ロココ

前方に異質な
魔気の反応です!

 ロココの危機感迫る声は、まだ見えぬ迷宮の闇に対して全員を構えさせるには充分だった。

グロゥプ

ランディ

なんだ?
あんな奴見たことねーぞ。

ダナン

ならよ……

ハル

取り敢えず全力で
攻撃叩き込むっすよ!!

ダナン

な!?
嘘だろ……

ハル

そんな……

ロココ

あっと言う間に
……再生した。

ユフィ

ロココ!
私が誘い込むから刻弾を!

 ユフィの判断と行動は最速だった。



 ダナンとハルの攻撃は深々と魔物の身体の中心を捉えていた。しかし、倒れるどころか次の瞬間には身体の再生は完了していたのだ。

 ユフィは武器による攻撃が再生のスピードに追い付かないと確認すると、驚きを脇に捨て、素早く対策を練り・決め・伝え・実行に移したのだ。

 魔物が口から吐き出したのは、強力で煙を上げる酸だった。無造作と言えるほど撒き散らされた酸は、当たったら軽傷ではすまないのは確実だ。

アデル

皆さん!
気をつけてください!

ハル

旦那、ランディ!
全員で刻弾を当てる
隙を作るっすよ!!

ユフィ

足よ、
全員で足を狙うわ!

ダナン

おおよっ!

ランディ

始めからそのつもり
だっつーの。

 四人の攻撃が、魔物の脚部を切り割き破壊する。即座に再生が始まるが、魔物は片膝を付く体勢になった。

ユフィ

ロココ!
今よっ!

ロココ

え!?

ダナン

やったのか!?

ハル

流石ロココっす。

ランディ

いや、
当たってねーし。

アデル

バラバラに溶けたのは
確かですが……

ロココ

当たる前でした。
それにこの魔気は……

 刻弾は当たらなかった。着弾の軌道上だったが、魔物に直撃する寸前でバラバラになって溶けてしまった。



 だがまだ強い魔気を感じる。











 背中に冷たい悪寒が走り、重苦しい空気が身体全体を抑え付けてくるようだ。





 ハルも最初は勝ったと思っていたが、もう分かっていた。まだ終わっていない。





 さっきの魔物がバラバラになって溶けた場所から、急速に何かが形を成していった。

 脚部の形成で人型に思えたが、上半身と言える部分は異形そのもの。醜く形成されていくその姿を見れば、自然と足が震えてくる。今迄にない生命への危険に、身体が勝手に反応しているのだ。




 その震えを抑え込んだユフィは刻弾を放つ。が、魔物は肉片をばら撒く。その肉片に刻弾が当たり、刻弾もろとも霧散してしまった。











 ――経験則にない再生能力を持つ相手に全員が困惑する。刻弾を撃つにしてもあの肉片にガードされてしまうかもしれない。それに刻弾の影響か、ユフィの頭に割れるような痛みが走っていた。

 ~湧章~     113、変容

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