アデルの放った刻弾は魔物に命中しなかった。
ユフィの見立て通り、この魔物は再生時に隙が出来るのは確かだ。そしてアデルの刻弾のタイミングも完璧だった。
だが今迄と違い、ダメージを受けた後に、再生を始めず肉片でのガードを優先したのだ。
アデルは刻弾の影響か、両脚に力が入らずへたり込む。ユフィの激しい頭痛も止んでおらず、ダナンとランディは触手のダメージが深い状態だ。
いけ!!
な……
は、外れた……
あ……ああ……
アデルの放った刻弾は魔物に命中しなかった。
ユフィの見立て通り、この魔物は再生時に隙が出来るのは確かだ。そしてアデルの刻弾のタイミングも完璧だった。
だが今迄と違い、ダメージを受けた後に、再生を始めず肉片でのガードを優先したのだ。
アデルは刻弾の影響か、両脚に力が入らずへたり込む。ユフィの激しい頭痛も止んでおらず、ダナンとランディは触手のダメージが深い状態だ。
自分が
何とかするっす!
ハル……
駄、目よ。
一旦……退くのよ。
ハルさんっ!!
次は僕が撃ちます!
ロココ、
連発はやめろ!
構いません!
いけますっ!!
通常時のロココの声量とは比較にならない。刻弾の連発に危険が伴うのは承知の上で、ロココはハルとタイミングを合わせる。
再生の瞬間を確認した上での刻弾。要求されるのはその速さと正確さ。ハルも一人で再生を強いるほどのダメージが再度要求される連携だ。
確率は低い。が、もうそれしか頼みの綱は残されていなかった。
待てっつーの。
ランディが起き上がり魔物に正対している。触手からのダメージは酷いが、眼光は輝き刃物の様に鋭い。
俺がやる。
ハルキチ、出来るだけあの
邪魔な触手をぶった切んぞ。
ランディ、
怪我は大丈夫っすか?
つまんねーこと気にしてんな。
こんなもん
我慢すりゃいいんだっつーの。
ダメージがないわけじゃない。身体もハルやダナンほど頑丈ではない。ユフィが危惧していたランディの打たれ強さは、根性という精神論でカバーされていた。
分かったっすっよ!
やるなハルキチ。
ハルの連撃に続いて、ランディの長剣が触手を切り割く。だがさらに他の触手が傷付いたランディを襲っていた。
くどいっつーの。
触手に襲われていたランディは、更に魔物に接近し刻弾を使った。
ゼロ距離とも言えるその近さでは、肉片でのガードは不可能。刻弾を命中させるのは、至近距離での使用が必要不可欠とランディは考えたのだ。
通常、刻弾を使用するには高度な集中を要する為、ある一定の隙が生まれる。それを接近戦中に同時に行い、連続で行うのは至難の技だ。
ロココやアデルに出来ないそれを成し遂げたランディは、魔物を倒した後、飄々と長剣を鞘に納めた。
雑魚すぎる。
憎らしいほどの雑魚発言。
激闘後とは思えない余裕の台詞は、ハル達の緊張を一気に解いた。
やりやがったな。
この野郎!
す、凄い……
接近戦しながら
刻弾の集中を行うなんて……
そんなに凄いことなんすか?
大したことねーよ。
今、初めてだけど
やってみたら出来たし。
ぶっつけ本番かよ。
って、
そんな簡単なことじゃないわよ。
そこだ。
出来ねーと思うから出来ない。
難しいと思うから難しいんだよ。
パーティリーダーのユフィに自信をもって意見するランディ。
ユフィはその言葉に気付かされた。自然に自分の心を縛っていた可能性という鎖の存在に。――自分にも目的がある。妹の病の克服方法を必ず見付けること。スッと目を閉じて再確認するころには、刻弾を撃った頭痛は止んでいた。
その通りだわ。
ありがとうランディ。
魔気を佩かせるというのも
そういえば試したら
出来たと仰ってましたね。
ああ。
脚の痺れもひき、ランディの傷を手当するアデル。コフィンとの決闘時を思い出し質問したのだ。
すごい、本当にすごいです。
まずは出来ると思う。
そこから始めねーと
出来ることも出来ねーって
ことだな。
それじゃあ、
あの技使っても
剣がボロボロにならない
ようにも出来るっすね♪
お……、おう。
ったりめーだっつーの。
そうっすね。
ハルの満面の笑みと言葉は、ランディも気付かざれてなかった可能性を感じさせた。