よし、繋がったな。
では始めるぞ。今日は本講義初の野外学習だ

野外学習?リモート授業ですよね?
私は自宅から繋いでますよ?

リモート授業だが、先生が水族館から授業すれば、生徒がその場にいなかろうと野外学習なのである

前回コメントがあったから、野外学習をしたかったのね……、しかもなるべく日に当たらないように……

さて、今日は「背景」についてだ。ストリエの背景を使うと、どのようなことが表現できるか、解るかな?

今回は簡単ね!

その場面の「場所」や「状況」を表現できます。

例えば、今私が「ノートPC」を使っていることを背景で理解してもらえます

その通り。その瞬間の場所や状況を長々と読ませずに把握してもらうことができる。

しかし、背景で表現できるのは、それだけではないぞ

例えば、作品に専用の題字イラストを作り、それを各エピソード内で毎回使うことで、シリーズ感、連載感を与えることができる

抜群のタイミングでタイトルが出ると、映画みたいでカッコイイですね

また、時間や天候の差分がある背景を使って、「時間経過を演出」することもできる

例えば、ヒロインが恋人からの手紙で呼び出され、待ち合わせ場所に来たとする

デートにぴったりの素敵な背景にしたいですね

そうだな。しかし待ち合わせ時刻になっても相手がやってこない

「遅いわ、どうしちゃったのかしら」とセリフを入れれば伝わりそうですね

そんな独り言をつぶやく人がどれほどいるのか疑問ではあるがな

じゃあフキダシの形を変えて「心の声」にします

他にも地の文で説明するという手もとれるだろうな。

ここで背景を夕方にすると、「長時間待たされている」という【時間の経過】を瞬時に感じてもらうことができる

これを上手く使えば、文字表現を使わずとも時間経過を背景に語らせることができる。

文字がないことで「無言でひたすら待っている」感じが増す場合もあるだろうな

なるほど、イラストが昼間から夕方に変化すれば、数時間くらい経過しただろうと誰でも感じるからですね

その通り。

特に短編や「サクっと読める」ことが目標のときは、文字を減らす手法として役立つぞ

なるほど。

でもどうやって背景を夕方や夜の色にするんですか?

背景の色は編集できん。

背景の「フィルター」で薄い黒や白をかけて夜や霧を演出することはできるかもしれんが、基本的にはバリエーション違いの背景が投稿されることに期待するしかない

そうですか。ちょっと残念

だが、探し方のコツはあるぞ。「夕方」や「雨」などのキーワードで探すのだ。

そういった特殊な状況の背景は、晴れや夜バージョンも用意されていることがある。

気になる背景を見つけたら、その作品名や作者名で再検索して別バージョンがないか確認してみよう

わかりました

あれ、いつの間にか夜!

ヒロインさん、待たされすぎじゃ……!?

これって絶対恋人が事故に遭ったパターンですよね……ヒロインさん、かわいそう……

あ~、いや違うぞ。

これはヒロインが偽の手紙で呼び出されている場面だな。本当の恋人からの手紙ではないから誰も来ないのだ

えっ!

だったら恋敵のワナですね!なんて卑劣な!

違う違う、確かにワナではあるが恋敵ではない。

今殺人が行われていて、偽の手紙で呼び出されたヒロインにはアリバイがなく、このあと容疑者にされるという展開だ

やっぱりヒロインかわいそう……

大抵そういう展開の後はヒロインが素人探偵になるから大丈夫、泣くな

泣くといえば、泣くのは感情の一つだが、背景は感情の表現、あるいは読者の感情を揺さぶる表現にも使えるぞ

主人公の心情を示すように場面の天気を雨にする、とかですよね?

もちろんそういう使い方もある

今回はテキストを読んでもらおう。ただし、大切な注意がある

流し見ではなく、しっかり最初から最後まで読んでほしい

斜め読みではスクロール速度も速くなり、読者の心に訴えかける効果を実感しにくい。

余裕があれば第一話から読んでキャラクターを把握して読もう

この後、エピソードの内容に触れるから、ネタバレ防止の観点から必ずテキストを読んでから講義の先に進むこと!

ストーリー名:【レジーナ姫の突撃指令】
エピソード名:9ー冷気
クリエイター:ナンチャイ

うわぁ、すごいですね。ラストは私までニラまれた気分になっちゃいました

読者の感情にまで作用する素晴らしい作品だな。そして背景が大きな役割を果たしている

ラストシーンの植物の背景ですね

怖いものが描かれた背景ではないのに、どうしてゾクっとしたのかしら?

その背景も重要だが、それまでの背景もまた重要なのだ。

このエピソードでは、鮮やかな山や空の背景がずっと続いている

読者の目が鮮やかな自然に慣れきったところで、突然のモノクロ背景!画面の色が大きく変わって読者は驚く。

登場人物の驚愕と同じタイミングで驚くことで、読者自身が登場人物の感情を疑似体験したかのような作用があるのだ

そして、黒には「冷たさ」「闇」、モノクロは「温度がない」「静」といったイメージがあり、突然突き付けられた「冷酷さ」を読者は無意識に感じ取るだろう

熱いアクションの連続から突き付けられる突然の「冷たさと静止」。

これを文字だけでなく背景を上手く組み合わせて表現したことで、読者により大きなインパクトを与えることに成功しているのだ

背景って奥が深いですね!面白くなってきました。

他にはどんな使い方があるんですか?

あとちょっと教えようかと思っていたのだが、もう時間がないから今日はここまで

あら、もうこんな時間

部屋の中は電気で明るいから、夕方背景を使った時間経過演出はできなかったのね

先生、今日もありがとうございました。

リモート授業でも雨天休講

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