Wild Worldシリーズ
Wild Worldシリーズ
コール歴5年
sky colors
第六話 ダイオスの旅立ち
ダイオス~
ユッカがいつものようにオグに手を引かれ、族長のテントに向かうと、彼は旅支度をしていた。
それは見慣れた景色だったが、一度クローブへ城へと誘われたことを思い出したユッカは、思わず体が固くなった。
――城へ来ないか?
どうしてだろう。
どうしてこんなに胸につかえているのだろう。
今になって思う。
どうして彼は自分を誘ったのか。
城に行くの?
問いかけるユッカの声は固い。
ダイオスはチラリとユッカを見ただけで、何も気にしなかった。
おぉ、よくわかったな
えぇー、またー?
オグがダイオスにまとわり着いている。
それを眺めながら、ユッカの脳裏にはたくさんの疑問が沸きあがってきた。
何をしに行くの?
めずらしいな、そんなことを聞くとは
どうした? 一緒に行くか?
問い返されて、ユッカは思いっきり首を横に振った。
じゃあボクが行くー!
ははは。オグはユッカと一緒におれ
ダイオスは笑い飛ばすと、ユッカの頭に手をポンポンとやさしく置き、そのまま旅立っていた。
背中に、大きな、大きな剣を携えて。
一面に花が咲き乱れている。
両親の墓に手を合わせ、アルトは思う。
どうして、僕はこんなに星が好きなんだろうね
笑ってしまうくらい星が好きだ。
いや、笑っていいのだろう。
空を見上げると、思わず星を探した。
まだ夜ではないから、星が出ているはずもないのだけれど。
もう、癖だ。
人の足音が聞こえて振り返ると、久しぶりの来客があった。
アルト、元気?
懐かしい声、姿。
よみがえる数年ほど前の記憶。
リウトも久しぶりだね
何年ぶりの再会だろう。
お互いがお互いを覚えていた。
大人になった?
6年も経てばね
変わらないね
お互い様だよ
メール屋さん続けているの?
うん。そっちの星の研究は?
続けているよ
昔馴染みに会うような会話。
しかし、アルトにとって見慣れているリウトの景色に、足りないものがひとつある。
ユニは?
その質問をした途端、リウトの顔色が曇った。
あからさまな反応で、さらっと聞いてしまったアルトの方がなぜか動揺した。
何かあったのか……?
フォローする言葉を何か言わなければとアルトは口を開きかけたが、先にリウトが話し出した。
声音は暗い。
わからない
でも、レダ王は死んだよ
アルトは言葉を失った。
初めて知る真実だった。
風が吹いて、花が舞う。
ダイオスよく出かけるよねー
たまにはボクたちも連れて行ってくれればいいのに
そうだね
ユッカはあいまいに答えた。
ダイオスの、後腰に携えていた大きな剣がどうしても気になる。
……どうしてだろう。
あんなもの、持つ必要があるだろうか。
……何のために。
ユッカちゃん、ボクたちも今度お城へ連れて行ってもらおうね!
オグは両手を握り締め、瞳をキラキラと輝かせてユッカを見上げた。
それを見ていると、全ての不安が無意味なものに思えて、ユッカはやさしく頷いた。