Wild Worldシリーズ

レダ暦6年
星に願いを

4

 

 

 

セシル

本当にやる気かい?

呆れたような声音に、傍らの少女は神妙に頷いた。

セシル

本気か?

 問いかけに、再度頷く。



 セアト王が病死してから、自分の立ち位置を完全に見失ってしまった。

 隣にセシルがいてくれるからまだ何とかなっているが、気が、気がとても狂いそうだ。

 セアト王は、父は、どうして自分を見てくれなかったのだろう。




 女だから、か。

 仕方なく産み落とされた存在だから、か。



 しかし恨むべき王はもういない。




 自然とその矛先は、その娘に向かった。

セシル

無理はするなよ

アスター

手を汚すのは、わたしじゃない

アスターは、自分の持つ狂気に支配されていた。












アーチェは、ミカエルの丘に来ていた。

アーチェ

お兄ちゃんは?

フラウ

上よ
星の研究がよほど楽しいようね
目の輝きが違うわ

アーチェ

んもう! 奥さんとお腹の子を置いといて!

 アーチェが怒ると、フラウがクスクス笑う。

 そんな姿を見て思う。

 フラウは随分寛容になった。

 目元がやさしい。



 だから大人しくイスに座りなおすと、フラウ特性のクッキーに手を伸ばした。

フラウ

いいのよ
ケルトにとって、念願だったんだもの

フラウはお腹をさすりながら言う。

フラウ

この子も、星が好きになりそうな、そんな気がするの
この子とケルトが親子で星を眺めている姿が見てみたいわ

 どこか遠くを見るような話し方だ。

 フラウも、夢を見ているのだろう。



 そんな幸せそうな姿に、アーチェも嬉しくなる。

 今日持ってきた紅茶を女2人で飲んでいるのも何だか楽しい。


 こんな時間が、ずっと続いてくれればいいと思う。

アーチェ

ちゃんと認められればいいね。星の研究

フラウ

そうね、この子のためにも

アーチェ

うん。そうだね

 レダ王になってから、固定観念に似た風習が、いい意味で薄れてきている。


 よくなってほしい。

 いろいろと。


 何の懸念もなく夢を追えるような、そんな日が来てほしい。










ラムダ

本当にやる気か?

同じ言葉を、別の男が口にした。

アスター

そうよ

今度は言葉で答える。

アスター

あなたは、わたしの味方よね

 アスターの瞳は、不安と疑心と孤独に満ちていた。

 だから、頷いた。

 それだけで、彼女は安心した。

 自分を知っていてくれる人がいるのは嬉しい。

 ひとりじゃないと、自分自身に言い聞かす。




 だけど、アスターはラムダには肝心なことを教えてはいなかった。

 信じている。

 それゆえに、言えないこともあった。










 

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