先日の勉強会は再び教え合うように勉強をして、解散になった。
 テスト期間の間に敬一や美咲をクリスマスパーティーに誘い、冬休みに入って二日目の十二月二十四日……その当日になる。
 クリスマスパーティーは夜が本番で彼等の家族が揃うのは夜だが、朝から準備の為に明彦の家には結月がやって来ていた。
 この後敬一や美咲もやってくる予定なので、炬燵(こたつ)に入って待つ。
 今夜敬一は明彦の家、美咲は結月の家に泊まる予定となっていた。

松原結月(まつばらゆづき)

ケイ君も一緒にクリスマスパーティーってちょっと懐かしいよねー

白峰明彦(しらみねあきひこ)

小学生の頃は一緒にやっていなかったからな
【逆:やっていたからな】

松原結月(まつばらゆづき)

ケイ君気遣いも上手いし料理も手伝ったりして、お母さん達から人気だったよねー

白峰明彦(しらみねあきひこ)

手土産も欠かしていた【逆:欠かさなかった】から余計にな

松原結月(まつばらゆづき)

あれってケイ君が進んで用意してたんだよね?ケイ君のご両親が来れないお詫びとか言ってたけど……

白峰明彦(しらみねあきひこ)

ああ恐らくは


 明彦や結月は幼馴染で家族間の交流もそれぞれある為、パーティーとなると家族ぐるみでやるのが基本だ。
 だから彼等の友人であった敬一の両親にも声を掛けてはいたようだが、医師と看護師という立場上、プライベートでは中々会えなかった。
 その代わりに手土産を持って来るという事を敬一は良くしていた。
 そんな事を思い出していたのである。

松原結月(まつばらゆづき)

ミサちゃんは今年初めてだし……女友達連れて来るのって、そういえば初めてだね……


 嬉しそうに話す結月が愛しくて、明彦もつられて微笑んだ。

白峰明彦(しらみねあきひこ)

ああ、そうだな

松原結月(まつばらゆづき)

来年はミサちゃんのご両親も一緒に出来ると良いよね


 美咲の両親はゲーム会社とそれに関連する自営業である。
 休みを取るのは難しい仕事の為、今回の会は欠席すると前もって美咲から告げられていた。

白峰明彦(しらみねあきひこ)

そうだな


 明彦が頷いた時、チャイムの音が鳴る。

松原結月(まつばらゆづき)

ケイ君かミサちゃんかな?


 言いながら炬燵を出る結月に明彦も続く。
 結月は幼い頃から明彦の家に出入りしている為、彼女からするともう一つの家みたいなものだ。客対応に出るのも普通の事であった。
 チャイムを押した客の映像を確認すると見知った顔で、すぐに二人は玄関に向かった。

 玄関の戸を開ければ手を上げた敬一の姿があり、その後ろには美咲の姿もある。
 どこか不機嫌そうな彼女の様子から、途中で敬一と会ったのだろうとわかった。
 美咲は敬一の事が余り好きではないのである。
 何だかんだ一緒に来ている辺り嫌いとも思えないのだが。

神谷敬一(かみやけいいち)

アキ君、ユズちゃんおはよう

旗仲美咲(はたなかみさき)

ユズちゃん、明彦君……おはよう


 爽やかに挨拶をする敬一に対し、美咲は少し眠そうである。

松原結月(まつばらゆづき)

ミサちゃん朝得意じゃないって言ってたもんね……

 結月はそんな事を思いつつ挨拶を返す。

松原結月(まつばらゆづき)

おはよう、二人とも

 明彦もそれに続いて挨拶をした。

白峰明彦(しらみねあきひこ)

ケイ、美咲おはよう。まぁ入ってくれ


 明彦の言葉に二人も上がり、男女で何となくバラけつつ話しながら二階へと向かった。

松原結月(まつばらゆづき)

ミサちゃん朝弱いって言ってたけど大丈夫?

旗仲美咲(はたなかみさき)

うん……昨日は夜更かしを気を付けたから、まだ大丈夫な方。……それでも眠いんだけどね

白峰明彦(しらみねあきひこ)

美咲と来るなんて珍しいな

神谷敬一(かみやけいいち)

ああ途中で会ったからね。
彼女は凄く嫌そうだったけど、方向も同じなら一緒に来るよね

白峰明彦(しらみねあきひこ)

そ、そうか……相変わらずケイは凄いな


 明彦の部屋に着けば我が物顔で入る結月や敬一に対し、少し申し訳なさそうに美咲も入室した。

旗仲美咲(はたなかみさき)

何回か来てはいるけど……家族以外の男の子の部屋はどうしても緊張するんだよね……

 逆に緊張しない結月の方が不自然な気がするが、彼等の事を思うと仕方ない話であるとも思う。

 明彦の部屋に荷物を置くと一階に降りてツリーの飾りつけをする。

松原結月(まつばらゆづき)

あ、この飾り可愛い

旗仲美咲(はたなかみさき)

えーっとこれは……この辺にしようかな

神谷敬一(かみやけいいち)

バランスを考えるとここかな

白峰明彦(しらみねあきひこ)

落ちない所は……この辺か

 それぞれで飾り付けを楽しみながら時間が流れ、昼前になると完全にツリーは出来上がった。
 そんなに大きな物では無かったが、ツリーがあるだけで部屋が華やかになった気がする。
 嬉しくて皆の飾ったツリーの写真を撮ったり眺めたりしていると、結月のお腹がなった。

松原結月(まつばらゆづき)

あっ


 思わずお腹を押さえる。

旗仲美咲(はたなかみさき)

もうお昼だもんね。私もお腹空いたな


 美咲がすかさずフォローに入った。

神谷敬一(かみやけいいち)

それじゃあ買い物に行く?お昼もだけど、夜の分もさ


 尋ねたのは敬一だ。

白峰明彦(しらみねあきひこ)

確かに家族が集まるのを待つと遅くなるしな……


 そう応じたのは明彦で、その声に結月と美咲も頷いた。

松原結月(まつばらゆづき)

それじゃあ行こうか

旗仲美咲(はたなかみさき)

うん、早く準備しちゃおう


 言いながら結月と美咲はそそくさと荷物を取りに二階へ向かう。

神谷敬一(かみやけいいち)

俺達も行こうか。アキ君。女の子って買い物が好きだから……こういう時早いんだよねぇ

白峰明彦(しらみねあきひこ)

ああ、そうだな


 明彦も頷き、敬一に続いた。

『オタク彼女の面倒彼氏』【クリスマス番外編5/10】オタク彼女の初体験クリスマス5

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