Wild　Worldシリーズ

レダ暦6年
星に願いを

3

　あなたと一緒に生きていく　　そう　決めた

　ラムダは、遠征から帰ってくると最初にレダ王に挨拶に向かった。

　静かな廊下に、規則正しい足音が響く。

　王の居間は、城の中央に堂々と構えてあった。

　ラムダの姿を見止めると、見張りの兵士たちは敬礼をし、厳かに扉を開いた。

　まだ若い王の姿が、そこにあった。

　時代は流れる。ラムダはなぜかそう感じた。

　レダ王の１０歩手前で、ラムダは跪いた。

　砕けた言葉遣いでレダ王は言った。

　ここにはラムダとレダ王、それから世話役の侍女しかいない。

　生真面目なラムダに、レダ王は苦笑する。

　どうも、城仕えになってから、元々真面目だったのが更に輪を掛けて真面目になった。

　もう少し肩の力を抜いてみてもいい。

　そう思うのだが、そう言うことはなお更ラムダのストレスになりかねないので、見守ることにしている。



　レダ王は、ラムダを信用していた。









　　　
　

　暇をもらったラムダは、アーチェの元に向かった。


　久しぶりに歩く街は、活気に溢れ、日々の緊張から身をほぐしてくれた。

　こんなふうに風にあたるのはどれくらいぶりだろう。




　自分はいつからこんなふうになってしまったのだろう。

　後悔しているのかどうか。

　この歳になって、自分は迷っている。




　アーチェの家は、もうずっと変わらずにそこにあった。

　それは、安心することだった。

暖かい迎え入れに、ラムダの頬は自然と緩む。

　アーチェはいつだって暖かくてやさしい。



　広い家に一人でいるアーチェを気にかけて、時間の空いている時はときどきこうして訪れるようにしていた。

　ケルトに、アーチェのことを頼まれていることもある。

　けれどそれ以上に、アーチェと一緒にいたい自分にも気付きかけていた。

　そう尋ねるのと同時に、眼鏡の穏やかな青年を思い出した。


　彼は、今も、最後まできっと自分を貫くのだろう。

　そんなケルトが、少し羨ましい。


　アーチェはクスクス笑った。

　聞きなれない単語に、ラムダは首を傾げた。

　それは、昔の幼さの残る表情だった。

　レダ王が見たら喜んだかもしれないが、アーチェは昔のラムダを知らない。

　アーチェは自分のことのように嬉しそうに話しだした。

　新しい命。

　望まれた子が、どんな子か。




　アーチェは、楽しみで楽しみで仕方なかった。

羨ましいと思いつつ、ラムダは窓越しに遠い空を眺めた。