――迷宮五階層入口。

 五階層に降り立ったハル達は、今迄以上の魔気の濃さに眉を寄せた。

ダナン

さっきの青い石、
この辺で使うのか?

ユフィ

アデル、
一階入り口の座標とここは
どれくらい離れてるかしら?

アデル

ここの座標は北側です。
ある程度南下してから
使用する方がいいと思います。

ユフィ

その通りね。
まずはこの通路を進んで
座標付近になれば
もう一度使うわ。

ロココ

了解です。
少しでも五階のマッピングを
進めていた方が
特定しやすいですしね。

 リュウ達の座標は、ある程度分かっている。大きく移動していない限り、次の一回の探知で発見するのも難しくないだろう。

ハル

そうと決まれば
行くっすね。

ダナン

おう!

ユフィ

クドイようだけど
急ぐからこそ確実に。

ハル

分かったっす。

 一本道の通路を進み始める。盗賊の砦と呼ばれる所以は何故か? 少し魔気が濃く感じるほどで今迄と変わらぬ景色に、ユフィの脳裏に僅かな不安が横切った。

ダナン

まだ見てねぇもんをよぉ、
あれこれ心配しても
身体縮こまるだけだぜ。

ユフィ

……そうね。

 パーティリーダーの責任を背負ったユフィの立場からすれば、当然考慮しなければいけない仲間達の安全。どうしても予期してしまう身の危険に対し、ダナンの明るさは頼もしい限りだった。

ハル

ランディ
凄いっすよ。
ほんと凄いっす♪

ランディ

ふ~、ハルキチは
凄ぇばっかりだな。
大して四階の魔物と
変わんねーし。

 五階層を進むハル達。見たこともない魔物も多くいた。だが四階層の魔物よりも僅かに強いくらいで、苦戦することはなかった。

ロココ

ハルさんも
活躍してましたよ。

ハル

いやぁ~
自分なんて
それほどでもないっすよ。

ダナン

ふにゃふにゃしてっと
また、すっ転んで
ピンチになるぜ。

アデル

確かに……

ハル

ついにアデルまで
辛口発言に……

アデル

いえ、
リュウさん達は
この階層で救援を
待ってる可能性が
高いんですよね。

ランディ

そうか。

ダナン

何が言いてぇんだ?

アデル

本当にここの魔物に
苦戦したんでしょうか?

ユフィ

私も感じていたわ。
突発性アクシデントがあったか
この階層に相応しくない
強い魔物と遭遇したか……。
もしくは盗賊の砦。
そこで何かがあったかも。

ランディ

その答えはよぉ……

 ランディが鋭い目付きを向けたのは闇の中。長剣の柄に手を掛け、一気に引き抜いた。

ロココ

…………あ、ああ。
お、大きい。
凄く巨大な魔気の量です。

ランディ

あいつを倒してから
考えるとしよーぜ!

 壁が動いた。

 そう錯覚するほどの巨大さ。ハル達の身長の三倍はあろうかというその魔物は、ゆっくりと、ゆっくりと前進してきた。

 ~湧章~     118、五階層探索

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