アデル一人だと無理がある為か、ロココもハルに向かって走りだす。アデルも危険を承知でロココの後を追い掛ける。
だが、ドゥーガーとハルの距離はもう完全に戦闘領域に入ってしまっている。あの巨体から繰り出される攻撃をまともに受ければひとたまりもない。
僕も一緒に行きます!
アデル一人だと無理がある為か、ロココもハルに向かって走りだす。アデルも危険を承知でロココの後を追い掛ける。
だが、ドゥーガーとハルの距離はもう完全に戦闘領域に入ってしまっている。あの巨体から繰り出される攻撃をまともに受ければひとたまりもない。
間に合わない!
もう撃ちます!!
!!
ロココが刻弾を撃つ決意を表した。今日二発目の刻弾。いくら夕食を挟み、休憩したと言えど、経験則にない二発目。
それに加え、その刻弾を撃ったっとしても倒しきれないことがわかっている。そのリスクを全部わかった上で、ロココは声を上げたのだ。
大丈夫っすよ……
え…………
ハルがダラりとした体勢から、鬼義理の柄に手を掛け抜刀した。ゆっくりとした動きでありながら、ロココとアデルには不思議にも、いつの間に抜刀したか分からなかった。
ドゥーガーはそのハルに向けて、左手に持った大きな岩を振り上げる。
見えてるっすよ。
命の危機が迫ってるとは思えない声。そして少しの風すら起こらないような動きで、ハルは鬼義理を振り下ろしていた。
――――硬質の皮膚、それに加え巨体故の打たれ強さは明白。他の大勢の冒険者がこのドゥーガーの為に犠牲になっていると聞いていた。
「絶対逃げろ」
ドゥーガーに出会った時の、圧倒的多数の忠告だ。ユフィの判断もそれに準じていたし、それほど別格の魔物だった。
アデルとロココの視界は、ドゥーガーが振り下ろした岩で遮られる。衝撃で粉塵が舞い上がり、発生した風と共に押し寄せてくる。
ハル……
その風と粉塵を防ぐことも忘れたまま、アデルはハルの無事を確認しようとする。
!!
粉塵の奥にいるドゥーガーが、岩を持ち上げ立ち上がる。新たな風が押し寄せ、再度その巨大さを認識させられる。ハルの安否は・・・・・・。粉塵の中にハルの姿を見付ける前に、ドゥーガーが再度動き出した。が、そのまま真後ろに力なく倒れた。
えっ!?
うわっ!?
アデルとロココは、再度の粉塵に対して目を両手で覆う。
何故ドゥーガーが倒れたのかは分からなかったが、兎も角、窮地は脱した。そして粉塵が収まりを見せた時、見慣れた人影を確認出来た。
ハルッ!
ハルさん!?
ハルは鬼義理を握りしめ、立ち尽くしていた。
心配するアデルとロココの声も届いていないのか、放心したように動きを止めている。
自分一人で……、しかも一太刀で強敵を倒した。
迫りくる巨大な敵を前に、呪いの力か極端にまで脱力して動けなかった。それは恐怖すら感じないほどの脱力。命の危機を感じつつも、焦りや恐怖を感じない境地。
頭で理解出来ずにいたが、身体はその実感を得ていた。呪いの力と言えど、ハルはその境地に踏み込んだのだ。
そしてその時に見えた――。
ドゥーガ―の中に光が。
妙な確信があった。ここが中心だって。
気が付いたら抜刀して、振り下ろしていた。身体が勝手に動いた。振り下ろされた岩を踏み込むことで躱し、そのまま光に向け斬り込んだのだ。
ハルは手中にある鬼義理を見つめ、それを何度も思い出していた。