ナバールの使者、
白装束の騎士はユランと呼ばれ
ギュダの旧知の者だった。
イシュトベルト王の元で、
将軍として共に忠誠を誓った同胞だ。
ユ、ユランか…………
ギュダ将軍……
久し振りだな。
ナバールの使者、
白装束の騎士はユランと呼ばれ
ギュダの旧知の者だった。
イシュトベルト王の元で、
将軍として共に忠誠を誓った同胞だ。
よくもぬけぬけと
敵の手先に落ちたものだな。
レジエレナ王女は何処だ？
生憎うちの姫は行動派で
現在ここに居ない。
お前も散々に
手を焼かされたのを
忘れたわけではあるまい。
ならばギュダ将軍、
現在、この軍の指揮権は
貴方にあるのだろう。
であるなら問題ない。
ナバールの使者ってのは
あんたか。
俺達も同席させて貰うぜ。
口を挟むつもりはないがな。
入室してきたのは
ガンツとスダルギアだ。
護衛すらつけていないユランは
二人の登場に対して
堂々としたものだった。
構わんよ。
用件は何だ？
貴方程の人なら
察しがつくだろう。
……降伏の勧告だ。
断る。
だろうな。
だが、
タキア城には暁星のギリアム
サロディア城には
鉄騎兵団を従える蹂躙のバグズ
そしてこのユベイルを攻めるは
新進気鋭の銀狼フーバッハ。
以上三騎将を従える
大将軍サウダージ様も
もうすぐ到着されるご予定だ。
兵力にも圧差があり
勝ち目などない。諦めろ。
そりゃあ手強そうだ。
だが返答は変わらん。
今、降伏するなら
サウダージ大将軍も
厚遇するとお約束されている。
悪いことは言わん。
…………
ユランの言葉尻には
高圧的なものは感じられず、
駆け引きを行っているようにも
聞こえない。
それどころかどこかしら
悲哀のようなものも感じられる。
かつての同胞に突き付ける
降伏勧告だからこそだろう。
ギュダもそれを感じ取っており
少しの間が部屋を包み込んだ。
レジーナ軍に降伏という
選択肢はない。
やはり変わらぬか。
残念だが我々には
戦う道しか残されておらん。
ギュダ将軍……
とても残念だ……。
そう言い残し、ユランは目を閉じ
出口への扉に脚を向けた。
ギュダの言う通り
レジーナ軍に降伏の二文字は
絶対にありえない。
ガンツもその返答に
納得している様子だったが、
スダルギアの口元が
不服そうに歪んだのを
ギュダは見逃さなかった。
