【????年。柊モカ】

 煌めく刃、その銀色が叩きつけるようにボクを襲う。

レッド・ボーイ

……。

モカ

……。

 真っ向から迫る目を見返す。剣が2度、3度と弾かれる。

 フリーシーのチカラ、――子供を守る灰色の空間でも『レッド・ボーイ』は止まらなかった。

レッド・ボーイ

……俺は止まらない。誰にも、どんな奴にだって、俺の時間は縛らせない!

『レッド・ボーイ』の左手に握られた剣が振りかぶられる。

 その重さに耐えられずのけ反った。

 見上げる先で交差する剣、その強い圧にボクは抗えなかった。強く蹴り飛ばされる。

 そして『レッド・ボーイ』がボクを見下ろし、その剣を腰に収めた。

レッド・ボーイ

ヒーローが必殺技を放つ時の想い、今の俺になら解るよ。

モカ

な、何を言って、

レッド・ボーイ

来い。朱雀『ラプチャー』

モカ

……そ、それは!


 空から『ボーイ』が受け取ったモノ、それはあの時『鳥仮面の彼』を撃った銃(しろもの)だった。

レッド・ボーイ

たぶん、この気持ちだ。自身が正義だと心から胸を張れる。


『ボーイ』はボクを嗤った。その指が銃の引き金を引き絞る。

レッド・ボーイ

くたばれ! 真紅(まあか)っ!!


 撃ち抜かれた右腕に激痛が奔る。撃たれた肘から、爆発が連鎖し、ボクの腕が膨れ弾けた。

モカ

お願い! ボクに勇気をくだしゃい!!


 やるしかない!

モカ

ァァアアアアアッ!!!


 ボクは右腕を左の腕で断ち切った。右腕が心臓と成って、激しい震えが脳髄を打ちつける。

レッド・ボーイ

真紅(まあか)。俺と勝負だ。どっちが真のヒーローに相応しいか。

 血を撒き、残された左の腕で刃を振るう。眼が霞む。『ラプチャー』から持ち替えられた剣に幾度となく弾かれた。その刃がボクの髪を斬り払う。

モカ

お願い。いっか、ボクにチカラを!

レッド・ボーイ

『ボーイ』の剣が肩骨を砕き、そのまま動きを止める。

モカ

うああぁぁああああ!!!

 頭を振り激痛を越え剣を受けたまま刃を振り切る。

モカ

マァマ! いっかああ!!!

 チカラで『ボーイ』の腕を叩き折る! 2度、3度! 4度! 5度6度7度! その肉塊を打ちつけた。

レッド・ボーイ

……

 其処に残されたのは、両腕を落とし、変形した『ボーイ』の姿だった。動きが止まった? いやまだだ! こいつはきっと生き返る! ボクは肉塊を叩き続ける。

 すっ、と眼の前が黒く染まった。

壱貫

――おい! しっかりしろ! 死ぬんじゃない! 聞いてるのか!!

 ようやく開いた眼に映ったのは、いっかで、ボクはその温かな腕に抱かれていた。

モカ

……っか♪ ぼ、ボク。

 そして、視界は完全な闇に成った。

【第30話】真っ赤に染まれ。

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