シャウラちゃんからその犬耳を受け取り頭へ収める。更なる声が聞こえた。
シャウラちゃんからその犬耳を受け取り頭へ収める。更なる声が聞こえた。
【I'm NEO. The fleecy name is inherited. It's the power beyond everything for you!(私は『NEO』。フリーシーの名を継ぎしモノ。貴女に全てを超えるチカラを!)】
フリーシーNEO? 私にチカラを貸してくれるの?
【That’s right.(はい!)】
手を宙(そら)へと掲げる。
なら、アリオスさんを、シャウラちゃんを、全てを守るチカラが欲しい!
射した光が私を包む。この身を赤と黒の輝きが覆っていく。腰には一本の短い鞘。私はその柄を引き抜いた。
刀身の無い剣?
【Please pour a heart.(想いを注いでください)】
手にした柄へ想いを通す。目を瞑り、一瞬、でも強く想った。
みんなを守るチカラを、笑顔を創るチカラを私に!
開いた視界には圧倒的な瞬き。刀身は光の刃と成っていた。
『四つ足』の最後の1体を『アリオス』さんが討ち倒す。最後の敵、『二つ足』が無防備なシャウラちゃんへ襲い掛かった。
させない!!
『脚部アーマー』が後方へ光を放ち加速する。構えた太刀を一瞬にて振り切った。
刃、瞬きにてアナタを裁く!
走り抜けた後方で黒が光に浸食されていこうとしている。
ABIGUTYA~!
ガイア獣は全て、光となって消えていく。
身体を覆う鎧と、光り輝く剣も消えていった。ただ残ったのは頭に掛けられた犬耳だけ。
振り向いた先で『アリオス』さんが自身の手の中を見ている。
……『王留(おうる)』の欠片が反応した。何なんだ、この子は……
アリオスさん! 怪我は無い? 何処か痛くないですか?
駆け付けた先で彼がこの腕を取った。
ちょっと待って。キミこそ怪我してるじゃないか!
驚く私の手に『ちょっと我慢して』と何かの液体をかける。すごく染みた。我慢する私の指に一本一本、アリオスさんは腰から取り出した包帯を巻いていく。
……!
眼が、か、顔が破裂する!!
熱く膨張する自分の顔を見られたくない!
私は逃げだしていた。逃げてしまった! 小脇に『シャウラちゃん』を抱いて、とにかく遠くへ離れようと駆けた!
※※※
たどり着いたのは『鶴亀ドラックストア』の駐車場だった。疲れていないのに、まだまだ体力には自信があるのに心臓の爆発が、その連鎖が治まってくれない。
ココア? どうしたでしゅか? そんなに息を切らせて。
あ! あ! あ!
店から出てきたのはお母さんだった。その姿を前にしても心休まる事は無い。口がパクパク言葉も出ない。顔が更に熱くなっていく。
それに、そのぬいぐるみ……。ボク、すごく見覚えがあるんでしゅが……。
私の後ろで何故か身を隠すシャウラちゃん。その長いツインテはどうしても隠しきれない。
貴女、お名前は?
にこやかなお母さんの問いに『シャウラちゃん』がテヘペロと、舌をはみ出させる。
う、宇宙刑事シャウラバンよ♪
その尻つぼみ頭ハッピーな言葉に、荷物を置き、つかつかと間を詰め、お母さんがその首根っこを持ち上げる。
やっぱり。
お母さんは大きくため息を吐いた。
やっぱり『シャウラお姉ちゃん』じゃないでしゅか! いったい何で此処に? 聞きたい事は山ほどありましゅが、とりあえず『指導』執行でしゅね。
いやん。お姉ちゃん折檻(せっかん)されちゃうわん♪
荷物を手にしたお母さんがプラスで美淫獣を連れて行く。なんという絵面(えづら)だろう。
おい。どうしたんだココア? おいマァサ! いったい何が起きているんだ。
後から出てきたお父さんの胸へ飛びつく……前に足が崩れ落ちてしまった。
お父さん、私にも何が起きてるのか解らなくて。と、とにかく、今もーれつにお茶が飲みたい。
膝落とす私を前に、お父さんは腰に手を当て笑っていた。私の右手にペットボトルを握らせる。お父さんは私の左手の傷を見ても、やっぱり笑顔だった。
よく、――頑張ったな。
と、にこやかに私の頭をワシャワシャするだけだった。