――冒険者の酒場。
――冒険者の酒場。
ランディとハルはコフィンへの贈り物を調達し酒場に戻ってきていた。
古代神の像~は
五万ガロン♪
だけどもろくて
首グシャ~ン♪
お、ハル、
御機嫌みたいだな。
おかえりぃ~、
確かにご機嫌だけど
歌詞はヒドイ内容だねw
あれだけのことをしといて
あの歌詞はあり得ないわ。
触らぬ馬鹿でも馬鹿は馬鹿。
ん~名言。
また、五月蠅いのが
帰ってきたか。
ん!?
師匠はいねーのか?
後から来るって
言ってたけどな。
しゃーねーな、
ここで待つか。
どうしたんだ?
結局何してたんだおめぇ達。
ランディがコフィンに
お詫びの品を買ったっすよ。
自分その品の首を
へし折ったっすけど、
ランディは良い人だから
許してくれたっす。
それで首ぐしゃ~ん♪
んなこと、
怒ることじゃねーつーの。
優しいですね、
ランディさんは。
それにしても
可愛いとこあんじゃねーか。
ぎゃっはっはっは。
うっせーハゲ、
あんまりいじるんじゃねーよ。
ああん、やるか兄ちゃん。
ハゲが眩しいから
あっち行けっつーの。
ぶひゃひゃひゃw
ハゲ、マブシイ。
てめーらブチ殺すっ!!
ここの酒代は
誰が出してましたっけ?
で、誰が一番食べましたか?
ちなみに喧嘩する人には
皿洗いでも
してもらいましょうか。
師匠!
お、コフィン……
御馳走様だったぜ。
師匠、
見て欲しい物があるんです。
イメージです。あくまでもイメージです(;´Д`A ```
こ、これは……
気に入ってくれましたか?
師匠!!
酷い、あまりに酷すぎるじゃん。
だけどアタシだけは
ギリギリ想定内。
しかもアタシは無関係。
めでたしめでたし。
すごい……。
どうかしましたか、師匠?
いえ、ありがとうございます。
お気持ちしっかり頂きましたよ。
!
こーやって
つけるみたいっすよ。
おいおい師匠への贈り物を
勝手につけんじゃねーつーの。
つい付けたくなったっすよ。
…………
!?
どしたハルキチ?
と、取れないっす。
またつまんねーこと
言ってうやがるのか?
早く外せっての。
ほんっとに
外せないっすよぉ~。
ど、どうなってるんすかぁ?
どうやら本当に外せないらしい。
コフィン曰く――
「それは呪われた品です」
呪われた品とは、何者かの思念が憑りついた品のこと。殆どの品は装着してしまうと外せなくなってしまい、持ち主に災いをもたらすと言われているらしい。
コフィンは呪いの品に詳しいらしく、一目で理解していたようだ。取り敢えずお礼を伝え、その後、説明をしようとしていたのだが、落ち着き度0%のハルに先を越されたというわけだ。
ふ~……。
やれやれ……。
しかし馬鹿には良い薬だ。
大変じゃないですか。
何か外せる方法は
ないのですか?
ドルサック商店で
呪いの品を破壊して貰えますが
その費用は
かなりの高額になります。
またお金が……
こりゃあ無理ね。
そんなガロンもないし、
ずっと付けてりゃいいじゃん。
ちなみにそれは
『僻地駐屯兵の憂鬱』
(ヘキチチュウトンヘイノユウウツ)
と呼ばれる品で、
超が着く稀少品です。
へぇ~そんなに珍しいのか?
広大な地下迷宮の中で
雪の結晶を探し出し
溶かさずに帰還させる程の確率、
そう伝えられています。
それってつまり
掘り出し物ってこと?
ですね。
私も声を失うほど驚きましたが
装着してしまうと、
売却不可ですし、
値はそれほどではありません。
なんだ安物か、それならいいや。
でも、災いというのは、
何なのですか?
それですアデルさん。
稀にですが確か
『不意に脱力してしまう』
という災いだったはずです。
この稀というのが
曲者なんです。
なんだ、それなら
ハルは常にゆるゆるだから
問題ないな。
リュウに言われたら
お墨付きってやつだな。
更にっ!!
この呪いの品には
伝承が残されています。
何だかコフィンが
活き活きとしてきたね。
好きなんだろ、
呪いの品がよ。
『僻地駐屯兵の憂鬱』の
真の力。それは……
『僻地駐屯兵の溜息』と
『僻地駐屯兵の放心』、
この全てが集まれば
神の力を自在に操れる!!
という伝承です。
しかもっ!!
伝承では二つ目以降は装着者のみしか発見出来ないとされています。一つ一つが超稀少であり恐ろしい災いを有しているが故に三つ全てを発見することは非常に困難且つ危険であると同時に、伝承にある神の力を求める欲と飽くなき探求心が内在する呪いの品の中でも特に異彩を放つユデュシュヌネル(呪いの品マニアの中で使用される専門用語。意味は説明を受けても理解不能)なのです。そもそも呪いの品の起源を辿れば……
始まったか……
やれやれ、
ここにもややこしいのが居たか。
それにしても明日からの
迷宮探索は大丈夫でしょうか?
流石に生きる為の資金が
底を付いてるし
行くしかないわ。
それにしても…………
それにしても……
何ですか?
飽きれるくらい慣れて来たわ。
彼が何か騒動を起こすのにね。
はっはっは。
いいじゃないか、
騒々しくて賑やかでな。
その後も、スイッチの入ったコフィンの呪いの品講釈は永遠と続いた――――。
何だかんだでハルは呪いの品を気に入り、嬉しがって装着したまま探索に行くつもりらしい。四階層攻略に懸念材料を抱えたまま迎えた前日。新メンバーのランディを迎え、騒がしい夜は続いた。
~湧章~に続く――