、それ良い!
あ、でもわたしは辛いの苦手だし……他のも買って良いかな?

白峰明彦(しらみねあきひこ)

予算内であれば問題ない

松原結月(まつばらゆづき)

えーっとじゃあ……これ


 結月が選んだのはマシュマロとポッキー。

白峰明彦(しらみねあきひこ)

それならこういった物も入れておくか


 そう言って明彦が入れたのはポテトチップスだった。

松原結月(まつばらゆづき)

これならわたし達も、お父さん達も食べれるね

 結月は笑顔で返した。

 その後はオードブルを籠に入れ、レジに向かう。
 前もって親から渡されていたパーティー予算の中から清算を済ませ、それからは明彦が荷物を持って休憩スペースとなっているカフェスペースへと向かった。

『オタク彼女の面倒彼氏』【クリスマス番外編6/10】オタク彼女の初体験クリスマス6

facebook twitter
pagetop