――冒険者の酒場。

 ランディとハルはコフィンへの贈り物を調達し酒場に戻ってきていた。

ハル

古代神の像~は
五万ガロン♪
だけどもろくて
首グシャ~ン♪

フィンクス

お、ハル、
御機嫌みたいだな。

シェルナ

おかえりぃ~、
確かにご機嫌だけど
歌詞はヒドイ内容だねw

シャイン

あれだけのことをしといて
あの歌詞はあり得ないわ。
触らぬ馬鹿でも馬鹿は馬鹿。
ん~名言。

シャセツ

また、五月蠅いのが
帰ってきたか。

ランディ

ん!?
師匠はいねーのか?

リュウ

後から来るって
言ってたけどな。

ランディ

しゃーねーな、
ここで待つか。

ダナン

どうしたんだ?
結局何してたんだおめぇ達。

ハル

ランディがコフィンに
お詫びの品を買ったっすよ。
自分その品の首を
へし折ったっすけど、
ランディは良い人だから
許してくれたっす。

シェルナ

それで首ぐしゃ~ん♪

ランディ

んなこと、
怒ることじゃねーつーの。

アデル

優しいですね、
ランディさんは。

ダナン

それにしても
可愛いとこあんじゃねーか。
ぎゃっはっはっは。

ランディ

うっせーハゲ、
あんまりいじるんじゃねーよ。

ダナン

ああん、やるか兄ちゃん。

ランディ

ハゲが眩しいから
あっち行けっつーの。

ハル

ぶひゃひゃひゃw

タラト

ハゲ、マブシイ。

ダナン

てめーらブチ殺すっ!!

コフィン

ここの酒代は
誰が出してましたっけ?
で、誰が一番食べましたか?
ちなみに喧嘩する人には
皿洗いでも
してもらいましょうか。

ランディ

師匠!

ダナン

お、コフィン……
御馳走様だったぜ。

ランディ

師匠、
見て欲しい物があるんです。

イメージです。あくまでもイメージです(;´Д`A ```

コフィン

こ、これは……

ランディ

気に入ってくれましたか?
師匠!!

シャイン

酷い、あまりに酷すぎるじゃん。
だけどアタシだけは
ギリギリ想定内。
しかもアタシは無関係。
めでたしめでたし。

コフィン

すごい……。

ランディ

どうかしましたか、師匠?

コフィン

いえ、ありがとうございます。
お気持ちしっかり頂きましたよ。

コフィン

ハル

こーやって
つけるみたいっすよ。

ランディ

おいおい師匠への贈り物を
勝手につけんじゃねーつーの。

ハル

つい付けたくなったっすよ。

コフィン

…………

ハル

!?

ランディ

どしたハルキチ?

ハル

と、取れないっす。

ランディ

またつまんねーこと
言ってうやがるのか?
早く外せっての。

ハル

ほんっとに
外せないっすよぉ~。
ど、どうなってるんすかぁ?

 どうやら本当に外せないらしい。





 コフィン曰く――

「それは呪われた品です」



 呪われた品とは、何者かの思念が憑りついた品のこと。殆どの品は装着してしまうと外せなくなってしまい、持ち主に災いをもたらすと言われているらしい。

 コフィンは呪いの品に詳しいらしく、一目で理解していたようだ。取り敢えずお礼を伝え、その後、説明をしようとしていたのだが、落ち着き度0%のハルに先を越されたというわけだ。

ユフィ

ふ~……。

シャセツ

やれやれ……。
しかし馬鹿には良い薬だ。

アデル

大変じゃないですか。
何か外せる方法は
ないのですか?

コフィン

ドルサック商店で
呪いの品を破壊して貰えますが
その費用は
かなりの高額になります。

ロココ

またお金が……

シャイン

こりゃあ無理ね。
そんなガロンもないし、
ずっと付けてりゃいいじゃん。

コフィン

ちなみにそれは
『僻地駐屯兵の憂鬱』
(ヘキチチュウトンヘイノユウウツ)
と呼ばれる品で、
超が着く稀少品です。

リュウ

へぇ~そんなに珍しいのか?

コフィン

広大な地下迷宮の中で
雪の結晶を探し出し
溶かさずに帰還させる程の確率、
そう伝えられています。

シャイン

それってつまり
掘り出し物ってこと?

コフィン

ですね。
私も声を失うほど驚きましたが
装着してしまうと、
売却不可ですし、
値はそれほどではありません。

シャイン

なんだ安物か、それならいいや。

アデル

でも、災いというのは、
何なのですか?

コフィン

それですアデルさん。
稀にですが確か
『不意に脱力してしまう』
という災いだったはずです。
この稀というのが
曲者なんです。

リュウ

なんだ、それなら
ハルは常にゆるゆるだから
問題ないな。

フィンクス

リュウに言われたら
お墨付きってやつだな。

コフィン

更にっ!!
この呪いの品には
伝承が残されています。

シェルナ

何だかコフィンが
活き活きとしてきたね。

ダナン

好きなんだろ、
呪いの品がよ。

コフィン

『僻地駐屯兵の憂鬱』の
真の力。それは……
『僻地駐屯兵の溜息』と
『僻地駐屯兵の放心』、
この全てが集まれば
神の力を自在に操れる!!
という伝承です。

コフィン

しかもっ!!

コフィン

伝承では二つ目以降は装着者のみしか発見出来ないとされています。一つ一つが超稀少であり恐ろしい災いを有しているが故に三つ全てを発見することは非常に困難且つ危険であると同時に、伝承にある神の力を求める欲と飽くなき探求心が内在する呪いの品の中でも特に異彩を放つユデュシュヌネル(呪いの品マニアの中で使用される専門用語。意味は説明を受けても理解不能)なのです。そもそも呪いの品の起源を辿れば……

アリス

始まったか……

シャセツ

やれやれ、
ここにもややこしいのが居たか。

アデル

それにしても明日からの
迷宮探索は大丈夫でしょうか?

ユフィ

流石に生きる為の資金が
底を付いてるし
行くしかないわ。
それにしても…………

アデル

それにしても……
何ですか?

ユフィ

飽きれるくらい慣れて来たわ。
彼が何か騒動を起こすのにね。

アリス

はっはっは。
いいじゃないか、
騒々しくて賑やかでな。

 その後も、スイッチの入ったコフィンの呪いの品講釈は永遠と続いた――――。



 何だかんだでハルは呪いの品を気に入り、嬉しがって装着したまま探索に行くつもりらしい。四階層攻略に懸念材料を抱えたまま迎えた前日。新メンバーのランディを迎え、騒がしい夜は続いた。

~湧章~に続く――

 ~兆章~     108、活況夜は続く

facebook twitter
pagetop