【2035年、イバラキ。桜ココア】
【2035年、イバラキ。桜ココア】
この場所、すごいご近所じゃない! 私達の近くにそんな伝説のヒトが!?
シャウラちゃんから受け取った地図は、ヒタチナカの本当に近い場所を示していた。
ええ。本当に近い場所に居た子よ。彼女は此処から何処かへ行ってしまったの。
シャウラちゃんは空を視ていた。
そしてね、シャウラちゃんは彼女の物語に恋をしたの。この物語の完成形を拝読したいの。そして、彼女『なゆた』に一生を賭けて仕(つか)えたいの。
その憎めない瞳が陽の光を受け煌めく。
シャウラちゃんの英雄なの、文句ある?
と、優しい眼差しで彼女は語った。
着いた。きっと此処だ。
自宅の本当に近くの場所。幼い頃から見知っている所なのに、何故か意識してなかった2階建ての家屋。ここを調べれば、きっと彼女『なゆた』の何かが解る!
敷地は草生やすことなく、時間から忘れられようとしていた。一切の生活臭が消えている。
靴を脱いで母屋に上がる。潜った扉の先のキッチンで『カレーのルー』の欠片が転がっていた。
部屋の隅に漫画が数点残されている。
『それいけ! 国枝くん』って。これ絶版した奴だ! うわ! いいなぁ! って今はこれじゃなかった。
適当に置かれた漫画も気になるが、それどころじゃない。
これは?
私が手にしたのは数枚のメモ。そのところどころ、名前の箇所だと思うところが剥げている。
■■ちゃんの信じた正義と犬っ子さんの正義は違っていました。けどね。
犬っ子さんの正義はきっと現実。それもまた正しくて強い力。
■■ちゃんは犬っ子さんに平伏しその手を取ったのです。1人の正義と1人の正義、それが合わされば、合わせれば、きっと!
『今度の戦いは1人じゃないよね。■■ちゃんも一緒に戦えるよね。……チカラになれるよね!』
メモを眺めていたその時、突如として地震のような響きが起こった! 窓から見上げた空に幾つもの『四つ足』が映る。1つ2つ3つ、数えきれない!
この場所を囲むよう、彼らはこの地に降ってきた。
直後、近い位置から爆風が響いた! 他の誰かが『四つ足』を駆逐しているのかもしれない!
シャウラちゃん! 私達も戦おう!
あいよ。じゃああたしは観てるから『NEO』でよろしくねん♪
ポーチに仕舞っておいた犬耳カチューシャ『フリーシーNEO』を頭に収める。
行ける? 『NEO』!
【Yes.(はい!)】
チカラを解放する為、声にチカラを込める。
生きとし生ける皆を救う為! 世界の頂点に立つ者、『桜ココア』! 行きます!
【Ready?】
体を銀の衣が覆っていく。腰にヒカリの大剣『ONE』が宿る。私は守るべき家屋の扉を開け放った!
Go!
※※※
【2035年、地球衛星軌道上。???】
暗い玉座に俺は居た。地球から追い出された俺はいつしか異形のモノ達の王になっていた。チカラを行使する者と成っていた。
……俺の名は?
眼前で跪(ひざまず)く右腕を失った騎士が答える。
御身の名は、『キング・スカーレット』です。地球での名など要りません。貴方はガイアの民の希望、ガイアの象徴であります。
もう1人、左腕を失った闘士が俯いたまま俺の指示を待っていた。
『キング』。我ら、『ガイアの子』に命令を。
不意に零れてしまった台詞(せりふ)、だった。
……地球は、人間に相応しい星なのだろうか。
否。
零れた吐息を前に戦士たちがその名を語る。
異形(いぎょう)。右腕持たぬ、左腕の闇騎士『アレス』
異形(いぎょう)。左腕を欠損せし、右腕の魔闘士『アスタロト』!
アレスと、アスタロト。俺が名付けた2人の戦士が平伏(ひれふ)し胸に誓いを立てた。
我ら、『スカーレットナイト』が、
地球に蔓延(はびこ)る人間どもを駆逐して参ります。