ベイカー

そろそろわかったかい?

待ってください! もうちょっとでわかりそうなんです

 タロットマンはこの4人のうち誰かに殺された。でもステージには立っていた。ということは可能性は一つしかありません。

ステージに立っていたのは偽者だったってことですよね

そしてタロットマンを殺害して、成り済ますことができる可能性のある人は

 うん、一人しかいません。

 私はポンっと両手を合わせて、あのセリフを言ってみました。

これは奇跡でも魔法でもありません。トリックです!

ベイカー

うん? なんだい、それは?

なんでもない。それより答えを聞こうじゃないか

はい。犯人はタロットマンに変装してステージに上がったんだと思います。つまりこの4人の中で変装ができそうな人が犯人です

ベイカー

ふむ、ズバリそれは誰かな?

変装するということはその後のステージに出られないということですから、当然アシスタントさんは外れます。スタッフさんも大事な本番でいなかったら周りの人が気付くでしょうから、残った人。犯人はマネージャーさんですね

 どうですか、この完璧な推理は。

 私だってやればできるんです。でも小岩くんは少しも驚いた様子はないどころか、期待外れだったくらいの反応でちょっぴりへこんでしまいそうです。

消去法か。まぁまったく間違いじゃないか

そういう小岩くんはどうやってわかったんですか?

ステージのイベントを代わりにやるんだ。当然事前にかなりの準備が必要だ。占いだって完全に適当じゃ困るからタロットマンの方式を勉強する必要がある。これは計画的な犯行だ。スタッフや警備員じゃできない。それができるのは普段から近くにいる人物ということになる

 確かにイベントのスタッフさんじゃ観客をステージに上げてやるイベントでいきなり占いはできません。一人の人間を殺すためにそこまでの努力をするなんて、私には少しも考えられないことでした。

だからその日に会場にいたタロットマンに近い人が犯人だということですか?

その通りだ。もちろんスタッフに紛れている可能性もあるから、僕が聞きたかったのは被害者と面識のある容疑者がいるか、ということだ

なるほど。いきなり殺して変装なんて無理ですもんね

ベイカー

いや、これは突発的な犯行だった。仕事について口論になり、控室にたまたま忘れられていたケーブルを使ったものだ

なんだって? じゃあ犯人はアドリブだけでステージをやり遂げたとでも言うつもりか?

ベイカー

いや、違う。ステージに上がっていたのは本物のタロットマンだったんだよ

本物って。だって今タロットマンは殺されて、犯人が変装したって言ったじゃないですか

ベイカー

そうだ。その推理は一つも間違っていない。間違っていたとすれば私の出題の方だね

いったいどういうことですか?

 タロットマンは殺されたはずなのに、本物のタロットマンはステージに立っていた?

 自分でも何を言っているかわからなくなって、私は頭を抱えるしかありませんでした。

四話:死者のステージ(解決編)Ⅰ

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