――ディープス地下迷宮四階層。

ロココ

流石に今迄とは違いますね

 ロココが神妙な面持ちでメンバーに言い洩らした。それを受けてかランディが口を開く。

ランディ

俺は四階層までは
何度も来ているから
慣れたけどな。

 嫌味っ気を感じさせないランディの物言いは、まだこの階層を知らぬユフィ達に、僅かながらの安心を与えた。

ユフィ

今日は無理しないわ。
お互いの実力を確認したり、
実践での連携を確認する為に
なるべくリスクは
減らしていくつもりよ。

ハル

わかったっす。
ランディ、
よろしく頼むっすよ。

 ハルの声掛けでランディに視線が集まる。するとランディは表情を緩め、美男子特有の甘い目配せで返事をしてみせた。

ロココ

前方に魔気の反応です。
数は二、三体です。

 全員が一斉に前方の闇に構える中で、ランディが関心を示した。

ランディ

そんなこともわかるのか?

アデル

ロココは魔気の探知や
コントロールが並外れています。
刻弾の扱いも誰よりも
秀でていて頼りになる人です。

ランディ

神業かよ。

 魔操者と呼ばれるその能力を、ランディも初めて目にし感嘆している。

ユフィ

来るわよ!
ハイリザード同時に三体!
ハル、ダナン、ランディ、
それぞれ迎え撃って!

ハイリザード

 真っ先に血飛沫を上げたのはランディが対したハイリザード。眉間を長剣で一突きにされて何もせぬままに倒れた。

ハル

すげーっす!!
ランディ凄すぎるっすよ!

ランディ

お手並み拝見。

ダナン

一対一じゃ負けねーぞ
ワニ野郎!!

 鍔迫り合いの状態になっていたダナンは、魔物相手に力で押し切り大きく仰け反った相手の隙をつき、頭に鉄棍を叩きつけた。

ダナン

うおっし!!

ランディ

……

ハル

自分も負けないっすよ!

 ハルは相手の攻撃を躱す。そこからの袈裟斬りが見事に決まった。

ランディ

っま、
これくらいの相手なら当然か……

 ランディはそう憎まれ口を利きながらも、ダナン、そしてハルとハイタッチをした。

ユフィ

速さもキレもあるタイプね。
問題は……

 一人呟くユフィの危惧は、アデルの耳にだけ僅かに届いた。

 ――――ユフィ達は少々の苦戦も見受けられたが、無難に四階層の魔物を討伐していった。

 先ほどの呟きが気になったアデルは、ユフィに尋ねていた。

アデル

さっき言っていた危惧って
何なんですか?

 ユフィはアデルと視線を合わせて答える。

ユフィ

打たれ強さよ。
あーゆうタイプは
触れさせず戦うスタイルだから
被弾した時の耐久性というか、
タフネスを心配しているのよ。

アデル

確かに前衛で身体張って戦う役目には重要な要素ですね

 この時、二人がジュピターのことを思い出したのは自然なことだった。ジュピターも速さを主体にして戦うタイプだったが、軽量の宿命と言える打たれ弱さに悩んでいたからだ。

ロココ

前方に異質な
魔気の反応です!

 ロココの声は平常時より強張っていた。
 そして闇から現れたそれは、人の形をしながらも人ならざる魔物だった。

 ~湧章~     112、危惧

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