【????年。ブラックダド】

ブラック・ダド

そろそろ終いにしようか。

 迫るブロウの担い手を払い、私は手を掲げた。

ブラック・ダド

来い。王留!

 空から堕ちた光は剣と成り、全ての時間を止める。最強のチカラ皇器『王留』を前に、全てのチカラは無力と成る。

 世界が替わる事は無い。全ては我が『ホーム・ホルダー』のモノと成る。



 歩を進めた。赤き犬耳を前に歩みを止める。

 全てのチカラの希望、胆(きも)と成っているのはこの子だ。

 全てが止まった世界で、少女を見下ろす。『柊真紅(ひいらぎ まあか)』、彼女はとてもあどけない顔をしていた。


 その首に掛かった『存在の石』を、満を持して握り潰す。

ブラック・ダド

これで終わりだ。

 その首へ光の太刀を振りかざす。

 太刀の煌めきに、――それは映った。

 刃を降ろし確認する。





 三日月型の痣(あざ)が彼女の首に在った。

 それは、自身の娘『マァサ』が負ったモノにとてもよく似ていた。

モカ

……

ブラック・ダド

……。


 その瞳を覗き込む。その顔の面影は、……とても『マァサ』に似ていた。

ブラック・ダド

……。

 首を振る。

 私は、間違ってはいけない。決して間違ってはならない。なのに、





 ……頬を伝うモノが止まらない。

ブラック・ダド

そうか。キミが、ね。

 幾つもの想いが甦る。

シュークレン

『大物が釣れたよ! 沙羅! マァサ!』

シュークレン

『マァサ。キミはよく飲むね! 将来が楽しみだ!』

シュークレン

『マァサ。私がキミのパパだよ!』

シュークレン

『沙羅! 今、この子が私を笑ったんだ!』

シュークレン

『――私がパパ、だよ』

マァサ

『ぱぁぱ』

モカ

――ボクは、決して負けない!

 時間は音を立てて動き出す。



 我が娘『マァサ・バッハ』を中心に、――この世界が私へ反旗を翻した。

【第33話】嗚呼、キミが。

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