ロココの危機感迫る声は、まだ見えぬ迷宮の闇に対して全員を構えさせるには充分だった。
前方に異質な
魔気の反応です!
ロココの危機感迫る声は、まだ見えぬ迷宮の闇に対して全員を構えさせるには充分だった。
グロゥプ
なんだ?
あんな奴見たことねーぞ。
ならよ……
取り敢えず全力で
攻撃叩き込むっすよ!!
な!?
嘘だろ……
そんな……
あっと言う間に
……再生した。
ロココ!
私が誘い込むから刻弾を!
ユフィの判断と行動は最速だった。
ダナンとハルの攻撃は深々と魔物の身体の中心を捉えていた。しかし、倒れるどころか次の瞬間には身体の再生は完了していたのだ。
ユフィは武器による攻撃が再生のスピードに追い付かないと確認すると、驚きを脇に捨て、素早く対策を練り・決め・伝え・実行に移したのだ。
魔物が口から吐き出したのは、強力で煙を上げる酸だった。無造作と言えるほど撒き散らされた酸は、当たったら軽傷ではすまないのは確実だ。
皆さん!
気をつけてください!
旦那、ランディ!
全員で刻弾を当てる
隙を作るっすよ!!
足よ、
全員で足を狙うわ!
おおよっ!
始めからそのつもり
だっつーの。
四人の攻撃が、魔物の脚部を切り割き破壊する。即座に再生が始まるが、魔物は片膝を付く体勢になった。
ロココ!
今よっ!
え!?
やったのか!?
流石ロココっす。
いや、
当たってねーし。
バラバラに溶けたのは
確かですが……
当たる前でした。
それにこの魔気は……
刻弾は当たらなかった。着弾の軌道上だったが、魔物に直撃する寸前でバラバラになって溶けてしまった。
だがまだ強い魔気を感じる。
背中に冷たい悪寒が走り、重苦しい空気が身体全体を抑え付けてくるようだ。
ハルも最初は勝ったと思っていたが、もう分かっていた。まだ終わっていない。
さっきの魔物がバラバラになって溶けた場所から、急速に何かが形を成していった。
脚部の形成で人型に思えたが、上半身と言える部分は異形そのもの。醜く形成されていくその姿を見れば、自然と足が震えてくる。今迄にない生命への危険に、身体が勝手に反応しているのだ。
その震えを抑え込んだユフィは刻弾を放つ。が、魔物は肉片をばら撒く。その肉片に刻弾が当たり、刻弾もろとも霧散してしまった。
――経験則にない再生能力を持つ相手に全員が困惑する。刻弾を撃つにしてもあの肉片にガードされてしまうかもしれない。それに刻弾の影響か、ユフィの頭に割れるような痛みが走っていた。