事のはじまり



























太郎

あのぉ…店長。

店長《キャップ》

店長ではない。
店長《キャップ》と呼べ。

太郎

あ、はい、店長《キャップ》。






謎の威厳を漂わす店長に戸惑いながらも、


太郎は質問を続けた。



太郎

えっと、どこから聞いていいのか……。
もう、何がなんだか。



もはや収集のつかない頭の混乱に、


太郎はとにかく言葉を口に出すよう努めた。





そうする事で不安を払拭したかったのだ。








だがしかし、


そんな太郎をよそに


店長は自分語りを始めた。


店長《キャップ》

あれは、昨日の夜の事だった。















































ーー夜勤のシフトをドタキャンした君の代わりに、


私は眠い目を擦りながら、


ブラック企業さながらの勤務時間に耐えつつ、


店外のゴミ箱のゴミ袋を取り替えていた。






太郎

なんかゴメンナサイ……。

てか、本当にゴミ袋の
交換してました?










































ーーすると、どうだ。



お隣の牧場のかわいいホルスタインが



キャトルミューティレーションせんとする



謎の地球外生命体に



アブダクションされようと



しているではないか!









これジャージー種だけどね。

太郎

そこまでわかってたら、
あまり謎じゃないですよね?













ーー怒りに震える私は、


謎の地球外生命体に殴りかかった。













太郎

え、それ、
怒っちゃうの?
殴っちゃうの?


























ーー身の危険を感じた謎の地球外生命体は、


その身を守るべく


ターゲットを切り替えたのだ。





太郎

ま……まさか店長が……。




































ーー瞬間移動した未確認飛行物体は、


この店舗をアブダクションしたのだ。






   きゃぁぁぁーー   

太郎

そっちか。













ーー手術台のようなところに


載せられた店舗は……。








太郎

どんだけでかいんだよ、
その手術台。







ーー生まれたままの姿を、


謎の地球外生命体の前にさらされ……




お願い……やめて……

太郎

店舗だよね?
店舗なんだよね?































ーー謎の金属片を陳列棚に並べられた。



太郎

新手の仕入れですかね、
もしかして。













ーーと、この店舗が言っていた。





太郎

これまでの話は店舗の言い分かよ!





   てへぺろ。   







ーーまた、これは


あとからホルスタインの芳恵に


聞いたことなのだが……。







太郎

ホルスタイン?芳恵?












ーー彼らはただ、


芳恵の乳を絞りに来たらしい。



太郎

その表現、どうなんでしょ?

  キャッ/////  




ーーそう話す芳恵は


そっと顔を赤らめるのだった。


私はその仕草が


ただただ愛おしかった。


太郎

ねぇ、店長。
この話どこへ行っちゃうの?



















ーーつまり、


私の早とちりで、


この店舗は宇宙空間を



移動できるようになったのだ。































店長《キャップ》

ふふふっ……。
目頭が熱くなる話だぜぇ……。

太郎

分かったような
分からないような……。







とっ散らかった店長《キャップ》の話に


横に90度傾倒していた太郎のクビは


70度位までに回復したものの、


やはり、今後の事がどうしても気になる。




太郎

まあそれは、いいとして……
一体どこへ行くんですか、この店舗は。
目的は一体何なんですか?

???

その件に関しては私から説明するわ






突如としてバックヤードから現れる


女性の影。






掛けたメガネを


片手で直しながら歩くその姿は、


デキる女のステレオタイプだ。


太郎

は……花子さん?

花子

フッ。





花子と呼ばれた女性は太郎を鼻で笑う。


花子

そう呼ばれていた頃もあったわね……。



花子はガラス張りの外に広がる星空を


遠い目で眺めたかと思うと、


にわかに振り返り声を張り上げた。

キャシー

私はキャシー!
キャサリン・花子・ペンドルトンよ。

太郎

はぁ……。




気のない返事をする太郎。


茶番には付き合いきれない、と言った態度で


花子に事の詳細を伺う。


太郎

で、何を教えてくれるんですか、
花子さん。

花子

ニヤリ



次の瞬間、花子の背後から繰り出された


キャット・オ・ナインテイルは、


唸りをあげて太郎の手の甲を襲った。


これはブルウィップですね。




乾いた音と小気味よい悲鳴が店内にこだまする。


怯えた目で花子を見上げる太郎。


太郎

な……何するんですか、花子さ……

キャシー

アナタには教育が必要そうね。





震える太郎とは対象的に


花……キャシーは


嗜虐的な笑みを太郎に向けるのだった。

















嗚呼、コンビニよ。


従事者乗せてどこへ往く。








何人も知らぬその行き先は


宇宙の果てか、産まれし星か。




















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